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1敗の豊島将之九段、藤井聡太竜王が走るか? 2敗勢5人が追いつくか? A級順位戦6回戦展望

松本博文将棋ライター

 2022年度、第81期A級順位戦は5回戦まで終わりました。

 現在4勝1敗で名人挑戦権争いのトップに立つのは豊島将之九段と藤井聡太竜王です。

 豊島九段は2019年、佐藤天彦名人に挑戦して、名人位を獲得。翌2020年、渡辺明挑戦者に敗退して失冠しましたが、名人位1期の実績があります。

 藤井竜王はA級参加1期目。ここまでの順位戦通算成績は52勝4敗という驚異的な勝ちっぷりです。

 藤井竜王は今期名人挑戦権を獲得し、来年度に名人位を獲得すると、谷川浩司現17世名人(1983年当時21歳)の記録を抜いて、史上最年少名人となります。

 2敗勢は斎藤慎太郎八段、広瀬章人八段、永瀬拓矢王座、菅井竜也八段、稲葉陽八段の5人。まだ誰が名人挑戦権を獲得してもおかしくない状況といってもいいでしょう。

 A級6回戦のカードは以下の通りです。(▲=先手、△=後手)

日程未発表

▲豊島将之九段(4勝1敗)-△広瀬章人八段(3勝2敗)

 挑戦権争いを争う両者による好カード。過去の対戦成績は広瀬11勝、豊島14勝で拮抗しています。

 2019年の竜王戦七番勝負、広瀬竜王-豊島挑戦者戦では豊島4-1でタイトル移動となりました。直近では昨年の王将リーグで広瀬八段が勝っています。

12月23日

△藤井聡太竜王(4勝1敗)-▲佐藤天彦九段(1勝4敗)

 佐藤天彦九段九段は10月28日におこなわれた4回戦・永瀬王座戦において、マスク不着用で「反則負け」になるというアクシデントがありました。現在、佐藤九段は処分取り消し、指し直しを求めて理事会側に提訴中。大変難しい問題であり、その結論はまだ出されていませんが、ともかくもA級順位戦は進行中です。

 11月3日。佐藤九段は棋王準決勝で藤井竜王を相手に、会心の逆転勝ちを収めました。その星も含めて、両者の過去の対戦成績は藤井3勝、佐藤1勝です。

 NHK杯3回戦でも両者は対戦。また、藤井竜王が12月8日におこなわれる棋王戦敗者復活戦で羽生善治九段に勝てば、挑決二番勝負でも藤井-佐藤戦が実現します。

12月7日

△菅井竜也八段(3勝2敗)-▲稲葉陽八段(3勝2敗)

 2敗対決となった、井上慶太九段門下同士の対戦。兄弟子の稲葉八段は名人挑戦の経験もあり、今期でA級6期目です。一方、菅井八段はA級3期目。今期は藤井竜王に勝ってその底力を見せました。

 過去の対戦成績は菅井9勝、稲葉4勝。今年度はNHK杯2回戦で当たり、先手の菅井八段が中飛車穴熊で勝っています。本局は菅井八段が後手。まずはどこに飛車を振るかが注目されます。

12月9日

△斎藤慎太郎八段(3勝2敗)-▲糸谷哲郎八段(1勝4敗)

 羽生善治現九段以来の3期連続名人挑戦がかかる斎藤八段。対して糸谷八段は今期はここまで苦しい星取りですが、巻き返せるでしょうか。

 過去の対戦成績は斎藤5勝、糸谷6勝で拮抗しています。前期A級最終戦では糸谷八段が勝って、斎藤八段の全勝を阻止しています。

日程未発表

▲永瀬拓矢王座(3勝2敗)-△佐藤康光九段(0勝5敗)

 佐藤康光九段は名人2期を含めA級以上26期を誇る大豪です。

 しかし今期はここまで5連敗で、苦境に立たされています。

 永瀬王座と佐藤九段の過去の対戦といえば、2011年NHK杯、まだデビュー間もない永瀬四段(当時)が2千日手の末に勝った対局などがよく知られています。

 両者の過去の対戦成績は永瀬4勝、佐藤5勝。昨年のA級では佐藤九段が勝っています。

 名人挑戦、残留を目指して将棋界のトップ10がぶつかり合うA級順位戦。冬を迎え、これからますます目が離せない展開となりそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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