「日韓逆転」の現実をグアムで痛感。なぜ韓国人は日本人より豊かになったのか?
■グアムは「韓国人のためのリゾートアイランド」
いま、欧米に行けば、いかに日本人が貧しくなったかを実感する。以前なら、どこに行っても見かけた日本人観光客をほとんど見かけなくなったからだ。
欧米ばかりではない、以前は「安近短」の海外旅行先として人気だったグアムもそうである。先日、私は久しぶりにグアムに行ったが、日本人観光客よりはるかに韓国人観光客のほうが多く、もはやグアムは「韓国人のためのリゾートアイランド」と化していた。
すでに日韓はあらゆる面で逆転した。それを物語るのが、グアムである。
私が宿泊したホテルはもちろん、ほかのホテルでも韓国人滞在客のほうが断然多く、ショッピングモールも、レストランも、ハングル表記が目立った。
■いまや海外旅行は「高嶺の花」に
グアムの観光ビジネスは、2020年からのコロナ禍で大きく落ち込んだが、昨年から回復した。しかし、まだコロナ禍前の状態には戻っていない。
「韓国人も日本人も戻って来ていません。ただ、日本人のほうが戻りが少ないんです」と、ホテルの従業員。
日本人がコロナ禍が明けてもやって来ない理由は、はっきりしている。空前の円安のせいである。グアムに限らず海外旅行は、いまや日本人にとって「高嶺の花」となった。
この夏の海外旅行客数は、JTBにしてもHISにしても、昨年を上回ったものの、コロナ禍前の2019年に比べたら半減している。
■コロナ禍前からグアムは韓国人のためのリゾート
グアム政府観光局(GVB)のデータを見ると、グアムを訪れる観光客数はコロナ禍前の半数に過ぎない。2024年度の最初の8カ月間にグアムを訪れた入国者は約52万人で、その内訳は以下のとおり。韓国人入国者は、日本人入国者の倍以上となっている。
韓国:281,709人(コロナ禍前の2019年度比59%)
日本:136,079人(同比30.9%)
米国/ハワイ:57,014人(同比91%)
フィリピン:8,965人(同比59.8%)
ミクロネシア連邦:8,242人(同比96.9%)
CNMI:7,791人(同比55.4%)
海上到着者数(クルーズ船を含む): 7,756人
中国:3,074人(同比33.2%)
パラオ:2,268人(同比86.7%)
台湾:1,999人(同比11.1%)
■直航便の数は韓国のほうが圧倒的に多い
グアムへの入国者数は、コロナ禍前の2019年は、全体で約163万人。それまでの10年間は、毎年150万人前後で推移していた。そして、このうちの5割以上を韓国人が占めていた。
つまり、コロナ禍、円安以前から、グアムは韓国人のためのリゾートになっていた。
韓国人観光客が大挙押し寄せる原因の一つが、直航便の多さだ。
現在、日本からのグアムへの直行便は、ユナイテッドとJALしかない。これに対して、韓国からは、大韓航空、ティーウェイ航空、ジンエアー、チェジュ航空が毎日飛ばしている。日本の航空界が規制緩和をせず、LCCの導入が大幅に遅れたことが、この状況を招いた一因でもある。
■実質的な豊かさでは韓国のほうが上
年々、日本と韓国の経済的な豊かさの差は開いている。日本のGDP成長率は2020年以降、毎年1%がやっとなのに対し、韓国はコロナ禍の2020年を除いて3%前後を維持している。
問題は、GDP成長率より、国民の豊かさを表す1人あたりのGDPだ。IMFの統計を見ると、2023年における1人あたりのGDPは、日本は3万3805ドル。これは、アメリカの8万1637ドルの半分以下で、世界189カ国中32位である。
一方、韓国は3万3192ドルで、わずかだが日本を下回っているが、実質GDPや購買力平価では、すでに日本を上回っている。
2000年からのこの四半世紀で、日本の1人あたりのGDPはほぼイーブンだったが、韓国は約2.5倍にもなっている。こうなると、どう見ても韓国のほうが先進国である。
■人材の国際ランキングに見る日韓の差
なぜ、韓国は日本より豊かになったのか?
