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ハードヒット率は未だ0%!千賀滉大のお化けフォークがMLBを席巻中

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
5月17日のレイズ戦で今季最多の12奪三振を記録した千賀滉大投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【レイズ戦で今シーズン最多の12奪三振を記録】

 すでに日本でも報じられているように、メッツの千賀滉大投手が現地時間5月17日のレイズ戦で今シーズン8度目の登板に臨み、6回を投げ3安打1失点12奪三振の好投を演じた。

 味方打線の援護を受けられず勝利投手にはなれなかったが、現在MLBで打率、本塁打数、打点、得点、OPS等でトップを走っている強豪レイズ打線を相手に、今シーズン最多の12奪三振を奪う投球は、十分に評価される内容だろう。

 ここまで大谷翔平選手同様に、ホークス時代にはほぼ経験のない中5日登板を続ける中、メッツ先発投手陣の中でトップの防御率(3.77)と投球イニング数(43.0)を記録しており、成績上では早くもエース格の存在になり始めている。

【MLBでも威力を発揮し続けるお化けフォーク】

 さて千賀投手といえば、スプリングトレーニングから彼の代名詞となっている「お化けフォーク」が注目を集め続け、今ではお化けフォークはキャラクター化されている。千賀投手が三振を奪った際にはKサインではなく、そのキャラクターが飾られるほど地元ファンの間ですっかり定着している。

 そしてお化けフォークはファンの期待を裏切ることなく、登板する度にその威力を発揮し続け、すでにMLB最強の球種になっているのをご存知だろうか。

 MLB公式サイト等で記録関連の記事を担当しているサラ・ラングス記者のツイートによると、今シーズンの千賀投手はここまで166球のお化けフォークを投げ、まだ一度もハードヒット(打球速度が95mph以上だったもの)されていないというのだ。

 これは今シーズンここまでで最もハードヒットされていない球種であり、2位のルイス・ガルシア投手のスライダー113球を大きく上回っていると報告してくれている。

【お化けフォークの平均打球速度はたった116.0km/h】

 ラングス記者のツイートを受け、個人的に選手の各種データを紹介しているMLB公式サイト「savant」をチェックしたところ、改めて千賀投手のお化けフォークの凄さを実感することができた。

 同サイトによると、これまで千賀投手が投じたお化けフォークはラングス記者のツイートより2球少ない164球と集計し、その上でハードヒット率はラングス記者の報告通り0%になっている。

 さらに球種別被打率は.114に止まり、ここまで千賀投手が奪った55個の三振の中で30個がお化けフォークで仕留めているとしている。

 またお化けフォークを安打にされたケースは5回あるものの、同球種のXBA(打球の打率期待値を示す)は.087と実際の被打率をさらに下回っており、打者がお化けフォークをハードヒットできないどころか、ほとんど捉えられていない状態であることを示している。

 それを裏づけるように、お化けフォークの平均打球速度は72.1mph(約116.0km/h)に止まり、ほぼ凡打しか許していない状況にある。

【ストライクゾーン外のお化けフォークに手を出す打者たち】

 もう少し千賀投手のお化けフォークの詳細データをチェックしていこう。

 以下に掲載している画像は前述のサイトから引用したもので、ボール判定されたものを省いたお化けフォークをチャート化している。

MLB公式サイト「savant」から引用
MLB公式サイト「savant」から引用

 如何だろう。安打を示すオレンジ色はほぼゾーン内に投じられている一方で、かなりの確率でゾーン外のボールを振らせ、空振りもしくは凡打を打たせているのが理解できる。

 こちらに関しても、Whiff率(ゾーン外のボールを振らせる確率)が58.8%、三振率も56.6%と高数値を示している。

 これらのデータが示しているように、千賀投手のお化けフォークに対し、MLBの強打者たちでさえ完全に手を焼いている状況だといっていいだろう。

【お化けフォークが本領発揮するのはむしろこれから?】

 MLBでお化けフォークが絶対的な球種として認識されるようになったことで、今後千賀投手の投球はさらに幅を広げることになるだろう。相手打者がお化けフォークを意識してくれればくれるほど、変幻自在に投球を組み立てることができるからだ。

 実際前述のレイズ戦での12奪三振も、お化けフォークで仕留めたのは3回だけで、残りはフォーシーム5回、カッター2回、スライダーとスイーパー各1回と、あらゆる球種で三振を奪えている。

 またレイズ戦後に千賀投手が「投げたいところに投げられる数がすごい増えましたし、大きく外れるというところが減ってきた」と話しているように、確実にMLB公式球に適応し始めており、今後さらにお化けフォークの精度、キレも増していくのではないだろうか。

 同じフォークを武器にMLBでセンセーショナルなデビューを飾った1995年の野茂英雄投手にしても、オールスター戦に選出されるような快投を演じ始めたのはシーズン開幕から1ヶ月が経過してからだった。

 そんな期待を千賀投手に寄せてしまうほど、現在のお化けフォークはMLBを席巻しているのだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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