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「最強・井上尚弥劇場」次回は12・24東京『クリスマス決戦!』─。気になる対戦相手は?

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
勝利した直後、メディアからの質問に笑顔を浮かべ答えた井上尚弥(写真:藤村ノゾミ)

世界戦23勝&9連続KO勝ち

「(昨夜は)寝られましたけど、深い眠りにはつけなかった。これは(試合後)いつものことです。映像は見返しました。陣営の作戦通り慎重に、冷静にボクシングができていた。実際に闘っていた時以上に『いいな』と感じました。

2週間休みます。体力的な問題はないけど、精神的な疲れもあるので。そこはしっかりリセットして次に向けて頑張りたい」

横浜市内にある大橋ジムでの一夜明け会見。顔に傷一つない井上尚弥(大橋)は、いつも通りの滑舌良い口調でそう話した。

9月3日、東京・有明アリーナ『4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ』。王者・井上は、挑戦者テレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)に7ラウンド16秒でTKO勝利を収め4本のベルトを守り抜いた。

結末こそ冴えなかったが、試合は井上の圧勝だった。

前半は慎重に試合を運んだ。5・6東京ドームでのルイス・ネリ(メキシコ)戦では1ラウンドに「まさか!」のダウンを喫した。そのこともあってか、距離を保ちしっかりと相手の出方を見ていた。

前日計量から体重を11キロも戻したドヘニーは井上がリズムを掴む前、つまりは1ラウンドに仕掛け一撃を見舞いたいところだったがそれができない。王者から感じるプレッシャーの前にデイフェンシブな動きに終始してしまう。この時点で「勝負あり」だった。

結局はジワリジワリと追い込まれたドヘニーは、7ラウンド開始直後に猛攻を喰らい腰を傷め試合放棄。6ラウンドに強烈なボディブローを喰らった際にドヘニーの肉体は悲鳴を上げていたようだ。見栄えこそよくなかったが井上の完勝。キャリア31戦のドヘニーは、この試合で初めてのKO負けを喫した。

井上は、これで通算戦績28戦全勝(25KO)。そのうち、世界戦23勝&9連続KO勝ちは単独の日本記録。モンスターは試合をするたびにレコードを塗り替えている。また世界戦23連勝は、1930~40年代に活躍した元世界ヘビー級王者ジョー・ルイス(米国)、無敗で引退した「世界5階級制覇王者」フロイド・メイウェザー(米国)の26連勝にあと3と迫るものだ。

序盤は距離を保ち、冷静且つ慎重に試合を進めた井上尚弥(写真:藤村ノゾミ)
序盤は距離を保ち、冷静且つ慎重に試合を進めた井上尚弥(写真:藤村ノゾミ)

試合後インタビューを終えて。左から井上真吾トレーナー、井上尚弥、大橋秀行会長(写真:藤村ノゾミ)
試合後インタビューを終えて。左から井上真吾トレーナー、井上尚弥、大橋秀行会長(写真:藤村ノゾミ)

グッドマンが「12月に闘おう」

さて、井上の今後だが次戦は12月24日に予定されている。

まだ正式発表はないものの海外メディアでそう報じられており、これが既定路線。場所は東京都内、今回の試合と同じ有明アリーナが有力視される。

年間3試合を闘うのは、井上にとって2017年以来7年ぶり。短いスパンでの試合を不安視する声もあるが、王者はキッパリと言った。

「まったく問題ない。むしろ、これは自分が望んでいたこと。短いスパンで試合できることは嬉しい」

では、気になる対戦相手は誰か?

最優先されるのは4団体のトップランカーだろう。

現時点ではWBA1位はムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)、WBC1位がアラン・ピカソ(メキシコ)、そしてIBF&WBO1位はサム・グッドマン(オーストラリア)だ。

交渉の進展具合から見て、おそらく次戦の相手はグッドマンになるだろう。

5月の東京ドームのリング上でネリに勝利した直後の井上とグッドマンは対戦を誓い合っていた。そのため9月に対峙が見込まれていたが、そうはならなかった。

グッドマンはタイトルマッチのオファーを断り7月10日、母国でのチャノイ・ウォラワット(タイ)とのノンタイトル戦(判定勝利)を優先したのだ。この時点でグッドマン陣営は、井上戦を回避しようとしていたように思う。

それは、スーパーバンタム級で4団体世界王座を統一した井上がすぐにフェザーに階級を上げると見ていたから。その後に空位となった王座の決定戦を狙い無敗のまま世界のベルトを腰に巻く算段だった。

しかし井上に王座返上のつもりはなく、今年も来年もスーパーバンタム級で闘うことを明言した。ならば2団体のトップランカーであるグッドマンは井上に挑戦せざるを得ない。意を決した彼はSNSで井上にメッセージを送っている。

「12月に闘おう!」と。

井上の次戦の相手はグッドマンで決まりか。

さらに来年には再び米国で井上が闘う計画も浮上している。舞台はラスベガス。

12月にグッドマン相手に王座防衛を果たすことが条件だが、ここでアフマダリエフと拳を交えることになるのではないか。

『最強・井上尚弥劇場』の次回は、12・24東京『クリスマス決戦』─。

真冬を熱気で彩る凄絶ファイトが、いまから楽しみだ。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストに。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターも務める。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。仕事のご依頼、お問い合わせは、takao2869@gmail.comまで。

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