King Gnu、ライブ初披露「千両役者」の凄み 〜初のアリーナツアー追加公演、幕張メッセの奇跡〜
今年最高のライブを目撃した。King Gnu、幕張メッセ(国際展示場4〜6ホール)公演。本編も水を得た魚のように縦横無尽のプレイで最高だったのだが、ダブルアンコールでライブ初披露となった「千両役者」が異次元レベルで素晴らしかったのだ。
●アルバム「CEREMONY」を軸とした現時点でのオールタイムベストな選曲
King Gnuが12月6日、累計約42,000人を動員した初のアリーナツアー「King Gnu Live Tour 2020 AW」の追加公演となるファイナルを幕張メッセにて開催した。本公演は、春に行われるはずだったツアーが新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け全公演の開催を見送ったことから、“AW(オータム / ウインターの略称)”と名付けたリベンジ公演となった。
セットリストは、今年1月15日にリリースしたアルバム「CEREMONY」を軸とした現時点でのオールタイムベストな選曲。会場は、炎が印象的な聖火台をイメージさせるなど、時世とリンクした熱狂と狂騒を生むステージセットとなっていた。
開演前、会場には1964年の東京オリンピックの実況音声がノイズとともに流れていた。定刻を過ぎて、2020年代の幕開けを告るファンファーレ「開会式」が会場に響き渡る。革命前夜な高揚感のまま、オープニングは常田大希(Vo, G)と井口 理(Vo、Key)による息のあった掛け合いボーカルを繰り広げる「どろん」からスタート。常田が「幕張っ!!!」とオーディエンスを煽る。勢いそのままに、軽やかなカッティングギターが冴え渡るタイトなビートで繰り広げるポップチューン「Sorrows」、勢喜 遊(Ds、Sampler)によるファンクなビートセンスがたまらない歌メロがキャッチーな「Vinyl」など人気チューンが続く。
●スケールのでかい音像を鳴り響かせてくれる
King Gnuのライブ演奏は、メンバーひとりひとりのサウンドが一丸となり、まるでシンフォニーのように緩急をつけてスケールのでかい音像を鳴り響かせてくれる。その幅広い音楽性は、シアトリカルな「It's a small world」、常田と井口が視線を交わしながら声を重ねる国民的ヒット曲となった「白日」、重厚かつヘヴィなスタジアムロックなサウンドが腹に響く「飛行艇」など、没入感が半端ないのだ。
深遠なる雰囲気を漂わせるKing Gnu真骨頂の「The hole」後、ツアー中、自由な雰囲気を感じさせてくれるMCが続いた井口が、最終日であっても変わらずに「みなさんこんばんは、King Gnuです。すごい人ですね。ありがとうございます。一番後ろの方は遠すぎて……。」と、ステージから後ろが見えないほどに広すぎる会場に感銘を受けていた。常田は「こんなご時世でね、音楽業界も俺らだけじゃなくて、バンドもそうだし、いろいろミュージシャンが大変な状況になっているんですけど、今日は足を運んでくれて感謝しています。」とフォロー。そして「今日は、1年の鬱憤があると思うので楽しんでいってください。」と、井口が引き締めた。
「Vivid Red」、「Hitman」、「The Hole」へと連なる美しさ、「破裂」からの「Prayer X」への流れも絶品だったのだが、オーラスへのスイッチが入ったのは「ロウラヴ」だ。パワフルかつヘヴィなアレンジが狂い咲くKing Gnuが誇る屈指のロックチューン、続く「Flash!!!」では、通常の倍以上のフラッシュ照明をこれでもかと輝かせ、とどめを刺すかのようにエモーショナルなサウンドでオーディエンスを魅了した。骨太のグルーヴが加速する鉄壁のリズム隊、勢喜、新井によるプレイヤビリティの高さに驚かされたワンシーンだ。
●日本のポップミュージックを次世代へアップデートする歴史的作品
アンコールではSEの「閉会式」後、「三文小説」における、エモーショナルなバラードというアンビバレントなKing Gnuならではの特異点を見つけた進化系サウンドをプレイ。井口のハイトーンヴォイスが胸に迫る、まるでオペラのような感動だ。フルオーケストラによるアレンジで聴いてみたくなるダイナミックなナンバーであり、日本のポップミュージックを次世代へアップデートする歴史的作品といえるだろう。
さらに「Teenager Forever」での金色の紙吹雪が舞う最高潮な盛り上がりに続いて、ツアー最終日ということもあり、井口が「じゃあラスト1曲、新曲やります!!!」と、ツアー初のダブルアンコールに答えた。
ライブ初披露となる最新曲「千両役者」を、ポップとオルタナティヴが交差するアグレッシヴな演奏によって圧巻のパフォーマンスで繰り広げていく。4人のスキルフルなプレイがこれでもかとハードなアンサンブルを織り成し、ひとつの塊となってオーディエンスを包み込んでいく。上空にはサウンドとシンクロする半端ない数のレーザーが飛び交い、想いの強さが可視化されたかのような非現実な空間をこれでもかと堪能させてくれたのだ。それはまるで魔法のようでもあった。
King Gnu率いる“ヌー”の群れは、仲間やオーディエンスを巻き込みどんどん大きくなってきた。ラスト、やりきった顔で4人が並んで手を繋いだシーンには感動のあまり思わず涙腺が緩んだ。しかし、彼らにとって幕張メッセでのワンマン公演は通過点に他ならない。12月2日に発売された両A面シングル「三文小説 / 千両役者」で魅せた驚異の進化とともに、さらなる活躍に期待をしたい。
なお、本日の公演は生中継でライブ配信されており、12月8日23:59までアーカイブ視聴が可能。配信チケットは12月8日18:00まで販売されている。
https://stagecrowd.live/6760155021/
photo by 伊藤洸祐、小杉歩
【SET LIST】
SE 開会式
01. どろん
02. Sorrows
03. Vinyl
04. It's a small world
05.白日
06. 飛行艇
07. Overflow
08. Slumberland
09. Vivid Red
10. Hitman
11. The hole
12. ユーモア
13. 傘
14. Tokyo Rendez-Vous
15. 破裂
16. Prayer X
17. ロウラブ
18. Flash!!!
【Encore 1】
SE 閉会式
19. 三文小説
20. Teenager Forever
【Encore 2】
21. 千両役者(LIVE初披露)
King Gnu オフィシャルサイト