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新入社員の皆さんへ~これからのキャリアの考え方~

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)
(写真:アフロ)

 4月から新社会人となった皆さん、転職、独立などで新しいキャリアのスタートを切った皆さん、おめでとうございます!

 私は、企業労働法に携わる者として、様々な企業の人事相談やいろいろな労使紛争、個人のキャリア展開を見てきたので、これからの時代の、これまでとはちょっとだけ違う、キャリアに対する考え方を少し書いておきたいと思います。

 まずは、希望の会社に入れた人、入れなかった人いるでしょうが、縁あって決まった会社の、目の前の仕事を全力でやってみましょう。

 外から見ていたイメージと実際の仕事は全然違います。

 なんとなく入った会社が「あれ、結構すごいことやってるな」とか、「すごくピッタリな会社だ」と思っていても「なんだかつまらない仕事だな」と思うことは多々あります。実際に仕事をやってみて、先輩の姿を見てみないと分からないものです。

 さらに、これから新入社員研修を経て、様々な部署に配属されると思います。同じ会社でも部署が違えば全く仕事や雰囲気が違います。「こんなはずじゃなかった」、「同期のあいつは花形部署でうらやましい」と思うこともあるでしょう。

 しかし、実際やってみないと仕事の楽しさ、奥深さ、達成感、充実度合いは分からないものです。また、最初に配属される部署で全てが決まるわけではありません。多くの日本企業には人事ローテーションがあり、社内でぐるぐると仕事をまわしますので、改めて希望の部署に行けることもあるでしょう。

 ただし、そのためには「いま目の前の仕事」を一生懸命やらなければなりませえん。一生懸命やっていると「思いのほか向いているな」とか「思いのほか自分には合わないな」と思うことがあります。ただ、前提としては一生懸命やっていることが大事です。なんとなく仕事をこなしているだけでは、それは分かりません。

 先ほど述べたように、日本型雇用の場合、部署を転々とすることが多々あります。そのため、最初の部署ですべてが決まるわけではありません。ですが、最初の部署でどんな態度で仕事をするかは見られています。なので一生懸命やること、特に、言われたことだけやるのではなく、誰もが困っているけど誰の担当でも無い仕事を見つけるなどして、「それ、やっておきましょうか。」という姿勢でやる人は必ず誰かが見ています。

 最初は相手にされなくても、そういった姿勢を続けていると伝わる人には伝わります。

 そうすると抜擢されることもあるでしょう。

 仕事の好き嫌いを判断するのはもう少し先のことですが、「これは向いてないな」という仕事でしたら早めに気付けるかもしれません。

 20代のうちは、やりたいことが無いことが不安に思えるかもしれませんがそんなもんです。仕事をしながらやりたいこと、やりたくないことを見つけていきましょう。

 その会社でいろいろやってみて、「もうやり切ったな」と思えば転職もあるでしょう。昭和の終身雇用絶対の時代ではないのです。最初の彼氏と結婚する人もいれば、いろいろと付き合ってから結婚する人もいるのと同じことです。どちらかが正しいわけではありません。

 ただ、安易に転職するのではなく、「やりきった」かが重要です。条件や待遇「だけ」を求めて転職するとうまくいかない場合が多いように思います。自分は何がしたいかが重要です。「ポケットに辞表を忍ばせて」仕事をする心意気でいれば怖いものはありません。かえって思い切った仕事ができて成果が出る場合もあるでしょう。

 あと、最初は頑張れと言いましたが、人間関係の悩みには気を付けてください。我慢しすぎるのは良くないです。まずは一人で抱えないで信頼できる先輩や人事に相談してください。心ある人事や外部の専門家が助けてくれる会社なら利用してください。

 それでもどうしようもなければ「逃げる」ことも恥ではありません。終身雇用の時代ではないのですから「一度正社員ルートを外れたから人生終わり」ではないのです。自分に合った仕事・職場を探す過程となるだけです。過去に起こった出来事は変えられませんが、キャリアを振り返ったときに「その出来事の意味」は変えることができます。「あの経験をしておいて良かった」と思うときが来ることもあるでしょう。

 最後に、これからの不確実な時代には、何が正解か分かりません、先輩の真似をしたらうまくいくかどうかも分かりません。ですが、10年後を決めるのは、

「言われなくても自分で考える」姿勢を持てるかどうかです。昔は、新人にはたくさん仕事をやらせてそこから学ばせる、というケースが多く見られました。

 しかし、働き方改革により、企業にはもうそれができません。するとどうなるか、「ホワイト企業でよかったね」ではないのです。「自分でやる人とやらない人にものすごい差がつく」のです。10年後には勝負は決しているでしょう。

 なので、自分で将来にとって何が必要か、考えて、企業任せではなく、自分のキャリアというものを考えていって頂ければと思います。 

 皆様のこれからのご活躍をお祈りしております!

 (将来一緒に仕事をする人が出てきたら最高だと思っています。)

おまけ(人事に配属された方へ)

 「人事の仕事」って社会保険手続をやったり給与計算したり地味な部署でつまらないと思う方もいるかもしれません。ですが、事業の方向性を理解してそれにあった人を採用し、制度を設計し、評価軸を作り、働き方を変えていく、ダイナミックでやりがいのある仕事でもある思います。ぜひ、頑張って勉強してみて下さい!

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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