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ウクライナ軍、トルコの軍事ドローン「バイラクタル」でプーチン大統領が海軍視察でも使っていたボート爆破

佐藤仁学術研究員・著述家
ロシア海軍のラプター級哨戒艇(ロシア海軍提供)

英国メディア「ドラマチックな瞬間」

ロシア軍が2022年2月にウクライナに侵攻。ウクライナ軍はトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」を利用して侵攻してきたロシア軍に攻撃している。

トルコ製のドローン「バイラクタルTB2」はロシア軍の装甲車を上空から破壊して侵攻を阻止することにも成功したり、黒海にいたロシア海軍の巡視船2隻をスネーク島付近で爆破したり、ロシア軍の弾薬貯蔵庫を爆破したり、ロシア軍のヘリコプター「Mi-8」を爆破したりとウクライナ軍の防衛に大きく貢献している。

ウクライナ軍が上空からの攻撃に多く利用しているトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」はロシア軍侵攻阻止の代名詞のようになっており、歌にもなってウクライナ市民を鼓舞している。

そして2022年5月にはウクライナ軍は「バイラクタルTB2」で黒海スネーク島付近でロシア海軍のラプター級哨戒艇「Raptor-class boat (Project 03160)」を爆破した。このラプター級哨戒艇はプーチン大統領がロシア海軍を視察した際や海軍のパレードの時にも乗船していたこともあるということから欧米でも多くのメディアが報じており、英国のザ・サンは「Dramatic moment(ドラマチックな瞬間)」と伝えていた。

ウクライナ軍がトルコの軍事ドローン「バイラクタルTB2」を活用してロシア軍を多く攻撃している。そして爆破に成功するたびに上空からの動画をSNSで公開して世界中にアピールしている。このようなSNSや動画だけを見ていると、ウクライナ軍が優勢のように見えてしまう。だがこのようにドローンで攻撃に成功する前にロシア軍に上空で撃墜されてしまうことも多い。今回のラプター級哨戒艇の爆破も、以前にプーチン大統領も乗っていたボートが撃沈したことは「ドラマチック」かもしれないが、決してウクライナ軍が優位になっているわけではないようだ。

ロシア海軍のラプター級哨戒艇が爆破された付近にあるスネーク島は戦略的要衝でロシアが侵攻した初日に占領し、ウクライナ軍が空爆を続けている。スネーク島にいるウクライナ軍はロシア軍への降伏を拒否し続けており、ウクライナ軍が爆破したロシア海軍の艦隊「モスクワ」が接近してきて最後通告を突きつけた時に「ロシア軍艦、くたばれ!」と無線で返してウクライナで英雄視されていた。

トルコは世界的にも軍事ドローンの開発技術が進んでいるが、バイカル社はその中でも代表的な企業である。軍事ドローン「バイラクタル TB2」はウクライナだけでなく、ポーランド、ラトビア、アルバニア、アフリカ諸国なども購入。アゼルバイジャンやカタールにも提供している。2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフをめぐる軍事衝突でもトルコの攻撃ドローンが紛争に活用されてアゼルバイジャンが優位に立つことに貢献した。タジキスタンも購入を検討している。

トルコの軍事ドローンだけでなく、米国バイデン政権は米国エアロバイロンメント社が開発している攻撃ドローン「スイッチブレード」を提供。さらに「フェニックス・ゴースト」も提供する。英国も攻撃用の軍事ドローンをウクライナ軍に提供している。ロシア軍はロシア製の軍事ドローン「KUB-BLA」で攻撃を行っている。両国ともに軍事ドローンによる上空からの攻撃を続けている。軍事ドローンが上空から地上に突っ込んできて攻撃をして破壊力も甚大であることから両国にとって大きな脅威になっている。

両軍ともに攻撃や監視・偵察にドローンを活用しているが、ドローンは上空で撃破されたり、機能不全にされている。そのためウクライナ軍は各国に武器の提供も呼びかけている。

攻撃ドローンだけでなく監視・偵察用ドローンもウクライナ上空を多く飛行している。日本の防衛省もウクライナ軍に市販品の監視・偵察用ドローンを提供することを岸防衛大臣が明らかにしていた。今までの世界史の戦争でもここまでドローンが多く戦場で活用されているのは初めてだ。

▼バイカル社の攻撃ドローンの「バイラクタル TB2」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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