ルブタンの「レッドソール」、色彩商標の登録ならず
今年の1月に「ルブタン、”レッドソール”の不正競争防止法訴訟の控訴審でも敗訴」という記事を書いています。その記事中に「色彩商標の登録についても特許庁で拒絶査定を受け、現在審決取消訴訟が進行中」と書いていたのですが、1月31日付でその審決取消訴訟の判決が出ていました。原告はXとなっていますがクリスチャン・ルブタン氏本人(会社ではなく個人)です。
1月の記事は赤い靴底の他社の靴の販売を差止めるための(その他社を被告にした)訴訟、そして、今回は赤い靴底を商標登録するための(特許庁を被告にした)訴訟です。
不正競争防止法の方の訴訟では、被告会社の靴とルブタンの靴では価格帯が異なり、消費者の誤認混同が生じていないこと、および、消費者の認知度が50%程度であることから著名とまでは言えないこと等を理由に、知財高裁はルブタン側の請求を棄却しました。
今回の審決取消訴訟はまた別の裁判ですが、知財高裁が言っていることは似ており、消費者の認知度が50%程度なので、色彩のみの商標として登録するほどの知名度(より正確に言えば、使用による識別力)がないことを主な理由に、やはり、ルブタン側の請求を棄却しました。上告は現実的には難しいと思います。
色彩のみの商標については何回か書いていますが、現時点でも登録例は9件しかなく登録のハードルは非常に高いです。MONOの消しゴム、セブンイレブンの看板、チキンラーメンのパッケージ等、日本国民の大多数が「この色はあの会社」と認識するような状態になっていなければ登録できません。しかも、登録された9件は、すべて複数の色の組み合わせの商標であり、単独の色で登録できた事例はまだありません。色彩(とりわけ単独の色彩)を商標として独占できるのはかなり強力な権利なので、特許庁としてもハードルを上げるのは当然と言えます。この点は判決文でも明確に述べられています。
ということで、ルブタン側にとっては残念な結果が続いてしまいましたが、結局のところ、日本におけるレッドソールの認知度がそれほどでもなかった(個人的にはこんなに低いとは思いませんでした)ことに尽きると思います。