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ウクライナ軍『移動式ドローン迎撃部隊』「イラン製軍事ドローンには効果的だが夜と視界不良の時が問題」

佐藤仁学術研究員・著述家
ウクライナ軍「移動式ドローン迎撃部隊」(ウクライナ軍提供)

「ドローンはミサイルよりも迎撃するのは簡単だが探知するのが難しい」

2022年10月にはロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んで行き爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃して、国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義を無視して軍事施設ではない民間の建物に攻撃を行っている。一般市民の犠牲者も出ていた。11月に入ってからはイラン製軍事ドローンでの攻撃が激減したことから、英国国防省はイラン製軍事ドローンの在庫が枯渇したのではないかとの見解を示していた。だが12月に入ってからはロシア軍はイラン製軍事ドローンで電力施設にも攻撃を行いオデーサ近郊の150万人以上の市民生活に打撃を与えている。

イラン製の軍事ドローンを迎撃しているのがウクライナ軍の「移動式ドローン迎撃部隊(Mobile Air Defence Unit)」である。このような専門の部隊があるわけではなく、「移動式ドローン迎撃車」に乗ってロシア軍の攻撃ドローンやミサイルの迎撃を行っている兵士らがそう呼ばれている。

ウクライナ軍ではロシア軍のドローン攻撃に対抗するために「スティンガー」のような地対空ミサイル、近距離防空ミサイル「スターストリーク」、ライフル銃、手作りのドローン迎撃銃などをトラックやバンなどに搭載して「移動式ドローン迎撃車」を作って、ロシア軍の攻撃ドローンを迎撃して破壊している。

「移動式ドローン迎撃部隊は2022年12月14日にはロシア軍が首都キーウにイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」13機で奇襲を仕掛けてきた時にも迎撃してキーウ市民らを守った。

その「移動式ドローン迎撃部隊」をカタールに拠点を置くメディア、アルジャジーラが報道していた。ドローンやミサイルが襲撃してくるサイレン(警報)が鳴るとあらゆる所に車を飛ばして移動して迎撃の準備を行い、迎撃を行う。「移動式ドローン迎撃車」は人間の兵士がライフル銃や機関銃を持って自動車の後ろに乗っているので、兵士らが攻撃の標的になる危険性は高い。

ドローンの迎撃をしているウクライナ兵は「ドローンはミサイルよりも迎撃するのは簡単です。しかしドローンは探知するのが難しいです。ドローンは森に隠れていて、突然に上空から現れます。ドローンが襲撃してくる音も周辺の轟音でかき消されてしまうことも多いです」と語っていた。

また別のウクライナ兵は「イラン製軍事ドローンのシャハド131とシャハド136はスピードも速くないので地対空ミサイルやライフル銃での迎撃は効果的です。しかし夜や天候が悪く視界が不良の時は探知しにくいので、迎撃しにくいのが問題です」と語っていた。アルジャジーラの動画では訓練の様子も報じられており、車が後ろに走りながらライフル銃で撃つ訓練をしている。

▼「移動式ドローン迎撃部隊」を紹介するアルジャジーラ

ウクライナ外相「パトリオットは半年以内に配置」

2022年12月21日、アメリカのバイデン大統領はウクライナ軍に広域防空用地対空ミサイルシステム「パトリオット」を供与すると発表した。

そしてウクライナのドミトロ・クレバ外相は12月27日に「パトリオットは半年以内に配備される。通常なら1年必要とされるパトリオットの訓練だが、アメリカ政府が短縮プログラムを開発した」と語っていた。

つまりパトリオットはすぐには戦場の最前線にやってこない。まだしばらくは「移動式ドローン迎撃車」でのドローンやミサイルの迎撃が続く。

▼ウクライナ軍公式SNSで紹介された「移動式ドローン迎撃部隊」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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