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渡辺名人への挑戦者は藤井竜王か広瀬八段か――第81期順位戦A級プレーオフ展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
最年少名人の可能性を残している藤井竜王(筆者撮影)

 渡辺明名人(38)=棋王への挑戦権を争う第81期順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)A級は3月8日、東京都渋谷区「将棋会館」で、リーグ成績7勝2敗で並んだ藤井聡太竜王(20)=王位・叡王・王将・棋聖と広瀬章人八段(36)のプレーオフが行われる。どちらが勝っても名人には初挑戦。

 データを基に挑戦権の行方を予想してみた。

藤井竜王に不安材料あり

<藤井竜王の最近10局>(相手の肩書きは対局当時、未放映のテレビ対局を除く)

1月28、29日 ALSOK杯王将戦七番勝負第3局

対羽生善治九段 ○

2月1日 順位戦A級

対永瀬拓矢王座 ●

2月5日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局

対渡辺明棋王 ○

2月9、10日 ALSOK杯王将戦七番勝負第4局

対羽生九段 ●

2月18日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局

対渡辺名人 ○

2月23日 朝日杯将棋オープン戦準決勝

対豊島将之九段 ○

2月23日 朝日杯将棋オープン戦決勝

対渡辺名人 ○

2月25、26日 ALSOK杯王将戦七番勝負第5局

対羽生九段 ○

3月2日 順位戦A級

対稲葉陽八段 ○

3月5日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局

対渡辺棋王 ●

<広瀬八段の最近10局>(相手の肩書きは対局当時、未放映のテレビ対局を除く)

12月16日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対谷合廣紀四段 ○

12月22日 順位戦A級

対豊島将之九段 ○

12月28日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対増田康宏六段 ●

1月12日 順位戦A級

対永瀬拓矢王座 ○

1月19日 ヒューリック杯棋聖戦2次予選

対鈴木大介九段 ○

1月27日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対佐藤天彦九段 ●

2月1日 順位戦A級

対斎藤慎太郎八段 ○

2月10日 竜王戦1組

対都成竜馬七段 ●

2月22日 ヒューリック杯棋聖戦本戦

対中村太地七段 ○

3月2日 順位戦A級

対菅井竜也八段 ○

 直近10局の成績は藤井竜王が7勝3敗、ただし3月5日の棋王戦第3局では史上最年少の六冠達成が期待される中、二転三転の激戦の末最終盤で詰みを逃しての敗戦。先手番28連勝の勢いにストップがかかっただけでなく、得意の終盤でミスが出たのは不安材料だ。

 20歳の若さであっても移動日のあるタイトル戦を含む過密日程による疲労だろうか。

 広瀬八段は7勝3敗と好調を維持しており、対局スケジュールにも余裕があって良い状態でプレーオフに臨むことができるだろう。

先後が勝負に影響、戦型は角換わり本命

 過去の対戦成績は藤井竜王が10勝3敗と大きくリードしている。ただし昨年秋から冬に行われた竜王戦七番勝負では広瀬八段が第1局、第5局と先手番で2勝を挙げており、振り駒で先後が決まるプレーオフで先手を握れば勝敗はどうなるかわからない。

 藤井竜王は依然として今年度9割を超える勝率を誇る先手番を握れば序中盤でわずかにリードする流れになるだろう。広瀬八段が先手なら勝負はほぼ互角と見る。

 戦型は最近の傾向からは、どちらが先手になっても角換わりが本命で次の候補が相掛かり。広瀬八段が後手なら雁木に変化することも考えられる。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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