令和に注意したい20代リスク~武田塾講師動画と就活セクハラ、構造は同じ
検証にしても塾講師としては最悪の不適切動画
法政大ディスり動画を投稿した武田塾の講師YouTuberについて、昨日記事を書いたところ、大きな反響がありました。
特に同じ教育業界、塾・予備校業界の方からは、
「常識ではありえない」
「見ていて気分が悪くなった」
などのコメントを多数いただきました。
冷静に考えなくても、一方で法政大合格を塾の実績としていながら、一方では「武田塾とは無関係です」のテロップを入れつつ法政大の新入生に暴言を吐くのは矛盾しています。何よりも教育者として問題でしょう。
もちろん、法政大の第一志望者が多いのか少ないのか、あるいは問題動画にあるようにゼロ人なのか、それを武田塾、あるいは他の塾・予備校が検証することは否定しません。
仮に法政大学当局や関係者にとって不本意な結果が出たとしても、そうした検証はあってもいいでしょう。
私もかつて、早稲田・慶応義塾の就職実績比較や乱立する国際系学部について検証記事を書いたところ、それはそれは関係者からきついコメントや対応を受けました。が、まあ、それは想定の範囲内。何よりもデータや取材に基づいた客観的なものだった、と自負しています。
しかし、問題動画は法政大の第一志望者がゼロ人かどうかについて、わざわざ入学式の会場前に行き、新入生を罵倒するようなコメントを連発しています。テロップも悪意あるもの、としか思えません。これのどこが客観的な検証なのか、YouTuberとして出演した武田塾社員の高田史拓・山火武、両氏はどうお考えなのでしょうか。
おそらくは何も悪くない、と考えているからこそ、Twitterでは無関係なコメントを出したり、「コントだから」という弁明を出したり(現在は削除)、
記事を出た後には、関係者と思しきコメントを山火氏がリツイート(その後、リツイートを削除)。
「取材された本人も親御さんも取材されたがってて、めちゃめちゃ喜んでいたけど…」
は、論点違い。
私が問題としているのは、動画内容であって、新入生本人・親が取材されたがっていたかどうかではありません。それに、動画に出た新入生本人・親があの動画の内容を歓迎しているかどうか。
新入生や法政大関係者がどんな気持ちであの動画を見たか、思いやる気持ちがないからこそ、弁明とも取れる関係者コメントをリツイートしたのでしょう。
違いますか?武田塾教務の山火武氏?
同じ武田塾教務・高田史拓氏の暴言・暴走も相当な問題ですが、それをニヤニヤするだけで止めもせずこうした動画を出してしまう山火氏も相当な問題です。
就活セクハラの大手企業社員も20代
さて話は変わりますが、今年2月に大林組社員による就活セクハラ事件が発生。その後、住友商事社員の就活セクハラも発生。大きく注目されました。
大林組事件が起きた後に書いた私のYahoo!ニュース個人記事がヤフトピ入りしたこともあり、3~4月にコメント依頼を4件いただきました(朝日新聞、北海道新聞、中日新聞/東京新聞、フライデー)。
私はコメント取材のお約束で、話すだけ話して、あとはお好きにどうぞ、コメント確認メールを受けても細かい数字・事実確認以外はノーチェックです、と示しています。
なので、後から指摘するのは野暮、と承知で出すと4紙・誌とも就活セクハラの対策について、コメントが掲載されていました。
この取材を通して気付いたのが、大林組・住友商事、両社員の年齢です。
事件発覚時、大林組社員は27歳、住友商事社員は24歳、ともに20代でした。
両社員とも女子学生と会うOB訪問を悪用して就活セクハラをやらかしています。
この就活におけるOB訪問は事件を起こした住友商事を含め大手企業などで利用されています。
企業からすれば、会社説明会・セミナーだけでは説明しきれない働き方や会社の姿勢など社員を通して伝えることができます。
私もこのOB訪問(広い意味では社会人訪問)の利用は就活生に勧めています。
ただし。このOB訪問は社会人側の善意・モラルによって成立する、という前提があります。善意・モラルとは社会人側にとって時間の無駄になったとしても、就活生の話を聞く、というのがまず一点。
それと当然ですが、就活生に対して口説かない、飲酒などを強要しない、性的暴行をしない、などです。「エントリーシートを添削してほしいなら、デートに付き合って」「この後、付き合ってくれないと選考で不利になるよ」などの言動も、仮に冗談だったとしても、アウト。
何を当たり前のことを、と、特に30代以上の社会人は考えるに違いありません。
が、これをできなかったのが大林組と住友商事の両社員でした。
「魔の3回生議員と同じ」に記者爆笑
私が取材した限りでは、大林組・住友商事の両社員ほどでないにしても、OB訪問について危なっかしい姿勢を見せたのは20代ばかりでした。
わざわざ就活生のために時間を作ったのだから、デートを1回くらい付き合ってもいいだろう、ギブアンドテイクじゃないか、との発想です。
その発想がいかに危なっかしいか、説明すると、納得してくれた社会人もいれば、ふてくされたように「だったらOB訪問なんて受けないです」と話す社会人も。
これが30代以上となると大きく変わります。
OB訪問は入社しない企業も含めて自分もやったから今度は自分が受ける番、そもそも代償を求めるものではない、まして自身の性的な欲求を満たすものではない、セクハラ・パワハラと取られることが一番怖いからそこは注意している、などなど。
こうした姿勢は企業が進めるOB訪問に合致しています。
この姿勢は30代以上のもので20代社会人は皆無、というわけではありません。
就活生に真摯に向き合う社会人は20代にも多数います。
ただ、OB訪問は社会人側の善意・モラルによるもの、という当たり前の話を理解していないのは20代と30代以上とでは差があるのは確かです。
これ、何かに似ているなあ、と思って出てきたのが自由民主党の国会議員です。
3回生議員は不祥事を起こす議員が多く、「魔の3回生議員」「安倍チル魔」などと呼ばれています。
もちろん、自民党の3回生議員が全員、不祥事を起こしているわけではありません。同じ3回生議員の山下真司議員は昨年の内閣改造で法務相に選出されています。他にも地道な政治成果を出している議員もいるでしょう。
が、不祥事が他の当選回数議員よりも多いことは事実です。
これが20代社員による就活セクハラと同じ、と考えて取材した記者に説明したところ、「うまいたとえですね」と感心されました。
社会性、モラルがまだ未成熟?
