渡辺名人突き放すか、斎藤八段追いつくか――第80期名人戦七番勝負第4局展望
渡辺明名人(38)=棋王に斎藤慎太郎八段(29)が挑戦する第80期名人戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)七番勝負は第3局までを終え2勝1敗と渡辺名人がリードしている。第4局は5月19、20日に山口県山口市「名勝 山水園」で行われる。
開幕から2連勝で渡辺名人が防衛に大きく前進したように見えたが斎藤八段は第3局で苦しい将棋を逆転勝ちし、先行きはわからなくなった。七番勝負の「天王山」となる第4局の勝敗と展開を、データを基に予想してみた。
<第80期名人戦七番勝負これまでの勝敗と日程>
第1局 4月6、7日 東京都文京区「ホテル椿山荘東京」
渡辺名人(先手)勝ち
第2局 4月19、20日 石川県金沢市「金沢犀川温泉 川端の湯宿 滝亭」
渡辺名人(後手)勝ち
第3局 5月7、8日 福岡県福岡市「アゴーラ福岡山の上ホテル&スパ」
斎藤八段(後手)勝ち
第4局 5月19、20日 山口県山口市「名勝 山水園」
第5局 5月28、29日 岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」
第6局 6月7、8日 山梨県甲府市「常磐ホテル」
第7局 6月24、25日 山形県天童市「天童ホテル」
両者の調子はほぼ互角か
<渡辺名人の最近10局>
3月6日 棋王戦五番勝負第3局
対永瀬拓矢王座 ●
3月20日 棋王戦五番勝負第4局
対永瀬王座 ○
3月24日 ヒューリック杯棋聖戦本戦
対三浦弘行九段 ○
4月6、7日 名人戦七番勝負第1局
対斎藤八段 ○
4月14日 ヒューリック杯棋聖戦本戦準決勝
対久保利明九段 ○
4月19、20日 名人戦七番勝負第2局
対斎藤八段 ○
4月25日 ヒューリック杯棋聖戦本戦挑戦者決定戦
対永瀬王座 ●
4月28日 王座戦本戦
対服部慎一郎四段 ○
5月2日 竜王戦1組出場者決定戦
対山崎隆之八段 ●
5月7、8日 名人戦七番勝負第3局
対斎藤八段 ●
<斎藤八段の最近10局>(相手の肩書は対局当時)
1月28日 王座戦2次予選
対井上慶太九段 ○
2月4日 順位戦A級
対豊島将之九段 ○
2月10日 叡王戦本戦
対藤井猛九段 ○
3月3日 順位戦A級
対糸谷哲郎八段 ●
3月12日 叡王戦本戦
対出口若武五段 ●
3月29日 王座戦2次予選
対出口五段 ●
4月6、7日 名人戦七番勝負第1局
対渡辺名人 ●
4月13日 竜王戦2組昇級者決定戦
対郷田真隆九段 ○
4月19、20日 名人戦七番勝負第2局
対渡辺名人 ●
5月7、8日 名人戦七番勝負第3局
対渡辺名人 ○
渡辺名人の直近は6勝4敗と勝ち越してはいるものの4月後半から黒星が先行し、調子はやや下降気味に思われる。
一方、斎藤八段の最近10局は5勝5敗と五分の成績でこちらも好調という感じではないが、七番勝負第3局の逆転勝ちが復調のきっかけになる可能性はある。
調子の比較ではほぼ互角と見る。
戦型は相掛かりが本命
直接対決は過去15戦して渡辺名人が10勝5敗とダブルスコアでリードしている。
ただし第4局は斎藤八段の先手。持ち時間の長いタイトル戦(名人戦は棋界最長の各9時間)では先手番の勝率が高くなることが近年のデータから明らかで、その点は斎藤八段にとって心強い。
第2局の先手番で斎藤八段が選んだのは角換わり。最近の先手番相居飛車では相掛かりと角換わりを選択しており、相掛かりのほうが好結果を出している。
よって第4局は相掛かりが本命で、次いで角換わりの可能性が高いと予想する。角換わりの出だしの場合、後手の渡辺名人が雁木模様に変化するかもしれないのは開幕前に予想したとおり。
総合的には依然として渡辺名人有利だが、斎藤八段が第4局で「先手番キープ」をしてタイスコアに戻せば、勝負の流れは追いついた挑戦者に移るといっていいだろう。