なぜバイエルンはB・サラゴサを獲得したのか?スペイン代表デビューのきっかけと“突破者”の補強。
新たなタレントが、ドイツに向かう。
バイエルン・ミュンヘンは現地時間6日にブライアン・サラゴサの獲得を発表した。今季、グラナダでブレイクしたスピードスターを手中に収めた格好だ。
バイエルンはB・サラゴサの獲得に際して、移籍金1500万ユーロ(約17億円)でグラナダと合意した。バイエルンとB・サラゴサの契約は2029年夏まで。だが、今季終了時までレンタルの形で、B・サラゴサはグラナダでプレーする。
■ブレイクとスペイン代表デビュー
グラナダは昨季、リーガエスパニョーラ1部昇格を果たして、今季からプリメーラ・ディビジョンで戦っている。グラナダの1部昇格の原動力となったのがB・サラゴサだった。
今季、とりわけ衝撃的だったのはリーガ第9節のバルセロナ戦だ。B・サラゴサは試合開始17秒で電光石火のゴールを決めてチームに先制点をもたらした。28分には、カウンターからジュール・クンデとGKマーク・アンドレ・テア・シュテーゲンを振り切ってネットを揺らし、グラナダの勝ち点1奪取に貢献した。
「我々はブライアンを分析していた。彼は弾丸のような選手だ。トランジションの場面で、強さを発揮する。彼がスピードに乗ったら、止めるのは難しい」とはシャビ・エルナンデス監督のコメントだ。
B・サラゴサは今季、ここまでリーガ14試合に出場して5得点2アシストを記録している。そして、10月に行われたEURO2024予選のグループステージ第7節のスコットランド戦で、スペイン代表デビューを飾った。
「僕のステップアップはすごく早かった。だけど、こういったチャンスのために、ハードワークしてきた。準備はできている」とは代表招集を受けた時のB・サラゴサの言葉だ。
「ロッカールームに入ったら、家族が全員、泣いていたんだ。それから、インスタグラムを見たら、自分のアカウントのフォロワーが5000人くらい増えていた。クレイジーだったよ」
■異色のキャリアと長い道のり
B・サラゴサは異色の経歴の持ち主だ。フベニール(ユース)世代でグラナダに入団。エル・エヒド(2020−21シーズン/当時3部リーグ)、レクレアティボ・グラナダ(2021−22シーズン/当時4部リーグ)でプレーした後、2022−23シーズンからグラナダのトップチームに定着した。
「私が覚えているのは、ブライアンがグラナダでトップデビューした日だ。彼は私のところに来て、デビューできたことへの感謝を伝えてきた」とはロベルト・モレノ監督の弁だ。
「1部でコンスタントにプレーするまで、長い時間が必要な選手がいる。その理由を説明するのは困難だ。だがブライアンは戦い続けた。諦めてしまう選手がいるなか、彼はそうじゃなかった。抵抗する力と継続性を示してみせた」
■バイエルンの陣容と思惑
バイエルンは今夏、積極的な補強を行なった。移籍金9500万ユーロ(約142億円)でハリー・ケイン、移籍金5000万ユーロ(約75億円)でキム・ミンジェを獲得。また、ラファエル・ゲレイロとコンラッド・ライマーをフリートランスファーで引き入れた。
なかでも、好調なのがケインだ。ケインはブンデスリーガ12試合で18得点をマーク。先日、ゲルト・ミュラー(ブンデス最初の12試合で17得点/1968−69シーズン)の記録を塗り替え、新たなレコードを樹立した。
ケインはトッテナム時代、ソン・フンミンと抜群のコンビネーションを見せていた。2022年には、ケインとソン・フンミンの相互アシスト数(37)が、チェルシー時代のフランク・ランパードとディディエ・ドログバ(36)を超えて、プレミアリーグ史上トップの数字を叩き出している。
そのケインは、バイエルンで新たなパートナーを見つけた。レロイ・ザネである。ザネは今季、ブンデスリーガで12試合に出場して8得点6アシストを記録。ゴール数においては、ブンデス移籍以降、キャリアハイの数字だ。
■B・サラゴサへの期待
ケインとザネだけではない。キングスレイ・コマン、セルジュ・ニャブリ、マチス・テル、ジャマル・ムシアラ、トーマス・ミュラー…。バイエルンの前線には素晴らしいアタッカーが揃っている。競争は激しいだろう。
B・サラゴサは、変幻自在のドリブラーだ。1対1に強く、果敢に突破を仕掛ける。今季、リーガ1部でのドリブル成功数(40回)はトップの数字だ。その突破力が買われて、ビッグクラブ移籍が決定した。
思えば、1年半前まで、4部リーグと3部リーグを行ったり来たりの選手だった。バイエルン移籍が決まった時点で、十分なサクセスストーリーだ。だがB・サラゴサの物語は始まったばかり。22歳の若武者の今後に、期待せずにはいられない。