さまざまな原因が挙げられるだろうが、はっきりしているのは人材としての韓国人のほうが日本人より上だということだ。
スイスのビジネススクールIMDが毎年公表している「世界人材ランキング」で、韓国は今年20位となり、1997年に評価対象になって以来、もっとも高い順位を獲得した。これに対して日本は2009年に23位まで順位を上げたものの、毎年順位を落とし、今年はついに38位まで落ちてしまった。
ちなみに、アメリカは12位、中国は14位で、アジアではシンガポールの8位が最高だ。
また、同じくIMDの「世界のデジタル競争力ランキング」でも、日本の順位は32位と圧倒的に低い。とくに、「上級管理職の国際経験」(64位)、「デジタル・技術的スキル」(63位)、「高度外国人材への魅力」(54位)の3つは、完全に途上国並みである。韓国は6位、台湾は9位、中国は20位である。ちなみに、首位はアメリカだ。
■教育の差が日韓の給料の差になった
日本の「失われた30年」を招いた経済低迷で、よく指摘されるのが、労働生産性の低さである。労働生産性を生み出すのは人間であるから、それが低いということは人材の質が低いということである。日韓の差は、まさにここに顕著に表れている。
韓国企業は、1997年の通貨危機以後、成果主義を導入して、成長の成果を労働者に分配してきた。日本のような年功序列、終身雇用を廃して、成果をあげた者により多く分配するというメリットシステムを採用した。
その結果、教育が変わり、企業もOJTを積極的に行って、良質な人材が育成された。
2000年からのこの四半世紀において、日本の労働者の賃金はほとんど伸びなかったが、韓国の労働者の賃金は2倍以上になった。これは、日本の人材が韓国の人材より劣ってしまったからである。
同じように大学を卒業しても、日本人の若者のほうが企業人材として見た場合、韓国の若者より劣る。これでは、高い給料を払えない。
■英語とデジタルスキルの差は致命的
国家経済が発展していくうえでもっとも重要なことは、時代にあった教育にどれほど投資するか? すなわち、どれほどいい人材をつくれるかだ。つまり、人的資本を充実させなければ、経済成長などできない。日本政府は、このことを怠った。日本は諸外国と比較して、教育にお金をかけてこなかった。
OECD各国における公的教育支出のGDP比を見ると、日本は3.5%でOECD各国平均4.8%を大きく下回っている。これは37カ国中でなんと36位で、もはや致命的とも言える状況になっている。
世界共通語の英語とプログラミング。デジタルエコノミーのこの時代に、この重要な2点を怠ったために、日本人は人材としては世界でもっとも劣った労働者になってしまった。
いまや、日韓のデジタルデバイドの差は、救い難いものになっている。平均的に見て、韓国人のほうがはるかに英語がうまいし、デジタルスキルも上だ。
■10年後、韓国人は日本人の1.5倍豊かに
今回の立憲民主党党首選、自民党総裁選で、教育に触れた候補者は少なかった。触れたとしても「教育無償化」「少子化対策の学費補助」のようなバラマキ政策の話ばかりで、教育の中身に具体的に踏み込んだ発言は少なかった。
与野党ともリーダーが変わり、その後の総選挙で、日本の新しい首相が誕生する。その新首相は、このような日本の状況に危機感をどれほど持っているだろうか。
なんとか、次のリーダーに日本を変えてほしいと願うが、願うだけ無駄かもしれない。
ここに記したデータが示しているのは、半世紀にわたった日本の「先進国時代」が、日韓逆転によって完全に終わりを告げたことだ。
日本は謙虚に韓国の先進性に学んで、早急に改革を進めなければならない。このまま日韓の経済成長の差が続くとすると、10年後には1人あたりのGDPは韓国が日本の1.5倍になる。韓国人は日本人よりはるかに豊かになる。