大一番を制すのは藤井竜王か、佐々木八段か――第37期竜王戦七番勝負第5局展望
藤井聡太竜王(22)に佐々木勇気八段(30)が挑戦する第37期竜王戦七番勝負(読売新聞社主催)は第4局までを終え2勝2敗のタイスコアとなっている。注目の第5局は11月27、28日に和歌山県和歌山市「和歌山城ホール」で行われる。
本局の勝者が七番勝負を制すまであと1勝となる大一番、データを基に勝敗と展開を予想してみた。
これまで4局はすべて先手番勝利
<竜王戦七番勝負これまでの結果と日程>
第1局 10月5、6日 東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」
藤井竜王(先手)勝ち
第2局 10月19、20日 福井県あわら市「あわら温泉 美松」
佐々木八段(先手)勝ち
第3局 10月25、26日 京都府京都市「総本山仁和寺」
藤井竜王(先手)勝ち
第4局 11月15、16日 大阪府茨木市「おにクル」
佐々木八段(先手)勝ち
第5局 11月27、28日 和歌山県和歌山市「和歌山城ホール」
第6局 12月11、12日 鹿児島県指宿市「指宿白水館」
第7局 12月18、19日 山梨県甲府市「常磐ホテル」
<藤井竜王の最近10局>(放映前のテレビ対局を除く)
8月27、28日 伊藤園お~いお茶杯王位戦七番勝負第5局
対渡辺明九段 ○
9月4日 王座戦五番勝負第1局
対永瀬拓矢九段 ○
9月18日 王座戦五番勝負第2局
対永瀬九段 ○
9月21日 将棋日本シリーズ
対佐々木大地七段 ○
9月30日 王座戦五番勝負第3局
対永瀬九段 ○
10月5、6日 竜王戦七番勝負第1局
対佐々木八段 ○
10月19、20日 竜王戦七番勝負第2局
対佐々木八段 ●
10月25、26日 竜王戦七番勝負第3局
対佐々木八段 ○
11月2日 将棋日本シリーズ準決勝
対広瀬章人九段 ●
11月15、16日 竜王戦七番勝負第4局
対佐々木八段 ●
<佐々木八段の最近10局>
10月15日 順位戦A級
対永瀬拓矢九段 ●
10月19、20日 竜王戦七番勝負第2局
対藤井竜王 ○
10月25、26日 竜王戦七番勝負第3局
対藤井竜王 ●
10月29日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選
対岡部怜央四段 ○
11月1日 ALSOK杯王将戦リーグ
対菅井竜也八段 ●
11月4日 ALSOK杯王将戦リーグ
対西田拓也五段 ●
11月8日 順位戦A級
対渡辺明九段 ○
11月11日 ALSOK杯王将戦リーグ
対永瀬九段 ●
11月15、16日 竜王戦七番勝負第4局
対藤井竜王 ○
11月20日 ALSOK杯王将戦リーグ
対羽生善治九段 ○
藤井竜王の直近10局は7勝3敗とまずまずだが10月以降で見ると2勝3敗の負け越し、調子が下降気味なのが気がかりだ。
佐々木八段は直近10局5勝5敗の指し分けで藤井竜王に比べれば見劣りするが、1勝5敗の成績で終えた王将戦リーグ以外では順調で、順位戦A級はここまで4勝1敗と挑戦者争いのトップグループをキープし、今回の竜王戦七番勝負でも内容的には藤井竜王を追い詰めており状態は決して悪くない。
調子の比較ではほぼ互角と見ていいだろう。
佐々木八段の後手番戦略に注目
過去の直接対決は藤井竜王の6勝4敗と拮抗している。七番勝負における戦型選択に関しては佐々木八段の後手番戦略に工夫が見られ、第1局では角換わりから新手を用いて難解な中盤に持ち込み、第3局では居飛車党にもかかわらず意表を突く角交換振り飛車を用いて中盤で振り飛車有望な局面を築いており、これまでの4局トータルで見ても内容的には五分以上にわたり合っている。
第5局は先手の藤井竜王が角換わりを志向する可能性が高いが、佐々木八段は入念に準備した秘策をぶつけることが予想され居飛車の趣向か、再び振り飛車を採用するかもしれない。
七番勝負の「天王山の戦い」といえる本局、これまでの直接対決では先手番敗戦がない藤井竜王わずかに優位と思われるが、佐々木八段がそれを覆すことでタイトル奪取に大きく前進できる。序盤から目の離せないギリギリの勝負になるだろう。