楽天モバイル「0円」廃止。既存ユーザーにも適用で混乱は必至か
5月13日、楽天モバイルが新料金プランを発表しました。大きな特徴の1つだった「1GBまで0円」は廃止され、7月1日から既存ユーザーにも自動的に適用されます。混乱は必至とみられますが、なぜこのような変更をするのでしょうか。
「0円廃止」と引き換えにポイント倍率アップ
楽天モバイルの料金プランには、「1GB未満なら0円」「どれだけ使っても税込3278円」という大きな特徴が2つありました。
月間のデータ利用がなければ0円で維持できる上に、楽天市場でのポイント倍率「SPU」が+1倍となるため、楽天モバイルを使わない人でも持っておいて損はない状況が続いていました。
ところが7月1日からの新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」では、データ利用量が0〜3GBでは税込1078円となり、「0円」になるケースはなくなっています。
このプランは新規ユーザーだけでなく、既存の契約者にも自動的に適用されるとのことから、これまで0円だった人も、毎月1078円の支払いが発生することになります。(正確には、これまで0円なら免除されていたユニバーサルサービス料2円と電話リレーサービス料1円も加わります)
楽天モバイルの「0円」発表当初は、赤字ではないかとの指摘もありました。これに対して楽天は、経済圏におけるサービス利用が増えるなど、グループ全体としてプラスになることを強調してきました。
その上で0円を廃止する理由について、「(当時から)サービスレベルはかなり上がっている。楽天グループとのシナジーを追求し、トータルでおトクになる設計ができた。税別980円は高いといえば高いかもしれないが、常識的にはそれほどの負担にはならないと考えた」(三木谷浩史会長)と説明しています。
せめて既存ユーザーは0円を維持してほしかったところですが、関係各所に相談した結果、顧客の囲い込みを禁止する法規制に抵触するため断念したといいます。具体的には電気通信事業法第27条を挙げています。
「既存ユーザーにはそのまま(0円で)使っていただくのが我々の案だったが、既存ユーザーをキープしたまま新しいプランを出して、他社に逃げないようにするのはダメとされた。法令遵守のため、ポイントアップなど他のベネフィットでお返しできる設計にした」(三木谷浩史会長)
追記:
三木谷氏の説明について、会見後に楽天モバイル広報から補足がありました。
これまでの「0円」プランを維持したまま新プランを1078円にした場合、両プランの差額を割引ととらえると、その額は「一年当たりの利益の額が当該契約に係る一月当たりの料金を超える」可能性があり、「電気通信事業法 第二十七条の三 第二項第二号」に抵触しうると判断したとのことです。
また新料金プランについては「総務省に報告済み」としています。
0円廃止と入れ替わりに導入されるのが、ポイント倍率の引き上げです。楽天市場では、これまでのポイント倍率に加えて、新たに楽天モバイルで「+1倍」、ダイヤモンド会員で「+1倍」が、「終了日未定のキャンペーン」として始まります。
楽天は他のサービスにおいても、さまざまな形でポイント還元率を変更しています。そのたびに「改悪」として話題になっているものの、その根底には「本当に使っている人に還元する」方向性が感じられます。
今回の新料金プランでは、もう1つの特徴である「どれだけ使っても税込3278円」という上限は維持されています。楽天モバイルと楽天市場のヘビーユーザーにとっては、料金は月額3278円のまま、ポイント倍率アップのメリットを享受できるものになっています。
4ヶ月は実質無料、その間に判断を
とはいえ、これまで「0円」を目当てに使っていた人からの反発は避けられないとみられます。これに対して楽天モバイルは、既存ユーザーを含め、最大4ヶ月の実質無料キャンペーンを発表しました。
既存ユーザーは7月1日から新料金プランに自動的に移行されますが、7月と8月については1GBまで0円、9月と10月は利用料金をそのまま楽天ポイントで還元することで、最大4ヶ月は実質無料になるというものです。
「7月1日から4ヶ月なので、夏休みやお盆休みを含んでいる。関係各所と相談し、変更を希望される方にとっても大丈夫だろうとの結論に至った。離脱はゼロではないと思うが、ほとんどの方に残っていただけるのではないか」と楽天モバイルの矢澤俊介社長は語っています。
その根拠としては、楽天モバイルユーザーによる楽天市場での買い物金額の大きさを挙げています。ポイント倍率が上がることで十分に元を取れるのであれば、やめるほうがむしろ損になる場合が出てくると考えられます。
これまで「0円維持」をしてきた人は、楽天モバイルに残るか、それとも離れるか、7月1日からの4ヶ月間で判断することになりそうです。