【神戸】懐かしさに出会いに!長田のソウルフードで子供時代へとタイムスリップ
秋も近くなると、ぼんやりと物思いにふける時があります。懐かしい子供の頃を思い出しては、そういえばあのお店にいつも行ってたなぁとか。なんとなく、昔通っていたお好み焼き屋さんのことを思い出して「あの店のおばちゃん、まだ焼いてるんかな」と呟いたら、母が「もう娘さんに代替わりしてるで」と一言。
思い出は記憶の中でストップしていて、時代はどんどんと変化していることに少し寂しさを覚えながらも、やっぱりそんな懐かしさの中に身を置いてみたいような気分になったのでお好み屋さんに行ってみることにしました。
小さな手に500円玉を握り締めて通っていたお好み屋さん。そこは地元産の「ばらソース」を使っていました。「おばちゃーん、エビ玉ちょうだい」って言いながらスチールの丸椅子に座って、アップルという甘ったるいジュースを飲みながら焼き上がるのを待ちます。
小学生だった私はおばちゃんといつも色んなお喋りをしながら、キャベツをたっぷりと乗せた薄い生地をひっくり返す瞬間を楽しみに眺めていました。今になって思い返すと、お好みを食べるだけでなくておばちゃんとのそんなやり取りが好きだったんだなと思います。
もうお店にはいないおばちゃん。そこに行くのは余りに寂しい気がしたので、やっぱり今日は違うお店に行くことにしました。ソバめしで有名な「青森」、前から一度訪ねてみたいと思っていたお店です。
「青森」は、お店を開けて64年になるそうです。初めて行きましたが、古くからのお好み屋さんは懐かしさの気配をたっぷりと含んでいます。鉄板の上にはしっかりと煮込まれた濃い色のスジコンニャクの鍋が乗っていて、スジソバめしを注文すると鉄板に移されたスジコンニャクの甘い匂いがお店いっぱいに広がりました。
「甘いのんと辛いのん、どっちにする?」焼き終わってから、おばちゃんがソースを取ってくれます。お好み屋さんに行くと、店主さんを「おばちゃん」って呼びたくなってしまうから不思議ですよね。湯気のあがるソバめしをコテに取って、フーフーしながらひと口食べるごとに、子供の頃へと時間がさかのぼっていくような感覚になりました。
ほろっと優しいソバめしの味。ここも懐かしの「ばらソース」で、辛いといってもそこまで辛くはない甘酸っぱいそのソースの味に、昔の記憶がとりとめなく蘇ってきます。アップルを飲みながら、やっぱり自分のルーツは下町なんだなぁと確信しました。
「昔は近所に靴の工場やミシン場がいっぱいあって、従業員さんが自分で冷やご飯を持ってきてこの鉄板であっためながら、ソバをおかずにして食べてたんよ。昼休憩は短いから早よ食べなあかん、それでお客さんがご飯とソバ混ぜてメニューにしてって言って、これになったん。」
なぜ最初にソバめしを作ろうと思ったのかと聞いた私に、おばちゃんはそう教えてくれました。お喋りをしている間もずっと、ソバめしは鉄板の上でホカホカと湯気を立てています。
時間が経つごとにソバもカリッとしてきて、いつ食べてもほくほくとあったかい。こんがり焼けて香ばしさを増したスジ肉がころんとコテから転がるのも何だか楽しいような、そんな時間が過ぎていきます。
帰り際に常連さんがふたり入ってきました。注文された「いつものやつ」らしきそのお好み焼きは、まるで見たことのないビジュアルをしています。それ何ですか?と思わず聞くと「これは鶏皮、皮スジって言うお好み焼き。20年間こればっかりここに食べに来てるよ」と、満面の笑顔でそう教えてくれました。
このお店がいつもの場所として、いつまでも在り続けてくれるといいな。そんな風に思いながらお店を後にしました。「おばちゃーん、スジソバめしちょうだい」って言いながらお店に入って、アップルを飲む。あなたもぜひ一度、そんなタイムスリップをしに行ってみませんか?
青森
営業時間:11:30〜14:30、17:00〜21:00 (お酒は20:30まで。当面はこの時間帯の営業)
定休日:火曜
電話:078-611-1701
住所:長田区久保町4丁目8-6
HPなし
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