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藤井聡太二冠の年度内三冠挑戦を占う――第70期王将戦挑戦者決定リーグ展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
史上最年少での三冠チャレンジが期待される藤井聡太二冠(筆者撮影)

 渡辺明王将(36)への挑戦者を決める第70期王将戦(スポーツニッポン新聞社・毎日新聞社主催)は9月22日、東京都渋谷区「将棋会館」で開幕局となる藤井聡太二冠(17)と羽生善治九段(49)の挑戦者決定リーグ1回戦が行われる。

 「年度内三冠」の期待がかかる藤井二冠のデータを中心に挑戦権の行方を予想してみた。

「天敵」豊島竜王戦がカギか

<藤井二冠と対戦相手の成績>(対戦順・名前の後の数字はリーグ順位)

対羽生九段(3)

4勝0敗

対豊島将之竜王(2)

0勝5敗

対永瀬拓矢二冠(5)

3勝0敗

対佐藤天彦九段(5)

2勝0敗

対広瀬章人八段(1)

1勝1敗

対木村一基九段(5)

4勝0敗

 データが示すとおり、「天敵」ともいえる豊島竜王との星取りは0勝5敗、昨年のリーグで最後まで挑戦権を争った広瀬八段に1勝1敗で、それ以外の4人には全勝と星が偏っている。

 今回のリーグ参加者は全員タイトル経験者で強敵であることに変わりないが、順位も上のこの2人との対局を勝ち切ることができれば三冠チャレンジの可能性は大きく高まるだろう。

竜王挑戦決めた羽生九段にも勢い

<藤井二冠の最近10局>(対戦相手の肩書は対局当時、未放映のテレビ対局を除く)

7月9日 棋聖戦五番勝負第3局

対渡辺明棋聖 ●

7月13、14日 王位戦五番勝負第2局

対木村一基王位 ○

7月16日 棋聖戦五番勝負第4局

対渡辺棋聖 ○

7月18日 将棋日本シリーズ1回戦

対菅井竜也八段 ○

7月24日 竜王戦決勝トーナメント

対丸山忠久九段 ●(千日手指し直し)

7月29日 順位戦B級2組

対鈴木大介九段 ○

8月4、5日 王位戦七番勝負第3局

対木村王位 ○

8月19、20日 王位戦七番勝負第4局

対木村王位 ○

9月9日 順位戦B級2組

対谷川浩司九段 ○

9月12日 将棋日本シリーズ2回戦

対豊島将之竜王 ●

<羽生九段の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

6月8日 順位戦A級

対菅井竜也八段 ○

6月13日 王位戦リーグ白組

対菅井八段 ○

6月28日 将棋日本シリーズ1回戦

対久保利明九段 ●

7月13日 棋王戦本戦

対屋敷伸之九段 ●

7月28日 順位戦A級

対佐藤天彦九段 ●

8月13日 竜王戦決勝トーナメント準決勝

対梶浦宏孝六段 ○

8月17日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局

対丸山忠久九段 ●

8月25日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局

対丸山九段 ○

9月2日 順位戦A級

対糸谷哲郎八段 ●

9月19日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第3局

対丸山九段 ○

 藤井二冠はリーグ初戦の相手となる羽生九段には過去4勝0敗と相性がいいが、羽生九段もタイトル獲得通算100期の偉業がかかる竜王挑戦を決めたばかりで勢いに乗っている。

 藤井二冠がここでつまずくようだと、挑戦権はいっぺんに遠ざかる。

 リーグはあらかじめ先後が決まっており、1回戦は藤井二冠の先手。相居飛車なら角換わりか矢倉が予想されるが、後手の羽生九段が意表を突いて振り飛車を採用する可能性もあると見ている。

 総合すると挑戦権争い最大のライバルは豊島竜王だろう。藤井二冠との相性の良さだけでなく、今夏名人を失冠したものの、崩れずに叡王戦七番勝負では挑戦者として3勝3敗2持将棋(1千日手)の第9局まで粘っており、年度内三冠復帰の可能性を残しているのはさすがだ。

 いずれにしても、役者の揃った今期王将リーグは過去最高レベルの熱戦が見られること間違いない。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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