NBAレジェンドの娘がサッカーで五輪出場
パリ五輪に出場する米国女子サッカー代表選手、18名が発表された。38キャップで7ゴールを挙げている22歳のトリニティ・ロドマンも順当に選ばれた。NBAのリバウンド王だったデニス・ロドマンの実娘である。
父の遺伝子を受けたトリニティは、力強いプレーを見せる。体幹の強さは父親譲りだろう。そしてヒールパスや、股抜きを随所に披露する気の強さも、デトロイト・ピストンズの背番号10、シカゴ・ブルズの背番号91を彷彿させる。
デニスはピストンズ時代の1989年、1990年にNBA王者となり、ブルズ移籍後は、マイケル・ジョーダンやスコッティ・ピッペンと共に1996年から3連覇を成し遂げた。
彼はテキサス州ダラスの貧民窟で育った自らの生い立ちについて、こう振り返っている。
「バスケットボールと出会っていなかったら命を落としていたか、刑務所に入っていただろう。いつも俺の周囲にあるトラブルを、バスケが解決してくれた。
全てのリバウンドが、俺の個人的な挑戦だった。最高峰で生き残るには、勝て たなきゃいけなかった。『このボールを失ったら、また地獄のようなダラスのゲットーに戻るしかない』という危機感を覚えていた」
カリフォルニア州ニューポートビーチで誕生したトリニティは、4歳からボールを蹴り始め、小学校に入学した時点でプロ選手を夢見るようになる。10歳にして、女子サッカー界で話題となったのは、父親の存在が理由ではない。彼女のパフォーマンスが、将来大きな花を咲かせることを予期させたからだ。
U17からアメリカ代表のユニフォームを身に纏い、18歳でプロ契約。父は高校入学時に168センチしかなく、NBA入りしたのが25歳と大器晩成型だったが、娘はエリート街道を突っ走ってきた。
パリ五輪で2019年ワールドカップ以来の王座返り咲を目指す米国女子代表チームは、このほど長年ストライカーとしてチームを牽引してきたアレックス・モーガンを外した。35歳のモーガンは、衰えが目立っていた。トリニティ・ロドマンは、女子サッカー界のスターからバトンを受けた次の主役となるか。
昨年の女子ワールドカップで、米国はベスト16で敗退している。トリニティは言う。
「“負けた”って言葉は嫌いです。ワールドカップに向けた日々は、混沌としていて、多くの調整が必要でした。自分がどこに立っているのか、ちょっと分からなくなっていたんです。
今、私たちはチームとしてより強固な絆があり、お互いのために働いているように感じます。以前は必ずしもそうじゃなかった。特定の人の技術や神憑ったプレーに依存するのではなく、チーム全員の努力が重要です」
トリニティはパリでブレイクするか。願わくは観客席に座り、娘に視線を送る父の姿も目にしたい。