コロナで米エンタメ界に新たな死者。エリス・マルサリス・Jr.、アダム・シュレシンジャー
トム・ハンクスの命は救われても、大切な人のそれは奪われた。
西海岸時間1日、新型コロナから回復中のハンクスは、1996年の「すべてをあなたに」(原題:『That Thing You Do!』)で組んだアダム・シュレシンジャー(52)が、同じ病のために亡くなったという悲しい知らせを受けた。ハンクスの監督デビュー作でもあるこの映画は、60年代を舞台に、無名のバンドが成功していく過程を描くもの。歌が重要な役割を果たす今作で、シュレシンジャーは、タイトルソングである「That Thing You Do!」を書いた。このキャッチーな曲はアメリカで大ヒットし、オスカーにもノミネートされている。
今作が公開されてまもなくハンクスが立ち上げたプロダクション会社プレイトーンの名前は、映画に出てくる架空のレコードレーベルに由来する。映画にはハンクスの妻リタ・ウィルソンや息子コリン・ハンクスも小さな役で出演しており、彼にとっては長いキャリアの中でも特別な作品だ。ハンクスは、ツイッターで、「アダム・シュレシンジャーと、彼の『That Thing You Do!』なくしてプレイトーンは存在しませんでした。彼は唯一の才能でした。コロナで彼の命が失われたことが、本当に悲しいです」と、気持ちをつづっている。
シュレシンジャーはニュージャージー出身。マサチューセッツ州のウィリアムズ・カレッジ在学中にクリス・コリングウッドと友達になり、卒業後、3人の仲間を募ってファウンテンズ・オブ・ウェインを結成した。シュレシンジャーの担当はベース。バンドは5枚のスタジオアルバムをリリースし、2003年のヒット曲「Stacy’s Mom」は、グラミー賞にノミネートされている。
ソングライターとしての彼の才能には、ハンクス以外の映画、テレビ業界関係者も注目した。代表的な映画に、ヒュー・グラントが落ち目のポップ歌手を演じるロマンチックコメディ「ラブソングができるまで」(2007)がある。この映画では、グラントとお相手役ドリュー・バリモアが歌う「Way Back into Love」など複数を書いたほか、楽器の演奏もした。テレビでは、若者向け音楽ドラマ「Crazy Ex-Girlfriend」(2015-2019)で、ソングライターのほかエグゼクティブ・プロデューサーも務めている。今作では、歌曲部門で昨年のエミーを受賞。スティーブン・コルベアのクリスマス特別番組でもエミーに候補入りしており、こちらは逃したものの、グラミーを受賞した。
私生活では、2013年に離婚した元妻との間にふたりの娘をもつ。シュレシンジャーが亡くなったのは31日、ニューヨーク州の病院だった。
ジャズ界の巨匠もコロナで死去
ルイジアナ州では、ジャズ界の伝説エリス・マルサリス・Jr.が、やはり新型コロナに伴う肺炎で亡くなっている。享年85歳。
ニューオリンズ出身。ジャズピアニスト、音楽の先生として活躍したが、ニューオリンズにとどまることを好んだため、世界的に有名になったのは、6人いる息子のうち4人がジャズミュージシャンとして成功してからだった。長男ブランフォードは、90年代、深夜トーク番組「Tonight Show with Jay Leno」にサクソフォーン奏者としてレギュラー出演している。次男ウィントンはトランペット奏者で、1997年、ジャズミュージシャンとして初めてピューリッツァー賞を受賞した。四男デルフィーヨはトロンボーン奏者、末息子はドラム奏者。三男のエリスは写真家で詩人。
音楽教師として教えた生徒には、ハリー・コニック・Jr.、テレンス・ブランシャードなどがいる。2018年には、ルイジアナ音楽の殿堂入りを果たした。
現地時間1日夕方現在、アメリカでは213,144人の新型コロナ感染者と、4,513人の死者が出ている。