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「タイソン戦は八百長じゃない!」YouTuberの主張

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ジェイク・ポールのチーム、Most Valuable Promotionsが、11月15日のマイク・タイソン戦に関する声明を出した。YouTuberからボクサーに転向したジェイク・ポールとタイソンとのファイトが「仕組まれていたのではないか」と言う主張に対して、異議を申し立てたのだ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 試合終了後、ファン、そしてボクシング界の人間も、ネット上でタイソンvs.ポール戦に筋書きがあったかのような意見が挙がっている。これを重く見たポール陣営は説いた。大まかな内容は以下だ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 「試合を侮辱する不正確で根拠のない主張が広く流通していることを受け、Most Valuable Promotions(MVP)は契約上の合意、そして試合の性質について事実を述べたい。

 プロボクシングにおける八百長は明らかな犯罪であり、同ファイトは、テキサス州できちんと認可されたものである。両選手は試合に勝つという目標を掲げ、誠意を持って能力の限りを尽くした。

 両選手は勝利のために自分の武器、すべて使った。これに反する意見はボクシングそのものに抗うことになる。スポーツ界は、くだらない話や憶測が飛び交い、アスリートやプロモーターは意味のないコメント、ジョーク、主張を容認しなければならない。しかし、闘士が全力を尽くす以外の何かをしたと疑いの目を向ける行為は、彼らが費やした努力と競技に対する侮辱だ。Netflixの大イベントを八百長と捉えるのは、非論理的である」

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 YouTuberはタイソンにラッシュをかけられなかったが、本格的にボクシングをやり始めて日が浅いのだから技術があるわけではない。また、11月15日のAT&Tスタディアムには、かつてタイソンと世界ヘビー級タイトルを懸けて戦ったイベンダー・ホリフィールドとレノックス・ルイスの姿があった。

 花道に向かう直前のタイソンを激励するため、2人は連れ添ってタイソンの控室を訪れている。緊張した面持ちのタイソンは、ルイスに向かって言った。

 「何か言ってくれよ」

 2002年6月8日にタイソンを8ラウンドでKOし、統一ヘビー級タイトルの防衛に成功したルイスは応じた。

 「ヤツをぶちのめしてやれ!」

写真:ロイター/アフロ

 62歳のホリフィールド、59歳のルイス、58歳のタイソンはそれぞれスキンヘッドになっており、嫌でも時の流れを感じさせた。

 ショー的要素が強かったものの、58歳のタイソンは27歳の若いインフルエンサーを相手に、出来る限りの戦いをしたのだ。その本気度を理解したからこそ、かつてのライバルたちは、これからリングインするタイソンに言葉をかけたかったのであろう。試合のレベルは別として、3名の元統一ヘビー級チャンピオンが揃ったところに、筆者はある種の感動を覚えていた。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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