主要テレビ局の視聴率はどれぐらいだろうか
全日は日テレ、プライムはテレ朝がトップ
一般メディアでは最大の広告市場規模と媒体力を持つテレビ。そのテレビで各局の権威、メディア力を推し量る一つの指針が「視聴率」。雑誌や新聞なら購読者数に該当するこの値は、テレビ全体のすう勢、そして各局のパワーバランスを見決めるのに必要不可欠。今回は2014年5月付で発表された各社の決算短信資料を基に、2014年3月期(2013年4月から2014年3月)における下半期と通期の視聴率動向をチェックし、その現状を探ることにする。
今回直接参照したのはTBSホールディングスの「2014年3月期決算説明会」。2014年3月期通期のキー局(+NHK)の総合視聴率を抽出し、精査する。下期単独の値は非公開だが上期の値は別途公開されていることから、それらの値で逆算できる。
テレビ東京は他の4局と比べ放送エリアの問題や放送内容の特異性の都合から、視聴率で他局と比べて低めの値が出てしまう。その特異性を考慮し順位精査の上で除外すると、TBSが主要キー局では視聴率が一番低迷している。
視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19時から22時)とプライムタイム(19時から23時)。その双方で10%を切っているのは(テレビ東京以外では)TBSのみ。そしてNHKはプライムタイムだけが10%割れ。上位陣ではテレビ朝日と日本テレビが競り合い、その後をフジテレビが追いかけている。
NHKは他局と比べてゴールデンタイムとプライムタイムの差異が結構大きい。ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、22時から23時の夜間時間帯における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっていることになる。これは番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方がない。
ゴールデンタイムで視聴率動向を見ると(以後通期で確認)トップは日本テレビ、次いでテレビ朝日、NHKの順。しかしプライムタイムでは、トップにはテレビ朝日、次いで日本テレビ、そしてフジテレビとなる。プライムタイムで日本テレビとテレビ朝日の順位が入れ替わるのは意外といえば意外。テレビ朝日の22時から23時に放送された番組が、視聴率動向に小さからぬ貢献をしたということだ(具体的には報道ステーションだろう)。
前年同期の変移で各局動向を推測
通期について視聴率の変移を前年同期比で表すと次のようになる。
健闘組は日本テレビ、そしてテレビ東京。今一つなのはフジテレビ、テレビ朝日、そしてNHK。TBSはプラスマイナスでほぼゼロか、やや軟調。前半期、NHKの下げ具合は前年四半期から続いており、不安を余儀なくされる。
今年度で唯一、視聴率の面で大きな成長を示したテレビ東京。同社の決算短信補足資料を見る限り、番組周りの特筆事項は無く、理由は特定が難しい。しかし半期前の短信資料などを精査すると、開局50周年を記念して連続ドラマの復活(第一弾は「刑事 吉永誠一 涙の事件簿」、第二弾「三匹のおっさん」シリーズ)、さらにポケモンシリーズの最新作、そして資料には明記されていなかったが、ゲーム市場で話題を呼んでいる「妖怪ウォッチ」などが貢献した可能性は高い。
経年変化で視聴率動向を見ると、この数年は各局ともターニングポイントを迎えている雰囲気がある(「主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移をグラフ化してみる(2014年)(最新)」)。ある局はVの字回復を見せ、ある局は低迷を続け、ある局は下落傾向が収まらない。前半期のTBSにおける「半沢直樹」のように、一時的な躍進を後押しする特異点が生じることもあるが、体制そのものの変化や時節の動きが無い限り、中期的な変化にはつながらない。
4大従来メディアどころかマスメディアでは最大の影響力を持つ存在の上で、各テレビ局がいかなる姿勢を見せ、それが視聴率の動向に結びついていくか。今後も注意深く見守りたい。
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