Yahoo!ニュース

各国の国旗をイケメン男子に擬人化 海外からも注目集める『ワールドフラッグス』とは?

河嶌太郎ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)
『ワールドフラッグス』のメインビジュアル

 紆余曲折の末開催された東京オリンピックが閉会し、パラリンピックもいよいよ開会しました。オリンピック・パラリンピックの開会式や閉会式では世界中の国や地域の旗が集結しますが、実はこの「旗」を擬人化した作品があります。『ワールドフラッグス』です。

現在では84ヶ国の国旗がキャラクターとなっている
現在では84ヶ国の国旗がキャラクターとなっている

数ある擬人化の中でも「旗」に注目

 実在する物や生き物などを擬人化することでヒットした作品はこれまで多くあります。例えば、第二次世界大戦で活躍した軍艦を女性キャラクターに擬人化した『艦隊これくしょん』、日本の名刀を男性キャラクターにした『刀剣乱舞』、さらには、日本競馬で活躍した名馬を女性キャラに見立てた『ウマ娘 プリティーダービー』が現在話題を集めています。

 『ワールドフラッグス』では、世界の国旗をイケメンの男性キャラクターに見立てており、Twitterを中心に海外で人気を集めています。最初は約20ヶ国から始まったプロジェクトですが、徐々に国数が増え、現在では84ヶ国の国旗がキャラクターとなっています。

 プロジェクトを手がけているのは、カマヤマモトさん(40)。これまでにも職業や神話に登場する武器などを擬人化するコンテンツにも携わってきました。そんなカマヤマモトさんが国旗をキャラクターにする『ワールドフラッグス』の構想を思いついたのは2018年。最初は自身の管理するホームページ上で展開していきました。

 国旗をキャラクターにした狙いについて、カマヤマモトさんはこう話します。

「2020年の東京オリンピック・パラリンピックで、世界中の国旗が国立競技場に集まることから、一緒に盛り上げられないかと思い考えました。実在する国をモチーフにキャラクターを創り上げていくので、その国の持つ文化的・政治的側面にもかなり気を配っています。日本人にとっては一見気にならないようなことでも、その国の人達が見たら気分を害するようなことが結構ありますので、入念に調べながら進めています」

キャラクター達の情報を書籍にまとめた「ワールドフラッグス 世界196ヶ国完全データ図鑑」(宝島社)
キャラクター達の情報を書籍にまとめた「ワールドフラッグス 世界196ヶ国完全データ図鑑」(宝島社)

米CNNや英BBCでも大々的に報道

 2018年6月ごろからカマヤマモトさんの管理するホームページ「World Flags」で、各国の国旗をモチーフにしたキャラクターのイメージと、どんなキャラクターかを紹介していきました。さらにTwitterなどのSNSで拡散することで、海外でも人気に火が点いたといいます。

「ありがたいことに中国やアメリカ、中南米を中心に、海外のファンが根強くいます。自分の国が日本のアニメキャラクター風にアレンジされて取り上げられていることを喜んでくれている方が大勢いるようですね」(カマヤマモトさん)

 実際にTwitterで公式ハッシュタグ「#ワールドフラッグス」で検索すると、日本語のタグにもかかわらず、英語の投稿も多く散見されます。中には中南米のスペイン語と思われるツイートもあり、いかに世界で広く人気があるかがわかります。

 海外のメディアによる反応もあり、これまでにアメリカのCNNや、イギリスBBCなどでも大きく取り上げられています。また、各国の大使館からの反響もあり、メキシコ、ニカラグアをはじめとする国々の在日大使館にカマヤマモトさんは表敬訪問を行っています。

7月23日のオリンピック開会に合わせ、漫画での展開も始まった
7月23日のオリンピック開会に合わせ、漫画での展開も始まった

オリパラ開催に合わせ、メディアミックス展開も

 『ワールドフラッグス』はカマヤマモトさんのホームページに始まり、2019年10月からはTwitterで4コマ漫画の配信が始まり、11月にはキャラクター達の情報を書籍にまとめた「ワールドフラッグス 世界196ヶ国完全データ図鑑」が宝島社より発売されています。このタイミングで4コマ漫画化や書籍化に踏み切ったのは、20年の東京オリンピック開催を見据えてのことでした。

 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、東京五輪は1年延期に。20年のオリンピック開催に合わせて動いていたプロジェクトも、大きな転換を強いられました。カマヤマモトさんがこう振り返ります。

「オリンピック開催が延期になったのは残念でしたが、ワールドフラッグスのコンセプトが、作品を通じて世界の国々について学ぶことができる『教育×エンターテイメント』だったので、4コマや書籍に加えさらなるメディアでの展開を推し進めました」

 こうして21年の東京五輪に合わせる形で展開されたのが、4コマではないTwitterでのコミカライズ展開と、音楽&映像配信です。どちらも東京オリンピック開会式の7月23日に合わせて展開されています。特にコミカライズのほうは初の本格的なストーリー展開というのもあり、すぐに英語でも翻訳され、世界各国でリツイートされています。音楽映像のほうも、YouTubeで5万再生以上を突破し、動画のコメント欄の多くを英語が占めているのも特徴です。

今後は2025年大阪万博見据え展開

 今後の展開について、カマヤマモトさんはこう明かします。

「オリンピック・パラリンピックが終わっても、『ワールドフラッグス』の展開はまだまだ続きます。コミカライズが進行中ですが、アニメ化なども視野に入れていきたいですね。2025年の大阪万博の時にも世界中の国旗がまた集うので、その時にも何か仕掛けられればと思います。海外の人気に比べ、日本国内での知名度はまだ今一つではあるのですが、国内でももっと盛り上がっていったらいいですね」

 オリンピックに続きパラリンピックも開会しました。純粋な記録面も注目されるオリンピックに比べ、パラリンピックは教育的価値が高いのも特徴です。『ワールドフラッグス』も「教育×エンターテイメント」を謳っており、作品を通じて世界各国の魅力に触れられます。

 『ワールドフラッグス』では、擬人化されたキャラクター達は国を代表し、国旗の精神を受け継いだ「旗本」という設定です。パラリンピックで競っている選手達も国を背負っているという意味では同じかもしれません。共に応援していくきっかけになるコンテンツになればいいなと思います。

(C)WORLDFLAGS

ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「withnews」「AERA dot.」「週刊朝日」「ITmedia」「特選街Web」「乗りものニュース」「アニメ!アニメ!」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。

河嶌太郎の最近の記事