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ソーシャルメディアは、銃社会よりも強いのか?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
黒人射殺問題でコメントするオバマ米大統領(写真:ロイター/アフロ)

KNNポール神田です!

米南部テキサス州の大都市ダラス中心部で7日夜(日本時間8日午前)に起きた警官銃撃事件。黒人差別に抗議する平和裏のデモ行進は警官ら14人が死傷する惨劇に様変わりした。

出典:<米警官狙撃>「まさに処刑だった」抗議デモ、突如惨劇に

連日、米国からの訃報が続く…。これらの事件には3つの要因が深く絡んでいる

1.黒人差別問題

2.銃社会問題

3.ソーシャルメディアでの実況

「これら(射殺事件)は、わが国の司法制度に広がる課題、司法制度全体に年ごとに現れる人種格差、その結果として警察と、彼らが仕えるコミュニティーのうちあまりにも多くのものの間に存在する信頼の欠如を示すものだ。われわれが深刻な問題を抱えていることを認めることは、日々、命を懸けてわれわれを守っている大多数の警察官に対する尊敬と感謝の念に決して矛盾するものではない」

出典:2件続いた警官による黒人射殺事件でオバマ大統領がメッセージ

オバマ大統領が追悼声明をおこなった。

第44代米国大統領が、史上初の黒人系となった今でも、差別意識は白人黒人の双方になくなってはいない。そして、そこに「銃を誰もが持てる社会」が介在することによって、米警察官は常に「死」を覚悟する瞬間のストレスと葛藤している。一発触発の緊張感は、正当防衛として、殺られそうなら撃ててしまう。それらが、ソーシャルメディアで実況中継されてしまう時代になったことによって、怒りまでが拡散されてしまった。

300万人がソーシャルで目撃したミネソタでの黒人射殺

特に、2016年7月7日に発生した米ミネソタ州での事件は、印象ぶかい。

ラビッシュ・レイノルズさんは、警察官に撃たれた瞬間から、facebook liveで実況を開始しはじめた。日本ではまだ馴染みの薄いfacebook liveは、facebookに記事をポストする感覚で実況放送ができる機能だ。

レイノルズさんのサイトには、恋人が警官に撃たれ、自らパトカーで搬送される生々しい映像がきわめて冷静に実況放送をおこなっている。レイノルズさんは、中継していることによって冷静さが担保されたのかもしれない。しかし、最後には感極まってしまう…。

【閲覧注意!】レイノルズさんのfacebook

「過激な描写が含まれる動画」とアナウンスされているが、facebook上には事件の証拠として、恋人がなくなる映像が残っている。

https://www.facebook.com/profile.php?id=100007611243538 https://www.facebook.com/profile.php?id=100007611243538

すでに動画の視聴数は500万回を超えている。

同時に、レイノルズさんへの寄付のファンドも立ち上がっている

https://www.gofundme.com/2d8ryf34

募金はすでに1万ドルを超えた…。

ソーシャル生放送局でシェアされる当事者情報

スマートフォンは、もはや誰もが持っている時代だ。そして、銃も誰もがライセンスを取得すれば持てるアメリカの銃社会。誰もがとっさに人を殺せるように、誰もがとっさに放送を開始することもできてしまう。今まで撮影した映像は、どこかのメディアに提供しなければ拡散されなかった。しかし、facebook liveなどでは、友人を通じて、その場の空気と共に、誰もの端末に当事者情報がダイレクトにシェアされる。その瞬間に生証人が大量に発生するのだ。今回のようなショッキングな当事者からの情報発信は、スマホのアプリを立ち上げ、ワンクリックのアクションで放送が開始できてしまう簡易さから実現した。

しかし、それと同時に、ダラスの悲劇のように、白人警察への怒りが別方向で派生してしまうという悲劇の連鎖も生んでしまったことも事実だ。銃の銃爪と、生放送の実況ボタン。どちらもワンクリックで、人の感情を止めてしまったり、人の怒りを増幅させてしまったりもする。特にソーシャルメディアでの拡散は想像以上に早い。

事件の背景にある、アメリカの悩める問題と、個人化する実況放送とソーシャルメディアとの関係性。ストレスが高まり、ヒステリックになりがちな環境には、どちらもふさわしくないようだ。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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