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間もなくゴング! WBAヘビー級タイトルマッチ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(C) David Martin-Warr/DKP

 WBAヘビー級レギュラー王者のトレバー・ブライアンが、今夜フロリダ州マイアミで防衛戦を迎える。相手は同1位のダニエル・デュボイス。

 このファイトを手掛けるのは90歳のプロモーター、ドン・キングである。今回、キングは同興行に「自由と平和のための戦い」なるキャッチコピーを付けた。

写真:ロイター/アフロ

 試合3日前に催された記者会見で、キングは独特の口調で捲し立てた。

 「このファイトをウクライナの方々に捧げたい。ウクライナ国民を勇気付けるために、我々はここにいる。素晴らしい時間をお作りするよ」 

 WBAヘビー級レギュラー王座と、戦火に呑まれているウクライナに明確な共通項があるわけではない。しかし、己の仕事を盛り上げる為に過激な演出をする様は、90歳になっても衰えない。

 キングは話し続けた。

 「世界的に見れば、トレバーって誰だ? と感じる人もいるだろう。だが、賽の目の一つは『夢』だ。トレバーは、アメリカでならではの夢を持っている。この若者は負けを知らない。そして、チャンピオンの座にい続けることを望んでいる。

 昨日まで無名だった男が、明日は何者かになれるかもしれない。だからこそ私は、WBAヘビー級チャンプである彼をこの場に連れて来た。トレバー・The Dream・ブライアンと呼ぼうじゃないか!」 

(C)David Martin-Warr / DKP
(C)David Martin-Warr / DKP

 私は、キングの口車に乗らされ、いい様に搾取されたファイターを何人も見てきたが、モハメド・アリvs.ジョージ・フォアマン、マイク・タイソンvs.イベンダー・ホリフィールド、フェリックス・トリニダードvs.ウィリアム・ジョッピー等の名ファイトを打ち上げたキングが、遣り手であることに異論は無い。

(C) David Martin-Warr/DKP   王者トレバー・ブライアンはチャレンジャーを挑発した
(C) David Martin-Warr/DKP 王者トレバー・ブライアンはチャレンジャーを挑発した

 22戦全勝15KOのアメリカ人チャンピオン、トレバー・ブライアン(32)も、キングに触発されるように言った。

 「おい、聞けよ。俺がトレバー・ブライアンだ。俺の顔を見ているか? 自分は長く王座にいるつもりだ。キングをはじめ、試合を組んでくれた人々に礼を述べる。俺は無敗のWBAヘビー級王者だ。この一戦は『自由と平和のための戦い』と呼ばれているが、リングでは戦争になるぜ。

 俺は無名だが、それは周囲にぞんざいに扱われてきたからさ。もう、そんな訳にはいかなくなる。試合当日は目を疑うような、衝撃的な夜になるさ」

 (C)David Martin-Warr/DKP
(C)David Martin-Warr/DKP

 17勝(16KO)1敗の英国人挑戦者、ダニエル・デュボイス(24)も話した。

 「このファイトに向けて100%仕上げました。当日が待ちきれません。トレバーからベルトを奪い、祖国に持ち帰ってみせます。やってやりますよ」

 ここ数カ月、ボクシング界は最重量級のお株を奪う好ファイトが続いている。今夜は是非、ヘビー級のダイナミックさを見せてほしいものである。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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