黒田博樹の“男気”とカープ女子たちの“熱狂力”に韓国も大注目している理由
25年ぶりにセ・リーグ優勝を成し遂げた広島東洋カープの快挙は「日本野球の広島、25年ぶりのリーグ優勝」(『聯合ニュース』)、「広島、巨人を倒して25年ぶりのセントラル・リーグ優勝」(『朝鮮日報』)と、韓国メディアでも報じられている。
中でも大きくクローズアップされているのは、黒田博樹だ。『朝鮮日報』などは「広島は今、この投手のおかげで幸せだ」と題した記事を掲載し、黒田のキャリアはもちろん、広島復帰の経緯とその相乗効果まで詳しく紹介した。
もともと韓国でも黒田はちょっとした有名人だった。シーズン前に行なわれる日韓プロ野球年俸比較では、「日本球界最高年俸投手」として取り上げられ、韓国の年俸上位者と比較されてきた。
(参考記事:こんなに違う!! 日韓プロ野球の選手年俸比較)
と同時に、メジャーリーグからの高額年俸の誘いを振り切って、古巣・広島に復帰した決断に“男気”を感じる人々が多い。
韓国ではとある出来事をキッカケに 「ダルビッシュ有は骨がある男」と評価するようになったが、広島復帰の経緯を知って以来、韓国メディアで黒田が報じられるときは「ウィリナム(義理男)」、「不惑の不屈男」との枕詞が付くようになった。『毎日経済』も、「広島25年ぶりの優勝、“義理男”黒田が泣いた!!」と報じたほどだ。
韓国メディアがもうひとつ注目するのは、広島カープの熱狂的な応援である。以前、一般紙『毎日新聞』が、「夢と情熱と感動の世界の野球場」という特集を組んだとき、サンディエゴ・パドレス、ロサンゼルス・ドジャース、シアトル・マリナーズ、サンフランシスコ・ジャイアンツと並んで、広島カープとマツダ・スタジアムが詳しく紹介されたこともあった。日本球界で取り上げられたのは広島カープだけだった。
「広島は人口120万人にしかならないが年間190万人以上の観客動員を記録するだけでなく、 “カープ女子”なる流行語まで作り出した」と。
韓国が“カープ女子”に注目するのは、韓国プロ野球も昨今、女性ファンが急速に伸びているからだろう。以前も一度紹介したが、韓国でも“野球女子”の台頭が著しい。
(参考記事:韓国のプロ野球人気を支える美しく熱狂的な“美少女パワー”)
しかも、その勢いは止まるところを知らない。韓国球界は昨日9月11日、年間観客動員数の史上最高記録を更新。これまでの最多記録は2015年の736万530人だったが、昨日で累積738万4752人に達した。
韓国プロ野球は今季、ハレンチ事件や八百長疑惑などさまざまな不祥事が起きており、それが人気に歯止めをかけるのではないかと心配されてきたが、順調に観客数を伸ばしているのだ。
(参考記事:韓国球界激震!! 飲酒、公然わいせつの次は韓国代表投手の八百長容疑が発覚!!)
観客動員数が順調に伸びている背景には、高尺(コチョク)スカイドームや三星(サムスン)ライオンズパークといった今季から誕生した新球場の存在もさることながら、各地の球場に足を運ぶ女性ファンたちの存在もあるだろう。
KBO(韓国野球委員会)の調査によると、2015年観客性別比率のうち約43%が女性だったが、今季もそれと同等もしくはそれ以上の割合で女性客が増えているらしい。その盛り上がりは女性客はおろか男性客も伸び悩むKリーグと比べても対照的で、「女性も楽しむプロ野球、マニアだけが熱狂するKリーグ」とさえ皮肉られている。
しかも、韓国プロ野球のペナントレースはまだ85試合近く残っている。このままのペースで行けば、史上初の年間800万人突破はもちろん、835万人まで到達するのではないかと言われている状態で、Kリーグとの差はますます広がるばかりどころか、「プロ野球とKリーグは雲泥の差」とまて嘲笑されそうな気配である。
そんなこともあって以前、Kリーグの某クラブのマーケティング担当者から「広島カープの“カープ女子”戦略をベンチマーキングしたいので資料を送ってほしい」との打診も受けたこともあるが、広島優勝と韓国プロ野球の隆盛が合い重なって、そんな要望がますます増えそうな予感だ。
いずれにしても韓国も絶賛する“義理男”黒田博樹とカープ女子パワー。広島発の快挙が韓国プロスポーツに刺激と好影響を与えることになれば、それはそれで痛快だろう。