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照ノ富士”横綱級”の強さ! 2横綱2大関不在の11月場所を盛り上げる力士たち

飯塚さきスポーツライター
写真:日刊スポーツ/アフロ

両横綱の不在に始まり、三日目には大関・朝乃山が、そして四日目には期待の新大関・正代までもが休場に追いやられ、残念なニュースが続く大相撲11月場所。しかし、だからこそ闘志に燃えている力士たちが多いことも、また事実。五日目までの序盤戦を終え、元気いっぱいの活躍を見せる力士たちにスポットを当ててみよう。

言葉を失うレベルの強さ “新”小結・照ノ富士

ここまでで5連勝を挙げ、連日別格の強さを見せつけ続けているのが、元大関の照ノ富士である。ケガや内臓疾患などで一時序二段にまで番付を下げるも、7月場所を制し驚異の復活劇を遂げたのは記憶に新しい。三役に返り咲いた今場所は、前回大関までのし上がったときには“飛び級”だったため、自身初となる小結の地位。だからといってこれを「新小結」とは呼ばないわけであるが、とにもかくにもその強さはやはり、さすが元大関…いや、むしろ横綱級と言ってしまっても過言ではないだろう。

4連勝同士の対戦となった北勝富士戦では、頭から低く前傾姿勢で当たってきた北勝富士に対し、それを物ともせず前へ出ていくと、左の上手を取って豪快な投げを決めた。相手の北勝富士は、今場所特に勢いがよく、会心の相撲を見せているだけに注目度も高い。照ノ富士に対しても、本人は取組後に「もっと立ち合いで低くいけばよかった」と反省していたそうだが、客観的には非常に素晴らしい当たりだったように見えた上、左からのおっつけも強烈であった。にもかかわらず、だ。照ノ富士の強さは、もはや言葉を失うレベルである。前に出る力が戻ってきた照ノ富士は、本当に強い。上位不在のいま、彼を下すことのできる力士は誰なのだろうか。

下半身が強化され 安定感増した貴景勝

その答えに挙がるのが、同じく5連勝中で唯一土俵に残っている大関・貴景勝であろう。五日目は、同じ突き押し相撲で高校時代の先輩に当たる大栄翔に対し、突き押し勝って圧倒。低い体勢を崩さず、相手にしっかりと力を伝える強い突きを見せた。

三日目の霧馬山戦では、立ち合いから相手につかまり不利な体勢になってしまったにもかかわらず、土俵際で逆転の突き落としが決まるなど、自分の形になれない内容でも、最後まで諦めない姿勢で星につなげている。いずれにしても、強化された下半身の力が、低い姿勢の保持と前への圧力に変わっていて、安定した大関の強さに結びついているように見受けられる。

豪快な強さが戻ってきた照ノ富士と、安定感が増した貴景勝の対戦。想像するだけで身震いしてしまうほど、いまからすでに楽しみである。

27年ぶりの居反り決めた宇良など 土俵を盛り上げる力士たち

全勝はほかに、返り入幕の千代の国と、幕尻の志摩ノ海。ケガを乗り越えた千代の国は、しっかりと体が動き、以前のような元気いっぱいの相撲で土俵を沸かせている。志摩ノ海は、低く当たって相手に頭をつけていく相撲で、連日内容もいい。ここからの中盤戦で、さらに食らいついて星を伸ばしてほしい二人である。

1敗を喫してはしまったが、先に書いたように、北勝富士も今場所大注目の存在。同じく1敗の琴恵光も、先場所に引き続き筋肉質の張りのよい体で、体幹の強さと対応力の高さを発揮し、白星につなげている。隠岐の海は、持ち前の体の柔らかさを生かして着実に星を重ね、同じく1敗。引き続き注目したい力士たちである。

また、五日目は十両の土俵で、智ノ花が花ノ国に決めて以来、約27年ぶりとなる珍手「居反り」が出た。そう、宇良だ。相手の旭秀鵬に対し、後ろ向きの体勢になったところで、背中でひっくり返した。三日目・四日目と連敗していたが、この勝利で3勝2敗と序盤戦を白星先行で終えた。

上位陣の不在はたしかに寂しい。しかし、その分を盛り返してしまうほど、土俵に立つ力士たちの奮闘は熱い。今日からの中盤戦にも、大きく期待を寄せていいだろう。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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