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結局、iPhoneの「コンテンツブロッカー」とは何なのか?

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
PCで定番の広告ブロック『Adblock Plus』もコンテンツブロッカーに参入

iOS 9から搭載されたiPhoneの新機能「コンテンツブロッカー」。一般的には「広告ブロック」と呼ばれていますが、コンテンツブロッカーは広告を非表示にするだけのものではありません。

コンテンツブロッカーとは何なのか? どんな機能を持っているのか? この記事では、コンテンツブロッカーについての基本的なことを説明していきます。

コンテンツブロッカーはSafariのアドオン

コンテンツブロッカーは、iOS純正のブラウザアプリ『Safari』のアドオン(拡張機能)です。アドオンとは、ソフトウェアやアプリに新たな機能を追加するためのプログラムのことです。

拡張機能のため、ユーザーがその機能を使おうとしないかぎりコンテンツブロッカーは動作しません。また、コンテンツブロッカーを利用するには対応するアプリを別途インストールする必要があります。

アプリ内ブラウザ(WebView)では動作しない

コンテンツブロッカーが動作するのは、標準ブラウザのSafariでWebページを閲覧したときだけです。アプリ内ブラウザ(WebView)や、『Chrome』などのブラウザアプリでは利用できません。

コンテンツブロッカー=広告ブロックではない

一般的には「広告ブロック」と呼ばれていますが、コンテンツブロッカーは文字通り「コンテンツをブロックする」ものであり、「広告をブロックする」ものではありません。「広告もブロックできる」というものです。

アプリによっては広告以外に画像や動画、TwitterやFacebookなどのSNS共有ボタン、JavaScriptなどのあらゆるコンテンツをブロックできます。

ブロックすることのメリットは?

コンテンツをブロックすると、そのコンテンツ自体を読み込まないため通信量を削減できます。また、表示するコンテンツが減るためWebページの表示速度も速くなります。

コンテンツブロッカーアプリの多くは、平均して約50%ほど通信量と読み込み時間を削減できるとアピールしています。

ブロックすることのデメリットは?

じつは、ユーザーにとって直接的なデメリットはありません。間接的なデメリットとしては、お気に入りのWebサイトがなくなる可能性があります。

なぜなら、無料で利用できるWebサイトの多くは広告費を収入源としています。その広告が表示されなくなれば収入を得られず、運営を終了するWebサイトが出てくると予想されます。

会社が運営しているような大手メディアであればほかにも収入源があることが多いですが、個人運営の小規模メディアは『Google AdSense』などに収入の大半を頼っていることが多く、広まれば広まるほどWebサイトの運営をやめる可能性が高まります。

実際、「すべての広告をブロックしてしまうから」を理由に人気だったコンテンツブロッカーアプリが取り下げられる例も出ています。

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トラッキング拒否とは?

Webサイトの多くは、ユーザーの行動を追跡(トラッキング)しています。

「どこからやってきたのか?」、「どんなページを見たのか?」、「何を買ったのか?」、「なぜ途中で買い物をやめたのか?」など、運営者そのデータを利用してユーザーに対してより適切なコンテンツを表示しようとします。

この追跡を拒否することを、トラッキング拒否と呼びます。

ユーザーにトラッキングを拒否されると、Webサイト運営者はユーザーが訪れたこと(PV)を計測できません。つまり、そのユーザーはいないものと判断されます。

また、トラッキングのデータからは最適な広告の表示も行われています。このため、トラッキングを拒否すると最適な広告が表示されなくなります(ただ、トラッキングだけではなく広告もブロックしている人が大多数でしょうから、最適な広告の表示/非表示については多くの人は関係ありません)。

コンテンツブロッカーが抱える問題は?

コンテンツブロッカーアプリの多くは有料です(1Blockerなどの無料アプリもありますが、機能開放にアプリ内課金が必要です)。

このため、「他者の広告収入を減らすアプリでお金を儲けるのは、他者の利益を奪っているのではないか?」との批判が出ています。

一方で、9月30日にリリースされた『Adblock Plus』のように完全無料のコンテンツブロッカーも登場しています。こちらは、ユーザーの利用を無料にする代わりに、「広告をブロックしない」ことを条件にして企業側からお金を得ているため、構造としては変わりません。

そのほかにも、広告を非表示にしたままサービスを利用することについて、対価を支払わずに無料でコンテンツを得る「フリーライド(ただ乗り)」ではないかといった批判もあります。

広告側にも問題アリ

一方で、ユーザーやコンテンツブロッカーアプリ側だけに問題があるわけではありません。広告側にも問題があります。

いわゆる「エロ(漫画含む)」広告、閲覧を邪魔する追跡広告、ファーストビューで画面いっぱいに広がって誤クリックを誘発する広告など、ユーザーを不快にさせたりただクリックさせることだけを狙っていたりと、ユーザーにメリットがあるとは言えない広告が数多くあります。

このため、PCでは広告をブロックするためのAdblock Plusが普及しつつあり、コンテンツブロッカーはその波がモバイルに来ただけとも言えます。

コンテンツブロッカーは使うべき?使わないべき?

この記事での説明・メリット・デメリット・問題を読んだうえで、それでも使いたいと思ったのであれば使う、それで良いと思います。コンテンツブロッカーの利用/不使用については、強制できるものでも、また、するようなものでもありません。個々の判断で利用すべきものです。

業界側も、ブロックされたまま黙っているわけではないでしょう。ブロックされない広告、新たな広告、コンテンツの有料化など、さまざまな動きに出るとみられています。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。インターネット(SNS)で起きる炎上の解説、デマのファクトチェック、スマホやガジェットの話題、生成AIが専門。最近はYouTubeでも活動しています。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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