Yahoo!ニュース

トレード市場で今回も売り手に回りそうなエンジェルスの惨状と打開するための2つの選択肢

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
エンジェルスの行方を左右することになるビリー・エプラーGM(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【各チームから注目を集めるエンジェルス】

 ほとんどのチームが短縮シーズンの半分を戦い終える中、エンジェルスが相変わらず低迷を続けている。

 現地時間の8月25日の公式戦終了時点で、チーム成績は10勝22敗。ア・リーグ西地区最下位に沈む。勝率.313はリーグ最下位で、MLB全体でもパイレーツ(.280)に次ぐ低さだ。

 今シーズンからポストシーズンの枠が広がり、両リーグから8チームが進出できるようになったが、エンジェルスの6年ぶりのポストシーズン進出がかなり厳しい状況にあるのは、疑いようのない事実だ。

 こうした状況を受け、現在のエンジェルスは各チームから注目を集める存在になっている。

【売り手に回ることになりそうなトレード市場】

 というのも、今シーズンのトレード期限が、8月31日に迫っているからだ。もしエンジェルスが今シーズンのポストシーズン進出を諦めた場合、エンジェルスの主力選手をトレードで獲得したいチームが、その動向に注目しているというわけだ。

 ESPNによれば、トレードに興味にある数チームが先週の段階でエンジェルスに連絡を入れているようだが、その時点では「もう少し様子を見守りたい」との回答で、明確な姿勢を示さなかったという。

 仮にエンジェルスがトレード市場で売り手に回った場合、トミー・ラステラ選手、アンドレルトン・シモンズ選手、デビッド・フレッチャー選手、ルイス・レンヒーフォ選手らが引く手あまたの存在になるとの予測をしている。

【名指揮官を迎えても改善できない投手陣】

 ファンの中には、今シーズンのエンジェルスに期待している人が少なくなかったはずだ。すでにMLBでも名将と謳われるジョー・マドン監督を迎え入れ、FA市場でアンソニー・レンドン選手を獲得し、打線強化に成功した。

 さらに大谷翔平選手が二刀流選手として完全復帰することも期待され、チームには好材料が揃ったように見えた。

 だがその一方で、チームの最重要課題だった投手陣の整備はまったく進んでおらず、大きな不安材料になっていた。そしてシーズン開幕から、その弱点を露呈させてしまった。

 いきなり大谷選手が投手として戦線離脱するという想定外のアクシデントが起こったのは事実だが、ここまでのチーム防御率は5.30でMLB27位。大谷選手のせいだけでなく、投手陣全体が不振を極めている(防御率は8月24日現在の成績)。

 特に先発陣は深刻で、先発陣だけの防御率を見ると、6.06で同29位の状況だ。これは以前から言われ続けていたことだが、エンジェルスに先発ローテーションの核になれるエース投手が存在していないということだ。

【打開策の選択肢は2つだけ】

 現状を打開するためには。先発投手を補強するしかない。

 メディアの中には、大谷選手が完全復帰すればエースとして機能するとの見立てをする人もいるが、まだ一度もシーズンを通してケガなく投げ切った経験のない投手に対して期待が高すぎるし、またリスクも大きすぎる。

 そうなると選択肢は2つしかない。

 まず1つは今シーズンのトレード市場で売り手に回り、主力選手を放出する見返りとして、将来を嘱望される若手有望先発選手を獲得し、先発投手陣を整備することだ。

 だがこの場合、即戦力の先発投手を獲得するわけではないので、数年後を見据えた戦力補強になる。

 もう1つは、FA市場で即戦力の先発投手を補強することだ。しかしエンジェルスに無尽蔵の予算があるわけではない。すでに予算いっぱいのチーム編成の中で、高額の大型年俸を提示する余裕などない。これがずっとネックになっており、なかなか実績ある先発投手を獲得できずにいた。

 となれば、すでにチームで不良債権化しているアルバート・プホルス選手(残り1年で年俸3000万ドル)、ジャスティン・アップトン選手(残り2年で年俸総額5100万ドル)を整理し、FA先発投手を獲得できる予算を創出するしかない。

【すべてはエプラーGMの判断次第】

 トレード市場で売り手に回るかを含め、これらの決断はすべてビリー・エプラーGMの手に委ねられている。

 同GMは、今シーズンが契約最終年となっており、契約延長を獲得するためには来シーズン以降に向け明るい展望を経営陣に提示しなければ、彼らを納得させることはできないだろう。

 エプラーGMにとっても、ここ数日はまさに人生がかかった正念場になりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事