【英語ビジネススキル】外国人との交渉のコツとは?
20年ほどNative English Speakerたちのマネージメントをやっています。なかには、仕事の付き合いを越えて、友人になっているNative English Speakerもいますが、初めのころはかなり苦労しました。
言語はもちろんですが、なにより考え方がぜんぜん違う。日本人には通用するマネージメント方法がまるで通用しないんです。そんな彼らとの試行錯誤をちょっと脚色も加えつつ、ご披露します。今回は、読むとNative English Speakerとうまく交渉するコツを得られるお得なエッセイです。
誰もやってないから、ダメ は通じない。
私が勤めていた英会話スクールのような教育業界では、講師たちが一斉に休むことはまれで、シフトで休むのが原則でした。なので、11月の末の今の時期は、講師たちとクリスマス休暇の日程交渉を始める時期。12月の24・25日の前後に休みが取れるかという闘いです。だれだって、連続で長く休みたいですからね。なので、
「おれ、クリスマスは北海道にスキーに行きたいから、12月の22・23・24・25日の連続で休みたいなぁ」
なんてことを、Native English Speakerが言ってくる。
気持ちはわかりますが、これを通すわけにはいきません。レッスンにぽっかり穴があいちゃいます。
これが、日本人なら、
「うん、いいけどさ。そうなると受講生が困っちゃうなぁ」
「うん。でも、22日に出発すると飛行機代が安くて済むんだけどなぁ」
「それはそうかもしれないけど、講師の中で4日連続休む人、誰もいないわけだからさ、ちょっと配慮してもらえない?」
「う~ん、それじゃあ。23・24・25日にしようかな。それならいい?」
「うん、それならいいんじゃない?」
なんて、息づまる空気と表情の読み合いが繰り広げられます。でも、Native English Speakerにこの手は通用しません。
もし、4日連続で休む人だれもいないから、ダメって言ったら、間違いなくこんな言葉が返ってくる。
「え? なんで? ほかの人が4日連続で休まないのは、その人の事情だよね? おれは関係ないよ」
さて、みなさんなら、Native English Speakerとどう交渉されるでしょうか?
ここで一番いけないのは、かちんっ と来て、感情的になんて協調性がないんだ! と思ってしまうことです。こっちの常識を押し付けて始まりません。じゃあ、どうするかと言うと、Native English Speakerが大切にしているGive & Take の考え方に沿って話を進める。
契約社会で育ってきたせいか、Native English Speakerたちは損得勘定にシビアです。自分が損(Give)をしていたらどこかで得(Take)をするのは当たり前だし、得をしていたら損をしても仕方がないと考えています。
なので、さっきみたいな場合は、
「わかったよ。22・23・24・25日休むのはいいけど、22日の代行できそうな人知らない? (I was wondering if you could find a substitute for the 22nd.)」
という風に、相手が得することを認めてその解決策を求める。Give & Take の感覚を刺激して、それまでに作っていた貸し(Give)を思い出してもらう。
すると、Give してある誰かを思い出す。その場に、貸しのあるNative English Speakerがいれば、なお話は早い。
「あ、そういや、Dido、この前、休み代わってあげたよな。ここで返してもらえるかい?」
「ええぇ、ここでそれを言う!?」
なんて、会話が繰り広げられます。借り(Take)のあるDido は断れません。断ったりしたら、あいつ、Fair じゃない、って言われて相手にされなくなっちゃう。
ちょっと世知辛い感じがしますが、Native English Speakerにとっては、自然で納得のいくやり取りのようでした。
われわれNative Japanese Speakerはどうしても、仲間と一緒、同じ、という部分が大切なので、そこを梃子にして人を説得しがちですが、Native English SpeakerはFair であることが大切な人々です。そこを梃に彼らと交渉してみてください。きっとうまくいきますよ。
と、こんな感じで、Native English Speakerたちとのお話をご披露したいと思っております。
お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。
イラスト 大橋啓子