就活セクハラをやらかした大林組・住友商事の両社員は20代で、社会性やモラルがまだ十分に備わっていなかった、と言わざるを得ません。あれほど大きな企業の社員であるにもかかわらず、です。
これと同じ構造が武田塾講師の高田・山火両氏にも当てはまります。
いくら武田塾が副業OKで、動画の後ろに「武田塾とは無関係です」とのテロップを入れても、高田・山火両氏が武田塾に属する以上は、武田塾の姿勢と見られるのが自然です。
もし、高田・山火両氏が動画を好きに出したい、というのであればそれは武田塾を辞職するのが筋というものでしょう。
あるいは、武田塾に所属しながら動画を投稿したい、というのであれば、武田塾の看板に傷つけるような動画を投稿することは絶対に避けるべきです。法政大ディスり動画以外にも問題ある動画については削除するか、そもそもYouTube活動をやめるべきです。
おそらく、武田塾の林尚弘塾長は動画投稿について、ある程度の社会性やモラルが備わっているという前提で認めたに違いありません。塾・予備校のターゲットとなる中高生は動画視聴が習慣化しています。塾講師による動画投稿は宣伝効果も見込ます。まさか、法政大ディスり動画のような不適切動画を投稿するとは考えていなかったに違いありません。
もっとも、不適切動画の投稿から2週間経過してもなお、林塾長は何の弁明・謝罪もしていません。となると、林塾長がこの不適切動画を是認している、とも取れるのですが(これはこれで企業の姿勢として強い疑問があります)、それはひとまずおくとします。
高田史拓・山火武、両氏とも年齢は不明ですが、2017年のWANTEDLY記事に「京都大学経済学部を2017年4月から休学」とあるので20代であることが推察できます。
20代で社会性やモラルがまだ未成熟…、そう、就活セクハラをやらかした大林組・住友商事の両社員と構造は同じなのです。
20代でまともなYouTuberも
私は20代の学生・社会人が全て社会性に欠ける、というレッテル貼りをしたいのではありません。
20代であっても、まともな社会人は大勢います。
この武田塾講師による不適切動画投稿問題だと、20代~30代のYouTuberでは、えらいてんちょう氏(えらてん起業チャンネル)、スーツ(背広)氏などが評論動画を投稿、それぞれ批判しています。
「嫌いなユーチューバーを発表します」/えらてん起業チャンネル
「wakatteTVウザすぎ」/スーツ(背広)
特に横浜国立大生のスーツ(背広)氏はご自身が嫌いな納豆にたとえるなど、その舌鋒鋭さに感じ入りました。もともと好きなYouTuberだったのですが、さらにファンとなった次第。
企業は20代リスクを認識せよ
と、このように20代社会人でも、社会性のある人はちゃんといます。決して「今どきの若い者は」と断じるものではありません。
しかし、社会性やモラルがなく、事件や騒動を引き起こしてしまうのは20代に一定数いる、と言わざるを得ません。
大林組・住友商事の就活セクハラ、武田塾の不適切動画投稿、ひいては2010年代以降、何度となく繰り返されるバイトテロ・バカッターはいずれも20代(またはその前後)です。
バイトテロ・バカッターについて産経新聞2019年2月14日朝刊記事「『バイトテロ』どう止める? 仲間外れ恐れて暴走 監視役の社員置いて」でITジャーナリストの井上トシユキ氏は次のようにコメントしています。
ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「今の10代後半から20代前半の若者たちは、SNSで自分たちを『キャラ付け』して交流するコミュニケーションの中で育った世代。友達の輪から外れる行為を極端に恐れ、内輪で盛り上がる行為をやめられない傾向があるのでは」と推測する。
私もまったく同感です。井上氏は「10代後半から20代前半」としていますが、私は20代全般にも当てはまる話、と考えます。
もっと言えば、「友達の輪」だけでなく、自身の世界観・価値観にこだわりすぎとも見ています。
こうした価値観を20代の社会人が一定割合、持っているということはこれは企業からすればリスクに他なりません。
何しろ、「言わなくてもわかるよね」という前提条件が実は全く異なるものになっているのですから。
この20代リスクは、いったい、何が原因か、あるいはすぐれた対策を実施している企業・団体はどこか、などは正直申し上げてまだ未取材です。
ですが、令和の時代に、新社会人を受け入れる企業・自治体・団体などはこの20代リスクを認識したうえで対策を考える必要があるでしょう。
そうでないと、大林組・住友商事や武田塾のようにネガティブな影響を被ることになります。武田塾がこの不適切動画投稿騒動にどう向き合うのか、おそらく答えが出るのは(黙殺、という選択肢も含めて)令和に変わってから。
そのあたりも含めて、令和になってからも私は関連記事・書籍を出し続けます。
というところで平成最後のYahoo!ニュース個人記事の締めくくりとさせていただきます。令和以降もご愛顧のほどを。