弟が返上したタイトルを得たWBOアジアパシフィック新チャンプ
「すいませんでした。しっかり練習して、もっと強くなります!」
勝者はそう言うと、青コーナーのタラップを降りた。プロ4戦目にしてWBOアジアパシフィックミニマム級タイトルを獲得した喜びは、ほとんど感じていないようだった。
11月12日に後楽園ホールで行われた同タイトル空位決定戦で、重岡優大は小浦翼を2-0の判定で下し、実弟が8月に返上したベルトを巻いた。
が、勝利者インタビューで自身が語ったように、「簡単にKOして世界戦に繋げる」ような内容ではなく、15戦(10KO)1敗の元OPBF東洋太平洋同級王者である小浦に、プロの厳しさを教えられた。
重岡優大がワンツーを当てても、小浦は体を寄せ、3つ目、4つ目のパンチをヒットさせない。両者はクリンチで揉み合うシーンも多く、12回が終了した。
重岡優大を指導する町田主計トレーナーは振り返る。
「小浦選手の巧みなクリンチワークに、優大は手こずりました。片方が絡められていても、もう一本の腕は空いていますから、肩や腹を打って相手を削っていけ! という指示を出したのですが、なかなか難しかったですね。でも、12ラウンド戦い、生き残ったことが収穫です」
重岡優大の所属するワタナベジム、渡辺均会長も話す。
「確かに苦戦しました。試合後、優大自身が『このままでは世界戦なんて厳しい。日本タイトルから一歩一歩やっていく』という気持ちになったことを、私はプラスに捉えます。小浦とのキャリアの差を感じたんですね。
WBOアジアパシフィック王座の防衛戦、日本タイトル挑戦を視野に入れて経験を積ませます。優大は空振りが多いので、もっとコンパクトにパンチを当てる、そして12ラウンドを体で覚えることが当面の課題でしょう。いいものを持っていることは間違いないので、じっくりやらせますよ」
WBC13位にランクされる重岡優大だが、「焦る事よりも積み重ねが大事だ」と学んだようである。