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最新の被害者はジェニファー・ロペス。セレブを悩ませてきたストーカーたちの顔ぶれは

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:REX FEATURES/アフロ)

人に夢を与えるのが、セレブの仕事。だが、時に、間違った夢を持たれてしまうこともある。

セレブにまつわるストーカー事件は昔からあり、80年代には「レイジング・ブル」のテレサ・サルダナが、ファンに刺され、瀕死の重傷を負っている(追悼テレサ・サルダナ:80年代、ファンに刃物で刺され、瀕死の状態に陥ったハリウッド女優)。サルダナの尽力もあって反ストーカー法が成立し、世間の人々の認識も高まった。それでもこういった事件は後を絶たず、今月は、ジェニファー・ロペスがストーカーに対して接近禁止命令を申請している。

この男ティム・マクラナハンは、ロペスがL.A.の自宅からラスベガスに行く時に後を追ってきた上、過去に何度も手紙や花を贈り、家の敷地内に侵入したこともあるという。マクラナハンには犯罪歴があり、ロペスは子供たちの身に危険が及ぶことを恐れているとのことだ。だが、ロペスのセキュリティチームの手落ちで、25日、裁判所は、この接近禁止命令を却下している。

昨年には、テイラー・スウィフトが、ふたりの男性から別のストーカー被害に遭った。ひとりはロード・アイランドの彼女の自宅、もうひとりは彼女がコンサートを行ったテキサス州オースティンで彼女に接近している。オースティンのフランク・アンドリュー・フーバー(39) は、過去に「彼女と一緒でなければ、僕はずっとひとりだろう。そして彼女も間違った男とつきあっては傷つくということを繰り返すだろう」といったような内容のメールをたびたびスウィフトの父に送り、接近禁止命令が出されていたにも関わらず、直接の接近を試みた。ロード・アイランドのジョセフ・バーナッチェは、スウィフトと結婚したいと叫びながら、彼女の自宅に不法侵入している。昨年はまた、ブルック・シールズが、長年にわたるストーカー被害で訴訟を起こしている。

ブリトニー・スピアーズは日本人、シャロン・ストーンはイタリア人に追いかけられるなど、数多いストーカー事件では、犯人像もさまざまだ。過去の例のいくつかを振り返ってみる。

サンドラ・ブロック

2014年6月の明け方、ブロックは、自宅で奇妙な物音を聞く。なんだろうと思って見に行くと、見知らぬ男が屋根裏に向かおうとしていた。ブロックは急いでクロゼットに隠れ、警察に電話をする。駆けつけた警察は男を逮捕。男はジョシュア・コーベットという名前で(当時39歳)、ブロックへの手紙と、ブロックの写真の切り抜きを持っていた。逮捕された時、コーベットは、「ごめんね。愛しているよ、サンディ」と言ったという。

彼は、この日の前にも2日連続で彼女の家を訪れていたらしい。ブロックの家に侵入した時、武器は持っていなかったが、警察が自宅を捜査したところ、マシンガンや銃弾などが見つかった。被告側の弁護士は、コーベットが、自分はブロックと結婚していると幻想を持っており、ただラブレターを渡しに行ったのだと主張。警察とのやりとりで、本人も、「彼女を傷つけるつもりで行ってなんかいない。彼女が十分守られていないと思ったからだ」と答えている。

ジャスティン・ビーバー

ジャスティン・ビーバーのストーカーと聞いて若い女性だろうと思ったら、間違い。2012年、ビーバーを殺そうとたくらんだのは、当時45歳の男性デイナ・マーティンだ。レイプ殺人で終身刑を受け、刑務所に閉じ込められているマーティンは、ビーバーの大ファンになり、ビーバーの名のタトゥーも刻んだ。だが、なぜかマーティンはビーバーを殺すと決め、刑務所で知り合った友人と、その男の甥に、計画の実行を託す。マーティンの指示は、ビーバーがコンサートを行うニューヨークで絞殺し、性器を切り取っておみやげとして持ってこいというものだった。しかし、これまたなぜか、計画者であるマーティンは考えを変え、自ら警察に通報をして、ふたりは逮捕されている。後に、マーティンは、ビーバーについて、「彼はハンサムだよね。もう成人だし、彼と一緒にベッドに行きたいと思うよ」と語っている。

マドンナ

これもかなり恐ろしいケース。1995年、L.A.のホームレス男性ロバート・ドューイー・ホスキンスは、マドンナに「耳から反対の耳にかけて、喉をかき切って殺してやる」というような手紙を送りつけ、何度も接近を試みた。彼がマドンナの家のフェンスを乗り越えようとした時、ボディガードが発砲して彼は負傷、逮捕に至る。実刑10年の判決を受けたが、刑務所の壁にも「マドンナのストーカー」と書きなぐっていたとのことだ。刑期を終えた後は、精神病の治療で病院に入っていたが抜け出し、次にハル・ベリーを狙った。幸い、悲劇が起きる前に捕まえられている。

キャサリン・ゼタ=ジョーンズ

ゼタ=ジョーンズを苦しめたのは、彼女の夫マイケル・ダグラスのファンだというL.A.在住の女性ドーネット・ナイト(当時32歳)。2003年から2004年にかけて、ナイトは、「あの女の肉を切り刻んで犬に食べさせてやる」などといった内容の手紙を19通書き、ダグラスの父カーク・ダグラスや、彼女のエージェントに送りつけた。彼女はまた、ゼタ=ジョーンズの行動や居場所、友人の名前などを不思議なほど把握しており、ゼタ=ジョーンズが「オーシャンズ12」の撮影でアムステルダムにいた時には、ホテルに3度、脅しの電話をかけている。ナイトは2005年、3年の実刑判決を受けた。

イヴァンカ・トランプ

モデル、テレビタレント、女性実業家で、今や大統領の娘にもなったイヴァンカ・トランプのストーカーは、精神の病を抱える34歳のジャスティン・マスラー。半年にわたって異常な内容のメール、ツイート、血まみれになった自分の写真などを送りつけた彼は、2012年、彼女のジュエリーショップで自殺をすると通告し、逮捕に至る。マスラーはトランプ一家から接近禁止命令を出され、6ヶ月の服役を終えた後はネバダの精神病院で治療を受けていたが、昨年12月、ニューヨークにいるという情報をトランプのシークレットサービスが確認。トランプタワーからわずか1ブロックのところで、すみやかに捕まえられている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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