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三連休から台風北上を妨げ、秋雨前線南下を遅らせ、記録的な残暑をもたらしている高気圧の張り出しが後退

饒村曜気象予報士
大雨がたたきつける家屋(写真:イメージマート)

西日本への高気圧の張り出し

 令和6年(2024年)9月は、見かけ以上に強い太平洋高気圧が西日本に張り出しています。

 このため、秋雨前線の南下を遅らせ、台風の北上を妨げ、西日本を中心に記録的な残暑をもたらしています。

 東北地方には前線が停滞し、前線の北側の北海道では秋の気配がみられるようになってきましたが、この前線がなかなか南下してきません。

 このため、東日本の太平洋側から西日本は、秋の気配がみられません。

 また、9月10日21時にマリアナ諸島で発生した台風13号は、高気圧に北上を妨げられ、北西進しながら発達して鹿児島県・奄美大島近海を通って東シナ海に入りました。

 さらに、9月15日21時に同じマリアナ諸島で発生した台風14号も、高気圧に北上を妨げられ、沖縄本島を通って東シナ海を北西進し、中国大陸に向かっています(図1)。

図1 西日本に張り出している高気圧によって中国大陸に向かう台風14号と南下してこない秋雨前線(9月19日15時)
図1 西日本に張り出している高気圧によって中国大陸に向かう台風14号と南下してこない秋雨前線(9月19日15時)

 西日本に張り出している高気圧によって台風の北上が妨げられましたが、高気圧の縁辺をまわるように、南海上の暖かくて湿った空気の流入が続いています。

 暖かくて湿った空気の流入は、日射によって熱中症になりやすい湿った暑さになりますが、同時に大気を不安定にさせますので、局地的に積乱雲が発達し、落雷や局地的豪雨がセットで連日続いています。

9月になっても熱中症警戒アラート

 9月19日に一番気温が高かったのは、福岡県・太宰府の38.3度で、次いで、熊本県・甲佐と長崎県・大村の38.1度でした。最高気温が35度以上の猛暑日を観測したのは131地点(気温を観測している914地点の約14パーセント)もありました。

 また、最高気温が30度以上の真夏日は470地点(約51パーセント)、最高気温が25度以上の夏日は757地点(約83パーセント)でした(図2)。

図2 猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(9月20日以降は予想)
図2 猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(9月20日以降は予想)

 9月20日は、東日本の太平洋側を中心に全国で186地点(気温を観測している全国914地点の約20パーセント)で最高気温が35度以上の猛暑日になると予想されています(図3)。

図3 最高気温の分布予報(9月20日の予報)
図3 最高気温の分布予報(9月20日の予報)

 東京都心では、9月18日に一番遅い猛暑日の記録を作ったばかりですが、その遅い記録を更新するかもしれません。

 9月になっても記録的な暑さが続いていますが、この暑さは湿度が高く熱中症になりやすい暑さです。

 気象庁と環境省は共同で、全国58地域(都府県毎、ただし北海道・鹿児島県・沖縄県は細分)に対して熱中症警戒アラートを発表しており、9月18日は西日本を中心に22地域に対して発表されましたが、これは9月として最多の熱中症警戒アラート発表地域数でした。

 そして、9月20日も前日発表で西日本・沖縄から東日本太平洋側の22地域に対して発表になっています(図4)。

図4 熱中症警戒アラートの発表(9月20日:前日発表分)
図4 熱中症警戒アラートの発表(9月20日:前日発表分)

 これに当日発表分が加われば、更新したばかりの9月18日を抜いて、9月最多の熱中症警戒アラートの発表ということになります。

 また、熱中症警戒アラートは発表となっていませんが、北陸~北関東など、暑さ指数が31以上の「危険」となっている地域がかなりあります。

 暑さ指数31以上の所は、高齢者においては安静状態でも熱中症が発生する危険性が高い地域です。外出はなるべく避け、室内の涼しい所に移動してください。

 熱中症警戒アラートの発表回数は、9月20日の前日発表分までで、のべ1717地域と、早くも記録的な暑さだった昨年を39パーセントも上回っています(図5)。

図5 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)
図5 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)

 例年であれば、9月に入ると、熱中症警戒アラートの発表は殆どなくなります。

 記録的な暑さだった昨年もそうでした。

 しかし、今年は、9月に入っても熱中症警戒アラートの発表が続いています。

 それだけ、今年は、熱中症になりやすい湿った暑さの日が多く、しかも長く続いているといえるでしょう。

暑さ寒さも彼岸の中日まで

 東京都心の今年の最高気温と最低気温の推移をみると、猛暑日を最初に観測したのは7月4日で、以後、9月18日までに、合計20日の猛暑日を観測しています(図6)。

図6 令和6年(2024年)の東京の最高気温と最低気温の推移(9月20日以降はウェザーマップの予報)
図6 令和6年(2024年)の東京の最高気温と最低気温の推移(9月20日以降はウェザーマップの予報)

 9月21日も猛暑日の予想となっていますが、その後は気温が下がり、三連休明けの9月24日の最高気温の予想は25度です。

 体感的には10度も下がるので、肌寒く感じるかもしれませんが、これで平年並みです。

 「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句があります。

 冬の寒さ(余寒)は春の彼岸の入りの頃(3月20日前後)まで、夏の暑さ(残暑)は秋の彼岸の入りの頃(9月20日前後)までには和らぐという意味です。

 今年の秋の彼岸の期間は、9月19日から25日までですので、彼岸の入りが9月19日、彼岸の中日(ちゅうにち)が9月22日で(秋分の日)ということになります。

 多くの地方では、9月19日でも気温が高く、「暑さも彼岸まで」とはならない予報ですが、彼岸の入りのあとに秋雨前線が南下して気温が下がりますので、「暑さも彼岸の中日まで」ということにはなりそうです。

 各地の10日間予報を見ても、東京都心と似た傾向です。

 西日本から東日本太平洋側の猛暑日は21日の土曜までで、その後は、最高気温が30度前後の日が続く見込みとなっています(図7)。

図7 各地の10日間予報(数字は最高気温)
図7 各地の10日間予報(数字は最高気温)

 太平洋高気圧が後退し、秋雨前線が南下してくるためですが、太平洋高気圧の後退は、同時に、台風の日本接近をブロックすることがなくなることを意味します。

台風14号の急な東進

 東シナ海を西進し、中国大陸へ上陸した台風14号は、向きを急に東に変える予報に変わりました(図8)。

図8 台風14号の進路予報と海面水温(9月20日0時の予報)
図8 台風14号の進路予報と海面水温(9月20日0時の予報)

 中国大陸に上陸したため勢力は弱まり、黄海を進むうちに温帯低気圧に変わる予報ですが、雨雲を持っており、進行方向前面にある秋雨前線を刺激して大雨となる可能性があります。

 秋分の日を含む三連休は、季節の変わり目となっています。

 長く続いた暑さによって、体が弱っていることが考えられますので、十分な栄養補給と休養をとって、熱中症対策のいますこしの継続とともに、最新の気象情報を入手し、大雨にも注意してください。

図1、図3、図7、図8の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4の出典:環境省ホームページ。

図5の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

図6の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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