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『SHOGUN 将軍』は海外でどう報じられたか? 一方日本の「不都合な現実」とは? #専門家のまとめ

松谷創一郎ジャーナリスト
2024年9月16日、エミー賞を受賞した真田広之とアンナ・サワイ(写真:ロイター/アフロ)

 ディズニー傘下・FXのドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』が第76回エミー賞で18部門を受賞し、歴史的快挙を成し遂げた。日本の戦国時代末期を舞台にした本作は、その映像美と文化的正確さで高い評価を得ていることが証明された。本記事では、海外メディアの反応を通じて、『SHOGUN 将軍』がいかにして日本文化を尊重しながら普遍的な魅力を持つ作品となったのか、その制作背景と受賞の意義を探る。

ココがポイント

the earlier a project can bring in a partner like CAPE, the better.
出典:"Indie Wire" 2024/9/16(月)

If the story is compelling, viewers and success will come.
出典:"CNN" 2024/9/16(月)

Hollywood should perhaps look more closely at our own.
出典:"VARIETY" 2024/2/26(月)

Shōgun employs a distinct, unusual visual language.
出典:『Peta Pixel』2024/9/17(火)

エキスパートの補足・見解

 『SHOGUN 将軍』は、海外で高く評価されている一方で、日本のメディアや業界の姿勢には強い疑問を持たざるをえない。海外メディアは本作の文化的正確さと映像美を称賛し、日本人俳優の起用や日本語使用の重要性を強調しているが、それを単純に「日本の誇り」として報じる国内メディアの姿勢は、最重要課題を見誤っている。

 黒澤明に代表されるように重厚な時代劇の伝統がありながら、なぜいまの日本ではこのような国際的に評価される作品を制作できないのか。真田広之がアメリカで主演・プロデューサーを務めたことは、人材と才能の流出とも捉えるべきだろう。それは、日本の映像業界の閉鎖性と国際競争力の欠如を如実に示しているにすぎない。日本のメディアや専門家は、あまりにもこの不都合な現実から目を背けている。

 その成功を安易に喜ぶのではなく、日本の映像業界が抱える深刻な問題──創造性の欠如、リスク回避の姿勢、国際市場への無関心──を直視すべきだろう。この作品は、皮肉にも日本の才能がアメリカの土壌でこそ開花したことを示している。日本のメディアと業界は、この現実を謙虚に受け止め、根本的な改革に着手する必要があるはずだ。

ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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