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早くも批難が噴出! 頑なな姿勢を見せる選手会はこのまま孤立していくのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
選手会のトニー・クラーク専務理事(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLBと選手会がオンライン会議を実施】

 現地時間の5月11日に、MLBが提出した2020年シーズンの実施案(以下、MLB案)が球団オーナーから承認されたことを受け、具体的な実施内容を含め、日米メディアが大きく報じている。

 最終的にMLB案が実行されるには、選手会の認可が必要になってくるわけだが、ニューヨーク・ポスト紙のジョエル・シャーマン記者によれば、12日にMLBと選手会が90分間にわたるオンライン会議を実施したようだ。

 だが現時点で米メディアから、選手会がMLB案を認可したというニュースは聞こえてこない。

【MLB案に異議を唱える選手会専務理事】

 そもそも今回のMLBと選手会の協議が行われる前から、かなり難航することが予想されていた。というのも、11日の時点で選手会のトニー・クラーク専務理事がMLB案に異議を唱える発言をしていたからだ。

 その理由は、MLB案に織り込まれている選手のサラリー支払い方法にある。

 MLB案ではシーズン82試合の実施を目指しており、例年のほぼ半数の試合数で、しかも当面は無観客試合で行われることになる。いうまでもなく、リーグ、チームとともに相当な減収を余儀なくされてしまう。

 そのため今シーズンに関しては、選手に契約ベースの年俸を支払うのではなく、リーグ、チームが得る収益を選手と折半して、選手の取り分を各選手に分配する「収益分配性(revenue sharing)」を採用したいと考えているのがMLB案だ。

 しかしこの方法は自動的に選手のサラリーに上限が設けられることになるため、選手会が長年にわたり反対してきた「サラリーキャップ」と同じ仕組みになってしまう。そのためクラーク専務理事は「収益をベースにして選手の支払いを制限するシステムは、まさにサラリーキャップそのものだ。それに尽きる」と発言し、MLB案に反発しているのだ。

【世論は圧倒的に選手会を批難?】

 だが今も新型コロナウイルスの影響を受け、スポーツ界のみならず米国社会全体がダメージを受ける中で、選手会の主張は世論に受け入れられるのだろうか。

 しかも現在は米国の主要プロリーグで、サラリーキャップ制度を導入していないのはMLBだけなのだ。

 すでに選手会に疑問を呈する声が上がり始めている。

 州内でのスポーツ再開を目指しているイリノイ州のJB・プリツカー知事は12日の記者会見で、MLBと選手会の協議について以下のように発言している。

 「今はすべての人たちが犠牲を覚悟しなければならないと考えられるこの時期に、選手たちがあまりにも高額なサラリーの支払いを求めていることに、いろいろな面で失望している」

 MLB界の内側からも、選手会の姿勢に異議を唱える人物が登場している。現在ESPNでアナリストを務めているマーク・テシェイラ氏だ。出演したESPNの番組内で、以下のように発言している。

 「問題は、世界中にサラリーを削減されたり、職を失ったり、生活を奪われる人たちが存在し、医療従事者たちは生命のリスクを抱えながら前線で戦っている最中だ。

 まさに予測外の事態が巻き起こっている。自分は50-50の収益分配性を支持するべき時だと思っている。決しておかしなことではない」

 このまま選手会が頑なな態度をとり続ければ、どう考えても世論はMLBに味方することになりそうだ。果たして彼らは、このまま孤立の道を突き進んでしまうのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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