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不安定な若手先発投手陣を抱えるオリックスが採用すべきオープナーの有効性

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
メジャー昇格と同時にオープナーで経験を積んでいったライアン・ヤーブロー投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【対ロッテ戦1勝10敗1分けのオリックス】

 シーズン開幕直後にロッテ相手に6連敗を喫しスタートにつまずいたオリックスが、その雪辱を果たすべくロッテをホームに迎え入れての6連戦に臨んだ。だが結局1勝しかできず、対戦成績を1勝10敗1分けにしてしまった。

 現在15勝25敗4分けでパ・リーグ最下位に沈む。だがロッテ以外の4チームの対成績はほぼ勝率5割に届いており、まさにロッテ1チームだけにやられてしまっている状況だ。

 西村徳文監督も「それ(ロッテ)以外のチームには何とか互角以上に戦えている。そういうチームをつくってはいけない」と話し、今後のロッテ戦での巻き返しに意欲を見せている。

【立ち上がりに失敗した若手先発投手陣】

 今カードで唯一の勝利はチームが先制点を奪えた試合で、他の試合はロッテに先制点を許し、カード初戦で同点に追いついた以外はそのまま追いつけずに敗れるという展開だった。

 西村監督は「ここのところ5回くらいまでに点がとれていない。そこじゃないですかね」とし、不振傾向にある攻撃陣を課題に挙げた。だがそれと同時に、山本由伸投手、鈴木優投手、榊原翼投手、K-鈴木投手の若手先発投手陣が早い回から大量失点を許してしまったのも、大きな誤算だったことは否めない。

 それでも山本投手は6回まで踏ん張り、一応エースとして最低限の役目を果たしたように思うが、他の3投手は5回を持たずに降板し、リリーフ陣の負担を増やすことになってしまった。

 これら3投手は登録が抹消され、とりあえずファームで再調整することになった。

【好不調が激しい3本柱に続くべき先発陣】

 以前に本欄で、今や球界を代表する投手になり始めた山本投手に加え、昨年の最高勝率のタイトルを獲得した山岡泰輔投手、さらに田嶋大樹投手がローテーションの核になれる投手へと成長し、リーグ屈指の投手王国の道を歩んでいると報告していた。

 だがシーズンを重ねていく中で、彼ら3人に続くべき、若手先発陣の好不調が激しく、今一つローテーションが安定しない実情が明らかになった。上述の3投手は、その典型といっていい。

 そうした才能ある若手先発投手を育成していくためにも、オリックスは2018年からMLBで導入され始めたオープナーを採用すべきではないだろうか。

【若手投手の育成に有効なオープナー】

 オープナーとは、先発投手を使わずに中継ぎ投手だけで試合を繋いでいく起用法を指し、「ブルペンデー」とも呼ばれている。

 MLBでは以前から、先発の谷間に採用されていた起用法だが、レイズのケビン・キャッシュ監督が定期的に本格導入し始めたことで、さらに注目を集めるようになった。それと同時に、オープナーを採用するチームが増え始めている。

 実はオープナーは、単に先発の谷間を埋めるだけではない。将来的に先発を担わせたい、若手投手の育成にも有効なのだ。

 その典型的な例が、レイズのライアン・ヤーブロー投手だ。

 2018年に26歳で開幕から念願のメジャー初昇格を果たすと、ヤーブロー投手は主にオープナーの中盤でロングリリーフを担う“準先発”投手的な役割を与えられた。そのシーズンは38試合(うち6試合に先発)に登板し、16勝6敗の成績を残している。

 試合途中から投げるため、試合をつくらなければいけない、最低でも5回以上は投げなければ、という先発特有のプレッシャーがないこともあり、ヤーブロー投手が経験を積む上で最高の役割だった。

 そして2019年は先発登板の機会を増やし、28試合中14試合に先発し、11勝6敗を記録。そして今シーズンは開幕から先発ローテーションの一角を任されている。

【ソフトバンクもオープナーで板東湧梧投手を覚醒】

 最近になって日本でも、ソフトバンクがオープナーを若手投手の育成の場として有効に活用している。

 昨年のドラフト4巡目指名の板東湧梧投手を7月10日に1軍登録した工藤公康監督は、3試合の中継ぎ登板を経て、同30日の西武戦で先発に抜擢した。だが立ち上がりから失点を重ねてしまい、5回途中5失点で敗戦投手になってしまった。

 工藤監督はすぐさま方針転換し、板東投手をヤーブロー投手のようにオープナーの2番としてロングリリーフを担わせた。すると8月6日の楽天戦で3回を無失点、続く9日の楽天戦でも中2日ながら4回を無失点に抑え、いずれも勝利投手に輝いているのだ。

【オリックスにとっても最適な起用法になる?】

 現在のオリックスは、山岡投手が負傷のため戦線離脱しているが、山本投手、田嶋投手に加え、アンドリュー・アルバース投手、山崎福也投手がほぼ安定して5回以上投げている。ここに山岡投手が復帰してくれば、6人の先発ローテーションの5枠を埋めることができる。

 そこで残り1枠のところでオープナーを採用し、ここに榊原投手や鈴木投手らにロングリリーフ役を任せ経験を積ませれば、理想的なローテーションが完成するように思えてならない。

 ファームで調整するよりも1軍の舞台で投げ続けた方が、若手投手にとっての経験値ははるかに高いものだ。今後のオリックスの起用法に注目してみたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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