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懐かしの名作レースゲームを現代風にアレンジ 鮮やかに復活を遂げた「F-ZERO」

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
「F-ZERO99」のゲーム画面(※筆者撮影。以下同)

任天堂は9月14日に「ニンテンドーダイレクト」を配信した。

本配信では「スーパーマリオブラザーズ ワンダー」をはじめ、数々のNintedo Switch用新作ソフトやサービスの内容が明らかにされた。久々に登場する「スーパーマリオ」シリーズの完全新作は、とりわけ世界中の多くのファンが楽しみにしていることだろう(筆者もそのうちの1人だ)。

今回の配信で、筆者が各新作タイトルとともに注目したのは、本配信が終了した直後のタイミングでサービス開始となった「F-ZERO(エフゼロ)99」である。

本作は、1990年に発売されたスーパーファミコン用ソフト「F-ZERO」をアレンジしたレースゲーム。元祖「F-ZERO」は1人プレイ専用だったが、本作は最大99人のプレイヤーが同時に参加するバトルロイヤルが楽しめるのが最大の特徴だ。

本作はダウンロード配信専用で、Nintendo Switch Onlineに加入すれば誰でも無料で遊ぶことができる(※元祖「F-ZERO」も、Nintendo Switch Onlineに加入すると無料で遊べる)。

最大99台のマシンが、同時にコース上を走る光景は壮観だ
最大99台のマシンが、同時にコース上を走る光景は壮観だ

懐かしくも新しい遊びが体験できる見事なアレンジ

元祖「F-ZERO」は、スーパーファミコン本体と同時に発売された、いわゆるローンチタイトルの1つで、抜群のスピード感に加え、CPUが操るマシンとの白熱のバトルやタイムアタックが楽しめることから、筆者は今でも高く評価している。

だが「F-ZERO」シリーズは、2004年に発売されたゲームボーイアドバンス用ソフト「F-ZERO CLIMAX」以来、新作のリリースが途絶えてしまった。同じくスーパーファミコン発祥で、今でもシリーズ作品が出続けている「マリオカート」シリーズとは対照的に、もはや当のメーカーも重要なIPとは認識していないように思われた。

そんな長年眠っていた「F-ZERO」が、オリジナル版を知らない若いプレイヤーにもなじみやすいであろうバトルロイヤル方式にアレンジされ、何の前触れもなく唐突に配信が始まり、なおかつ試しに遊んでみたらとても面白かったので本当に驚かされた。

マッチング中の画面より
マッチング中の画面より

本作は、シリーズ最後の作品である「F-ZERO CLIMAX」ではなく、初代「F-ZERO」をアレンジし、基本操作やコースマップ、ビジュアル、BGMを当時とほぼ同じ構成にしたことも特筆に値する。あえて初代をアレンジしたのは、スーパーファミコンブーム期を知る30代以上のプレイヤーに親しみやすくしたことで、親子で楽しめるようにする意図もあったように思われる。

Nintendo Switch Onlineでは、2020年にサービスを開始した「スーパーマリオブラザーズ35」を皮切りに、現在までに「テトリス99」「パックマン99」の各バトルロイヤルゲームが登場している(※「スーパーマリオブラザーズ35」は2021年でサービスを終了)。

これらの有名IPは今でもシリーズ作品が出続けているが、本作のように長期間新作が発売されていないIPに再フォーカスして、プレイヤーに懐かしくも新しい体験を提供し、しかも追加料金なしで手軽に遊べるようにしたのは、とても良い試みではないだろうか。本作をプレイしていて、筆者は率直にそう思った。

時間帯によってはグリーン、ピンクの2チームに分かれたうえで勝敗を競う団体戦「チームバトル」も楽しめる
時間帯によってはグリーン、ピンクの2チームに分かれたうえで勝敗を競う団体戦「チームバトル」も楽しめる

今回のニンテンドーダイレクトでは、リメイク作品がいくつも紹介されたこともあり、Nintendo Switchの後継機が発売されるまでの「時間稼ぎ」をしているとの批判も耳にする。だが、こと本作に関しては、単なる「時間稼ぎ」が目的で作ったとは安易に言えないだけの面白さがあるように思えてならない。

近い将来、新ハードに代替わりするタイミングが間違いなくやって来るだろう。とはいえ、本作のように時代に合わせたアレンジ版の配信を世代交代後も継続し、ひいては長らく忘れられていたIPを復活させることで、我々を楽しませてくれることを大いに望みたい。

(C)Nintendo

(参考リンク)

・「F-ZERO99」公式サイト

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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