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財布を落としたとき、紛失防止トラッカーを入れていると見つかる? 実際に失くした記者の場合は……

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
落としたけど見つかった財布と、入れていた紛失防止トラッカー。筆者撮影

 忘れ物や落とし物を防ぐために紛失防止トラッカー(落とし物タグ)が販売されていますが、効果があるのか気になって購入を迷っている人はいませんか? つい昨日のことですが、筆者が財布を落としてしまったのでその後どうなったかをお伝えします。

紛失防止トラッカーでは正確な場所を探せない

 財布はお店AからBに車で移動するあいだに落としました。お店Aでレシートを受け取り、財布に入れたからです。つまり落としたのはお店Aの駐車場か、お店Bの駐車場です。

 財布にはAnker社の紛失防止トラッカー『Eufy Security SmartTrack Card』を入れていましたが、この紛失防止トラッカーは『AirTag』のように正確な位置を伝える機能を搭載していません。

 そのため、「このあたりにある」ということしか分からず、そうこうしているうちに財布は近くにあるスーパーCへと移動してきました。

スーパーで音を鳴らすも見つからない

 ここで、筆者は「サウンドを再生」という手段に出ました。

「サウンドを再生」で音を鳴らすことができる。筆者キャプチャ
「サウンドを再生」で音を鳴らすことができる。筆者キャプチャ

 これは紛失防止トラッカーから音を鳴らすことで、位置を特定する手法です。音が鳴るため、財布を拾った人にも気づかれてしまうというリスクがあります。

 しかし、お店BからスーパーCのあいだにある交番に寄らずに移動していることから、ここで財布を見つけなければおそらくは戻ってこないと思ったため、鳴らして見つかる方に賭けました。

 結果は、見つかりませんでした。店内のBGMが大きく、紛失防止トラッカーから出る音程度では聞こえなかったのです。おそらく拾った人にも聞こえなかったのでしょう。

 財布はそのまま1時間ほど店内に存在したあと、今度は駅前のマンションへと移動していきました。お手上げです。

警察がいても探すことはできない

 この時点でじつは警察に通報しており、スーパーCでも財布の探索に協力して頂きました。具体的には扉のあるテナントなどの内部には入れないため、警察の方に「財布を拾った人はいないか?」と聞いて貰ったのです。

 結局、筆者の財布を拾った人は見つかりませんでした。

 ちなみに警察の方に話を伺ったところ、紛失防止トラッカーや落とし物防止タグがマンションなどの集合住宅にある場合は、どこの部屋にあるのか特定することができないため、そうしたところの探索はできないということでした。

 というのもこの時点では「善意で財布を拾った人」なのか「悪意を持って財布を盗んだ(拾った)人」なのか判断できず、「盗んだ」ことになるのは「拾ってから7日経過後」になるからです。

 善意の人に対して、強制的に捜査することはできません。仕方のないことだと思います。

財布は川沿いに捨てられていた。お金は全て抜き取られていた

 その後、マンションのどこかにあった財布ですが、またしても移動を始めました。

 今度は川沿いを移動し始め、最終的に川沿いの住宅地で動かなくなりました。

 ここが実際に住んでいる家、もしくはここで捨てられたと判断して回収に向かったところ、道路脇に落ちている財布を見つけることができました。

 財布の中のお金は、お札も小銭も全て抜き取られていました(一応、金額を書いておくと約4万円です)。

 しかし、財布は戻ってきました。クレジットカード類は全て止めてしまいましたが、免許証、保険証、マイナンバーカードは戻ってきたため、これらを再発行せずにすんだことは不幸中の幸いだったと言えるでしょう。

確実に突き止めたいなら『AirTag』の方が良いが……

 もしもiPhoneユーザーであれば、確実に落とし物の場所を突き止めたいのであれば『AirTag』の方が良いでしょう。

 『AirTag』にはU1チップが搭載されており、iPhone 12以降のモデルであればUWB(超広帯域無線)を使って『AirTag』の方向や距離をかなり正確に突き止めることができます。

空港でスーツケースに入れたAirTagで自分のスーツケースを探している様子。筆者撮影。
空港でスーツケースに入れたAirTagで自分のスーツケースを探している様子。筆者撮影。

 今回の出来事で筆者が財布に『AirTag』を入れていれば、スーパーCで財布を発見できたと思います。

 一方で、『AirTag』だけでは最終的に財布を回収できなかった恐れもあります。

 『AirTag』はその厚みの関係で、入れる場所は小銭入れになりがちです。今回、小銭も全て盗まれていたため、『AirTag』に気づかれて捨てられたり、破壊されたりしたらもう財布の場所を追跡できなくなります。

 カード類に手をつけられていなかったこと、そのカード類のなかにカード型の『Eufy Security SmartTrack Card』を入れていたことが、今回、財布の発見に繋がりました。

 財布を落としたときに見つける確率をあげたい人は、どちらか片方ではなく、両方入れておく方が良いと感じました。参考になれば幸いです。

警察には被害届の提出を断られる

 ちなみに今回の紛失(盗難)事件において、お金を抜き取られてしまったため遺失届を提出した交番に遺失届を返し、「お金を盗まれたので被害届を出したい」と伝えたところ断られてしまいました。

 理由としては「すでに警察では遺失届として受け取っている」、「路上で落としているため防犯カメラなどの証拠がなく、捕まえることができない」、「拾った人とお金を盗んだ人は別の可能性がある」が伝えられました。

 今回は紛失防止トラッカーのおかげで財布自体は戻ってきたのでそのまま引き下がりましたが、実際に財布からお金を盗んでいる人間がいるのに被害届の提出を拒み、結果として盗難された事実を書類上はなかったことにするのはどうなのかと疑問に思いました。

 「盗難被害があったが、犯人を見つけるのは難しいだろう」と「犯人を探す気はなく、そもそも被害を受け付けていないので落とし物が1件あっただけ」では雲泥の差です。今回の対応を受け、警視庁発表の犯罪統計はあまり信用できないものかもしれないと思わされました。

 なお、トラッカー追跡時の状況やトラッカーの動きや反応など、より詳しい内容は筆者のブログの方に掲載しています。

財布を落としたけど『Eufy Security SmartTrack Card』を入れてたので回収できた話(お金は盗まれた) | デジタルマガジン

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。インターネット(SNS)で起きる炎上の解説、デマのファクトチェック、スマホやガジェットの話題、生成AIが専門。最近はYouTubeでも活動しています。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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