『ブレードランナー2049』のシンギュラリティ
KNNポール神田です。
いよいよ、本日(2017年10月27日)より『ブレードランナー2049』の公開が始まる。
オリジナルの『ブレードランナー』の公開は1982年。今から35年前。描いている未来は2019年のロサンゼルスだった。
2017年、世界は、ドローンやAIや自動運転によってSF映画の片鱗をようやく見せはじめようとしている。しかし、実際には、「シンギュラリティ」という人工知能が人間の能力を超える技術的特異点は2045年と想定されている。あと28年も先のことだ。
今だに自動車は、自動運転のファースト・ジェネレーションであり、まったく空を飛びそうにもない。人類は、月や火星で生活することもない。唯一進化しているのは、インターネットへのアクセスがモバイル中心になったことぐらいだ。これらの進化は、想像以上に遅いのが現実だ。その激遅の進化ですら危惧する人が大半だ。人は進化に対しての恐れをいつの時代も抱いている。その心情があるからこそ、書籍や映画が描いた21世紀は、いろんなユートピアとは正反対のディストピアストーリーが描かれている。
ディストピアを描いた21世紀
ディストピアの歴史
1968年「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」 フィリップ・K・ディック
1973年「ウエスト・ワールド」マイケル・クライトン
1979年 「エイリアン」リドリー・スコット
1981年「ニューヨーク1997」ジョン・カーペンター
1982年「ブレードランナー」リドリー・スコット
1982年「トロン」スティーブン・リズバーガー
1984年 「1984」アップルコンピュータ リドリー・スコット
1984年 「ターミネーター」ジェームズ・キャメロン
1984年「ニューロマンサー」ウィリアム・ギブスン
1986年 「エイリアン2」ジェームズ・キャメロン
1987年 「ロボコップ」ポール・バーホーベン
1990年 「トータルリコール」ポール・バーホーベン
1991年 「ターミネーター2」ジェームズ・キャメロン
1995年 「攻殻機動隊」押井守
1995年 「JM」ロバート・ロンゴ
1999年 「マトリックス」ウォシャウスキー兄弟
ざっと掲げてみても、それぞれの作品が互いに影響を与え合ってきていることが伺える。機械ロボットがサイボーグ、アンドロイドとなり、サイバー空間で電脳と闘う。映画や小説の世界での想像は、果てしない妄想力で未来を創り上げることが可能だ。また続編がヒットすることで映画のシリーズが深まる。新人監督がチカラをつけてオリジナルに取り組めるなど。
そして、35年もの時を経て、『ブレードランナー』の続編を作るにあたり、3つのオムニバスショート映画が公開されている。あまりにも『ブレードランナー2049』までの期間が空いたのでそれまでのストーリーを埋める形となった。また、映画の公開前にこのような前日譚をネットで公開するという手法も、映画を映画館だけで楽しむという時代ではなくなったことへの巧妙なマーケティングだと考えられる。
『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーブ監督がショートムービー3本を依頼したという。
『BLADE RUNNER BLACK OUT』日本語字幕版
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2022年=大停電(ブラックアウト)、2036年=新型レプリカントの存在が明らかとなったことに続き、空白の30年間を繋ぐ最後のエピソードを公開!
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『BLADE RUNNER 2036 Nexus Dawn』日本語字幕版
『ブレードランナー2049』へ至る、空白の30年間。
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『2048:NOWHERE TO RUN』日本語字幕版
『ブレードランナー2049』の舞台である2049年の一年前、2048年の世界―。
ロサンゼルス市警は“ブレードランナー”組織を強化し、違法な旧型レプリカント《人造人間》の処分を徹底していた。軍から逃げ出し、この街にたどり着いた旧型の違法レプリカントであるサッパー(デイヴ・バウティスタ)は、トラブルを避け静かな暮らしを送っていたが……
2018年の『ブレードランナー』の世界がどのような変遷をたどり2049年になったのかは、こちらのサイトにも詳しい。
http://roadto2049.bladerunnermovie.com/
映画の世界観は、ネット上でさらに深く深く掘り下げることが可能になってきた。また、これらの作品に刺激を受けた人たちが新たな作品を作り上げていく。映画のようなディストピアになるのかどうかは、シンギュラリティを迎える私達ひとりひとりが、どのように影響を与えあっていくかで変化しそうだ。
レプリカントを恐れるような、ロボット技術の進化はまだまだ時間がかかりそうだ。