運命の9日 「盧武鉉弾劾」と「朴槿恵弾劾」の比較
朴槿恵大統領の弾劾訴追案が12月9日に国会で採決される。可決されれば、韓国史上2度目の大統領弾劾訴追となる。
一度目は、今から12年前の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領に対して行われた。
総選挙を控えた2004年3月9日、野党第1党の「ハンナラ党」と第2党の「新千年民主党」(民主党)が大統領の弾劾訴追を発議した。
弾劾の動機は、野党第1党の「ハンナラ党」が支持率の下落に危機感を抱いていたことと、金大中前政権の流れを組む野党第2党の「新千年民主党」(民主党)が盧大統領に反感を持っていたことにあるが、直接的な理由は盧大統領が2002年の大統領選挙時に法を違反したと選挙管理委員会が判断したことによる。
一方、朴槿恵大統領の場合は、友人の崔順実被告の国政介入や大統領の憲法及び大統領機密文書漏えい、職権乱用、斡旋収賄罪等11の法律違反などが理由となっているが、直接的には世論の退陣要求に押された格好となっている。
実際に世論は、盧武鉉政権の時は、国民は大統領に謝罪を求めたものの国会での弾劾には反対していた。当時の世論調査(2004年3月6日)では「謝罪すべき」が61%(中央日報、3月6日)あったが、「弾劾反対」も65.2%(KBS、3月9日)に上っていた。
これに比べて、朴大統領の場合は、世論が退陣、弾劾を求めている。弾劾が75%(世論調査機関「リアルメーター」12月1日)で、また朴大統領の支持率も過去最低の4%(「ギャラップ調査」11月25日)、そして毎週土曜には100万~190万人の集会、デモが行われている。
国会での弾劾の可決には3分の2の議員の賛成が必要である。
盧武鉉政権の時の国会議員の数は271人。従って、181人以上で可決するが、「ハンナラ党」と「民主党」合わせて206人のうち、192人が賛成に回り、弾劾が可決された。
一方、朴政権下の国会議員は300人なので3分の2の200人の賛成で可決する。野党第1党の「共に民主党」の121人議席と第2野党の「国民の党」の38議席、第3野党の「正義の党」の8議席に無所属の5人加えて、172人が弾劾を発議している。仮に与党(128議席)から28議席が造反し、野党に同調すれば、可決される。
与党には「非朴派」と称される非主流派が35人と中立派が10人前後いるとされているが、すでに非主流派は賛成の意思表示をしているならば、今後中立派や主流派からも雪崩現象を起こして、賛成に回る公算が高い。
盧大統領は弾劾が国会で可決された2004年3月12日、大統領職務及び権限が停止された。当時国務総理(首相)だった高建氏が大統領職務代行を務めた。
しかし、弾劾に反対していた国民は野党が党利党略で大統領を弾劾し、国政を混乱させたとして猛反発し、1か月後の4月15日の総選挙では盧大統領率いる与党「ウリ党」に票を入れ、勝たせた。
与党の圧勝は盧大統領のへの事実上の信任とみなされ、弾劾から約2か月後の5月14日、憲法裁判所は弾劾を棄却し、盧大統領は職務に復帰した。
朴大統領に対しては野党3党から12月2日に弾劾が訴追されているが、結果は12月9日に判明する。
仮に弾劾が可決すれば、憲法裁判所の判決までの間、黄教安(ファン・ギョアン)総理が憲法第71条に基づき大統領の権限を代行する。
憲法裁判所は180日以内に弾劾の可否を決めることになる。判事(9人)の3分の2以上が賛成すれば、朴大統領は罷免される。