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東京熱帯夜「57日」最多新記録  実質は70日を超える

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
東京のアメダス(北の丸公園) 出典:環境省HPより

東京・熱帯夜の日数は57日過去最多

 夜間の最低気温25度以上の日(※)を「熱帯夜」といいますが、きのう(19日)までの東京の熱帯夜の日数は57日で、これまでの最多記録2010年の年間56日を上回り過去最多となりました。

 今年はきのうまでで真夏日も87日、真夏日連続も64日、さらに35度以上の猛暑日も22日を数え、断トツで様々な暑さの記録を更新しています。真夏日日数、真夏日連続日数、猛暑日日数、加えて熱帯夜日数など、東京に限らず記録を更新している地点が続出しています。

千年猛暑到来

 有史以来、最も気温の高かった時代は平安から鎌倉時代と言われています。当時の文献や宮中のお花見の時期、年輪や地層の状況等から温度推定が行われており、その頃は世界的にも気温が高かったと考えられています。

 温度が高いと寒い地方にある氷河が融けて海水面が上がります。その分、海の面積が広がるので、その時代は「平安海進(へいあんかいしん)」とか「中世温暖期」とも呼ばれています。

 鎌倉時代に書かれた兼好法師の徒然草に「家の造りは夏をむねとすべし、冬はいかようにも住まう・・」とあります。耐え難い暑さを和らげるために池などを配置し、涼を取る寝殿造りなどが考え出されたのです。

 現代は都市気候の影響も考えるとその時代よりもさらに温度の上昇が顕著で、我々はこれまで経験したことのない高温の時代に生きていると言えるでしょう。

 前述したように、今年以前に暑さの記録が多数出たのは、2010年のことでした。この時、私は「平安海進」をふまえ「千年猛暑の時代」に入ったと、テレビ等を通じて発信しました。当時は少し極端なもの言いだったかも知れませんが、実は21世紀に入ってからの温度変化をみると、単年度だけ突出して気温が高いのではなく全体として底上げしています。

 国連事務総長グテーレス氏の「地球沸騰化の時代」という警告は、これからの時代を象徴する言葉となりそうです。

移転により少なくなったはずの「東京」の熱帯夜

 今年の夏は多くの方がとんでもない暑さだと体感されたと思いますが、実は記録を別の視点でみると、これまでより桁違いに高温記録を上回っていることがだんだんと分かってきました。

 東京の場合、気温などの基礎的なデータは皇居に近い、北の丸公園の森の中にあるアメダスによって観測されています。

 この北の丸公園にアメダスが移ったのは2014年12月のことです。それより前(2014年以前)は、東京の気温などの記録は大手町で行われていました。

 したがって2010年の猛暑記録は都市気候の影響を受けていた大手町のものというわけです。対して今年の記録は北の丸公園ですから、気温は大手町よりも都市気候の影響が少ないので低くなります。

 ではその差はどれくらいでしょう。

気象庁資料より スタッフ作成
気象庁資料より スタッフ作成

 大手町から北の丸に移転するときに3年間にわたって調査が行われました。その結果、最高気温はあまり変わりませんが最低気温は大手町に比べると約1.4度も低くなると算出されました。つまり、北の丸が23.6度でも大手町なら25度を超えている可能性が高いのです。

 気象庁は同時比較観測の結果、「夏日・真夏日の日数はほぼ同じ」「猛暑日は北の丸公園の方が少ない」としていますが、「熱帯夜に関しては大幅に少なく、日にちで言うと平均で16.5日も少ない」と評価しています。

今年の熱帯夜日数・大手町だったら

「東京」のアメダスにおける熱帯夜の日数 (スタッフ作成)
「東京」のアメダスにおける熱帯夜の日数 (スタッフ作成)

 そこで、補正値をもとにあらためて最低気温23.6度~24.9度の日を月別にピックアップすると、今年は合計12日ありました。

 この値を、北の丸公園で観測している今年の熱帯夜日数に加算すると、なんと68日になります。実質、この値が現在の東京の熱帯夜日数だと言えるでしょう。さらに、このあとの23.6度以上の日を加えると、おそらく最終的には実質熱帯夜日数は70日を超えるでしょう。

 とにかく今年は突出した暑さでしたが、来年以降も気象記録を扱うときには観測所の状況も考えて、より気候変動の実態を見ることが大切だと思います。

※熱帯夜の日数について、気象庁の統計にならいここでは日最低気温25度以上の日数を熱帯夜日数としました。

参考

「東京」の観測地点の移転について2014年11月14日 気象庁 観測部

気象庁発行 測候時報第83巻 地上気象観測地点 「東京」 の露場移転について

(その2 平年値の更新について)

2013年7月森田正光Yahoo!ニュース記事「千年猛暑」

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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