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日本代表のリーチ マイケルは、なぜワールドカップ4強入りを目指すのか。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
前回の試合では大敗も気を吐いた。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

ラグビー日本代表は、6月24日に欧州6強の一角であるアイルランド代表と戦う。6月17日には、静岡・エコパスタジアムでの同カードを22―50と落としている。この月のツアーで2戦連続先発中のリーチ マイケルは、必勝を誓った。

3試合連続でフランカーとして先発する見通しが高い。トニー・ブラウンアタックコーチから授かったプランに前向きな印象を抱いたという。

札幌山の手高校、東海大学を経て2011年に東芝入り。2015年からはニュージーランドのチーフスの一員にもなり、国際リーグのスーパーラグビーでも存在感を示してきた。

日本代表としては、2015年のワールドカップイングランド大会でキャプテンを務めた。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ体制下では、今回の6月のツアーが初めての招集となった。堀江翔太キャプテンらの意向で、チームを率いるリーダーシップグループという隊列に加わった。

チームはここまで、キックを交えたち密なコンビネーションを標榜。アンストラクチャーからのアタック(攻守逆転の瞬間や相手キックの捕球からの攻め)をち密に練り込んでいる。もっとも17日は、接点での反則やタックルミスなどから失点を連続していた。

2019年のワールドカップ日本大会でもぶつかるアイルランド代表は、今回、若手主体の編成。4年前の日本代表はほぼ同条件のウェールズ代表に勝っているとあって、白星が期待されていた。

19日の練習後、氷水につかりながら記者団の質問に応じた。

以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――前回の試合で足りなかったものは。

「接点での強さ。それに学んだのは、ピンチの時のスピードの速さ。こっちがボールを蹴ったら、その地点には僕らがつく前にすでに5人の選手が並んでいた。(世界ランク)4位のチームと11位のチームでの必死さの差が見えた。それはスキルじゃなく、ハングリーさの問題」

――そういった心持ちは、一朝一夕で作るものではないと思われます。

「そう。先週は戦術的にクリアにしようという話をずっとしていて、戦えるマインドを作り切れていなかった。原点のところを、忘れていた」

――要所での反則も目立ちました。キャプテンとレフリーとのコミュニケーションはどう映りましたか。

「今回は、それほどレフリーとコミュニケーションを取る必要はなかった。敵陣に入った時のペナルティーがちょっと多くなった、ぐらいかな、と」

――チームの攻撃陣形では、タッチライン際で待機することが多いですね。

「1つのラック(ランナーが寝た接点)に集まる人が増えすぎてしまったら、外にボールを振りにくくなる。3人プラス1人でボールを出したい。ただこの間は、ボールキャリー(の姿勢)が高い。(押し)返される。ラック(からの球出し)が遅れる。相手のラインスピード(素早い防御)で来られる…と」

――同じ相手との2連戦と言えば、過去に2014年秋のマオリ・オールブラックス戦(非テストマッチ)がありました。最初に大敗して、次の試合では接戦を演じました。当時と今回では目標設定の仕方や準備内容が違いますが、それでも参考になる部分はありますか。

「まぁ、参考にはなります。ただ、ベストはそうしたくなかった。ワールドカップに2つ目の試合はないからね」

――これから、チームにどうアプローチしたいですか。

「チームに勝てる自信をつける。勝てることを信じる力を高めたい」

ここまで語ると、リーチは「…ワールドカップのターゲットって、わかりますか?」と口にした。問答を重ねるなか、2019年の日本大会へのビジョンを明かしてゆく。

――8強以上、ではないのですか。

「いや、ジェイミーは(公の場で)何と言っていますか?」

――特に声明は出されていません。

「まぁ、勝てるビリーフ(信念)を高めるためには、ターゲットをしっかりと決めたいと思っている。きょうの朝、ジェイミーと話したら、『ターゲットを決めるのは選手で、コーチはコーチをする』とミーティングではっきりと言っていた。スタンダードを上げていきたい。準決勝まで行ける力はつけたい」

――その意向は、ほかの選手たちと共有していますか。

「僕はまだ代表に入って3週目で、知らないことばかり。だからまずは、それをカバーしたい」

――具体的な目標を決める選手間ミーティングは。

「はい。今週か、どこかトップリーグの間にやるか、ジェイミーともう1回話したいです。何故こんなことを言うかというと…。僕はワールドカップに2回出ている。ターゲットをちゃんと決めないと、1、2勝しただけで満足してしまうかもしれない。だからそれをしっかり、決めていきたい。堀江(翔太)、ハル(立川理道)の両キャプテンたちリーダーズグループで」

――個人的には、2年後の本番でベスト4を狙う力を持っていると。

「十分ある。バックスでもいい選手がどんどん出てきているし」

アイスバスで身体をひねりながら、いまと未来を語る。話題は改めて、次戦に転じた。

――次戦は、現体制にとっての大勝負にもなりえます。

「英語で言えば、good chance to make a statement です」

自分たちの意志を示す機会だ、という意味だ。目標も生き様も、自分たちで決める。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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