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北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイルを再発射!? 早すぎる!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮の新型SLBM「火星砲―11ナ」(労働新聞から)

 北朝鮮専門サイト「North38」は10月29日(現地時間)、北朝鮮が「追加の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射を準備している」と伝えていた。北朝鮮は近々、前回と同類のSLBMを再発射するのだろうか?

(参考資料:猛スピードの北朝鮮のミサイル開発 米中露に続く極超音速ミサイルの開発)

 「North38」はその根拠として、3日前(10月28日)に撮影された衛星写真を基に前回(10月19日)SLBM発射に使われた2千トン級の潜水艦の周辺で活動が続いていること、また移動式クレーンが発射台を備えた試験用バージ船(艀)の隣にあることを挙げていた。このクレーンは過去にSLBMの発射実験をする度に潜水艦やバージン船にSLBMを搭載するために使用されていたとのことである。

 また、バージン船の中央にある回転式円形のカバーが除去されているのもSLBM発射管(ランチャー)を設置するためのものであり、こうした三つの根拠から「North38」はSLBM再発射の可能性について言及していた。

 前回発射されたSLBMは従来の北極星シリーズ「北極星1~5型」に比べて規模の小さい新型「火星砲―11ナ」である。一説では北朝鮮が開発した「北朝鮮版イスカンデル」と称される新型戦術誘導兵器をSLBM用に改良したのではないかと言われている。

 ミサイルを完成させるには一般的に少なくとも数回のテストが必要だ。一度だけのテストで生産、実戦配備と言う訳にはいかない。

 北朝鮮は10月19日の発射を大々的に報道しなかった。映像も公開されず、労働新聞の1面にも掲載されなかった。仮に北朝鮮が前回の発射に満足してなければ当然、再発射は十分にあり得る。現在、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が発射場の新浦に近い、元山に滞在していることもその傍証となっている。

(参考資料:突然ミサイル発射に立ち会わなくなった金正恩総書記 過去5年間を検証する)

 しかし、北朝鮮の報道によると、「国防科学院が試験発射を行い、成功した」ことになっている。「成功した」と発表したものを再度テストする必要があるのかとの単純な疑問も沸いてくる。

 例えば、北朝鮮は2019年10月2日に初めて「北極星―3型」の試験発射を行ったが、この時も「成功した」と発表し、1度のテストで終わっている。

 また、最初のテストからまだ2週間も経ってない。前例からして準備期間としてはあまりにも短すぎる。

 例えば、北朝鮮初のSLBM「北極星―1型」は2015年5月9日に初めて試験発射を行い、2度目はおよそ1年後の2016年4月24日だった。そしてそれから4か月の期間を置いて、8月24日に再度試験発射を行い、成功させていた。

 北朝鮮が保有しているSLBMのうちまだ発射テストを1度もやっていないのは軍事パレードで登場した「北極星―4型」と「北極星―5型」の2種類だけである。仮にSLBMの再発射の動きがあるとすれば、これらSLBMの可能性も考えられなくもない。

(参考資料:進水式目前の北朝鮮の新型潜水艦とSLBM(北極星1~5)の全容)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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