世界遺産の価値からみた上賀茂神社と下鴨神社
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/yamamurajyunya/00176527/top_image.jpeg?exp=10800)
昨日(5月1日)京都では「葵祭」の期間に入った。残念ながら今年は5月15日の路頭の儀が中止となったが、この祭は上賀茂神社と下鴨神社の例祭で、両社は世界遺産となっている。この世界遺産選定の理由のひとつが、本殿が「流造(ながれづくり)」という形式を取っているから。全国の神社(8万5千社近く)の本殿は約6割がこの形式であり、そのモデルとなっているのだ。他には京都に見られる事例で言うと、伊勢神宮に代表される神明造(日向大神宮等)、春日大社の春日造(大原野神社等)、北野天満宮の権現造、石清水八幡宮の八幡造、八坂神社の祇園造、伏見稲荷大社の稲荷造(流造の変形)などが著名だ。
![「流造」 屋根は平入り形式で手前に長く流れている](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/yamamurajyunya/00176527/image01.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
モデルと言えば両社の神紋の「双葉葵(フタバアオイ)」をモデルにしたのが、徳川家の家紋「三つ葉葵」。徳川家はもともと三河の松平家出身。この家が賀茂社(三河は文字通り水に恵まれ、賀茂信仰が盛ん)と繋がりがあり、それを知っていた家康がアレンジして家紋に採用したとか。同じく三河出身で徳川家の譜代大名として活躍した本多家(徳川四天王の本多忠勝など)も葵を家紋にしている。
さて、両社の本殿は国宝だが、どちらも文久3(1863)年の幕末の時代の再建。比較的新しいのに国宝指定されたのは、21年に1度の式年遷宮で営々と建替えが行われてきたからで、建物自体は新しくとも古式を良く守っているからだ。ちなみに建替える際に、使われなくなる本殿は、他の神社へ移築されることもある。下鴨神社の場合は、熊野神社(左京区)や菅大臣神社(下京区)の本殿に移築されている。現在の式年遷宮は、文化財保護法が制定されたことにより、建替えはせず、主に屋根の桧皮葺の吹き替えなどの補修を行っている。
もうひとつの世界遺産の価値として、下鴨神社の「糺の森」も忘れてはいけない。平安京以前の生態系を維持している貴重な自然の森で、都会の原生林と呼ばれている。5月3日の流鏑馬神事の舞台にもなっているほか、観光的には京都で最も遅く紅葉が楽しめる場所である。立木密度が極めて高いため、高木の落葉樹の落葉が始まってから低木の楓に日が当たり、紅葉が始まるからだ。見頃は例年12月中頃になるので、ぜひ訪れて欲しい。
![糺の森の紅葉](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/yamamurajyunya/00176527/image02.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)