Yahoo!ニュース

日銀はどうして国債購入の減額を決めたのか #専門家のまとめ

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀は6月14日の金融政策決定会合において全員一致で現状の金融政策の維持を決定した。次回の7月の決定会合で市場参加者の意見を確認の上、今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定するとした。膨れ上がった日銀の国債保有残高を削減し、債券市場の流動性を高めてその機能を回復することが大きな目的となる。あれだけ日銀の国債買入額を増やしても物価に与える影響はほとんどなく経済実態や我々の生活への影響は限られよう。

ココがポイント

▼日銀は国債の減額に踏みきり、3月のマイナス金利解除などに続き正常化を進めることに

「日銀、国債購入減を決定 「量的引き締め」にかじ」(共同通信)

▼植田日銀総裁は会合後の記者会見で、減額は「相応の規模になる」と表明。保有残高については1、2年で到達できるとは思えないとも

「日銀、国債購入の減額方針決定 7月に具体策、植田総裁「相応の規模」 同時利上げも排除せず」(時事通信)

▼日銀は国債買入減額スケジュールを明確にすることで、不確実性をなくして、金融政策の調整は短期金利の引き上げを軸に行おうとしている

「日銀は慎重かつ大胆に国債買入の減額を進める可能性が出てきた。7月に利上げの可能性も」(Yahoo!ニュース エキスパート 久保田博幸)

エキスパートの補足・見解

 今回の日銀の決定は、国債の正常化をさらに進めるためのものとなる。具体策は7月の決定会合に先送りした格好となった。しかしこれは5月13日に5年超10年以下の国債買入を減額した際に長期金利が跳ね上がったことを踏まえ、市場参加者との対話をすすめての削減とすることで債券市場への影響は抑えようとするものとみられる。どの程度の減額かはこれから詰めていくと思われるが、個人的には「相応」の額は1兆円や2兆円ではなく、少なくとも3兆円以上の規模となるのではないかとみている。ここの削減案が決まれば、次は正常化に向けた本命の「利上げ」となろう。7月の会合で決定される可能性もある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事