7日の英総選挙 保守党が第1党になりそうだが…
英国の総選挙は7日に投票が行われる。6つの選挙予想では、キャメロン首相率いる保守党が議会第1党になるものの、どの政党も単独では過半数に届かないハング・パーラメント(宙ぶらりんの議会)になるのは避けられない情勢だ。
連立交渉に数週間かかるという観測も出ている。ソーシャルメディアなどを使って簡単に選挙情勢を分析してみた。
ツィートの女王
ツイッターを最も活用しているのは、英国の政界地図を一変させようとしている地域政党・スコットランド民族党(SNP)のニコラ・スタージョン党首。6日午前10時半(ロンドン時間)の時点でツィート数の合計は1万180回。
上はツィートの分析ツール、twitonomyによる分析画面をスクリーンショットしたものだ。ツィート数では(2)最大野党・労働党のエド・ミリバンド党首4717回(3)デービッド・キャメロン首相1763回。
フォロワー数では(1)キャメロン首相99万8729人(2)ミリバンド党首47万916人(3)スタージョン党首19万1650人。
人口を考慮すると、英国6410万人、うちスコットランドは520万人。スタージョン党首のフォロワー数を単純に全国換算すると236万人を超える。いかにスタージョン人気がすごいかがわかる。
下はtwitonomyを使ってツィート頻度をグラフ化したものだ。まずはキャメロン首相。
次は労働党のミリバンド党首。
最後にスタージョン党首。保守党や労働党という主要政党より、新興勢力のSNPの方がソーシャルメディアを上手に活用して支持を拡大させていることが一目瞭然だ。
既存政党はどうしても上から下への情報発信になりがちなのに対し、新興勢力のSNPは「私たちはあなたたちと同じスコットランドの住民よ。一緒に未来を切り開きましょう」という横から横への語りかけになっている。
次はグーグルトレンドにキャメロン首相、労働党のミリバンド党首、SNPのスタージョン党首の名前を打ち込んで、インターネット上の関心の大きさを調べてみた。
ミリバンド党首がインターネット上の関心が一番高い。しかし各種世論調査、選挙予想を見ると、どうも上滑りしているようだ。世論調査では保守党と労働党がデッドヒートを繰り広げている。
過去の総選挙からみると、この状況では保守党から労働党への議席の大きなスイングは起きない。
主要紙の評決は
英国は日本と違って主要紙が投票前に政権にふさわしい政党を表明するのが慣例になっている。政策や政権運営の手腕から判断した新聞の評決は――。
【保守党】高級紙タイムズ、高級紙デーリー・テレグラフ、経済紙フィナンシャル・タイムズ、週刊誌エコノミスト、無料夕刊紙イブニング・スタンダード、大衆紙サン、大衆紙デーリー・メール
【自由民主党】高級紙インディペンデント
【労働党】高級紙ガーディアン、大衆紙デーリー・ミラー、大衆紙モーニング・スター
【英国独立党(UKIP)】大衆紙デーリー・エクスプレス
メディア王ルパート・マードック氏傘下のタイムズ紙とサン紙は保守党と自由民主党の現連立政権の継続を主張している。
世界金融危機と経済危機のあと、財政再建に取り組み、経済をここまで立て直した保守党のジョージ・オズボーン財務相の手腕は大したものだ。これに対し、労働党のミリバンド党首、エド・ボールズ影の財務相の力量には疑問符がつく。
筆者も新聞の評決と同じく、キャメロン、オズボーンのコンビに軍配を上げる。選挙後は保守党と自由民主党を軸に連立交渉が進められる可能性が強いと踏んでいる。
英国は先の大戦後、米国との「特別な関係」を軸に、核保有国、国連安全保障理事会常任理事国(P5)、先進7カ国(G7)のメンバーとして実際の国力以上の影響力を国際舞台で発揮してきた。その歴史も今回で幕を閉じるだろう。
難しい問題がいくつもある。(1)英国は欧州連合(EU)に残留するのか、離脱するのか(2)スコットランドは英国から分離・独立するのか(3)米国との同盟関係はどうなるのか――。
英国の未来を正確に予測するのは難しくなっている。
(おわり)