OpenAIの特許を分析する(3)
OpenAIがOpenAI Opco LLC名義で出願した特許の解説シリーズの3回目です。今回は、US11922144B1("Schema-based integration of external APIs with natural language applications" (自然言語アプリケーションと外部APIのスキーマベース統合))です。出願日は2023年3月20日、登録日は2024年3月5日(優先審査請求)です。米国分割出願、および、PCT出願の存在が確認されていますが、出願公開日前なので内容は不明です。米国外での出願は確認できていません(出願日からまだ1.5年経っていませんので既に特許登録されていない限り、まだ公開されることはありません)。
この発明のポイントは、(ChatGPTに代表される)自然言語モデルと外部のシステムをAPI経由で連携させることにあります。具体的ユースケースとして、①言語モデルがショッピングリストを生成し、それを使ってECサイトで注文する、②外部のデータベースを検索し、その情報を使って言語モデルの回答を強化する、③言語モデルの出力に従ってメールの返信等のタスクを自動実行する、等が挙げられています。
これだけ聞くと自明、かつ、きわめて範囲が広いように感じられますが、さすがにこの基本的アイデアだけ特許化はできず、特許化されたクレームには審査過程で実装寄りの限定が加えられています。とは言え、範囲が広い点は変わりありませんので、同様のシステムを実装するときは注意が必要かもしれません。回避は可能とは思いますが、何も考えずに実装してしまうとこの特許権の範囲に抵触する可能性は高そうです。
今までにも何回か書いていますが、テクノロジが変曲点にある時期には、先行特許文献がまだ蓄積されていないために、自明に近いアイデアが特許化されてしまうことがあり得ます(広い特許を取りたい人にとっては絶好の機会ですし、それ以外の人にとっては要注意な時期です)。
クレーム1の内容は以下のとおりです。
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