夫の家事時間は共働きか否かを問わず増加している
共働き世帯にしても専業主婦のいる世帯にしても、夫の家事への時間は妻と比べて短い。しかし昔と比べると増加をしているようだ。その実情を総務省統計局による社会生活基本調査(※)の公開値から確認する。
今調査では生活様式に関して20種類に区分している(※※)。今回は家事関連(「家事」「介護・看護」「育児」「買物」)と、その1要素である「育児」にスポットライトを当てる。子供がいる夫婦世帯に限定し、夫婦が共に働き妻は兼業主婦となる「共働き世帯」と、夫が働き妻が無業(=専業主婦)の世帯「夫有業・妻無業」(専業主婦世帯)における時間の推移を、妻・夫それぞれについて見ていく。
妻は「家事関連」では専業主婦世帯・共働き世帯共に微増の動きを示している。一方で夫は妻の就業状況に関わらず増加。時間数そのものは妻の数分の一でしかないが、夫は30年の間に共働きで3倍強、妻が専業主婦の夫では3倍近くに増加している。妻の家事を夫が肩代わりというよりは、家事全般に必要な時間が増え、その増加分のうち少なからずを夫が負担している感が強い。
「家事関連」の中でも特に多くの時間を必要とし、環境で大きく時間が変化する、そして夫婦間での負担が問題視されているのが「育児」。そこで「家事関連」のうち「育児」要素を抽出し、同じように経年変化を見たのが次のグラフ。
専業主婦を持つ夫はややイレギュラーな動きを示しているが、大よそ夫婦・共働きか否かを問わず、育児時間は1996年までは横ばい、今世紀に入ってからは漸増の動きを示している。伸び時間そのものでは妻は30年の間に専業58分・共働き37分と、夫をはるかに上回る伸び時間を示しているが、伸び率では夫の伸び具合が著しい。
一部グラフ化は略するがこの30年の間に、
●共働き世帯
・夫……家事関連増加、「家事」増加、「育児」増加
・妻……家事関連増加、「家事」減少、「育児」増加
●専業主婦世帯
・夫……家事関連増加、「家事」増加、「育児」増加
・妻……家事関連増加、「家事」減少、「育児」増加
といった動きが確認できる。つまり、夫が妻の家事関連を少しずつサポートするようになり、その分妻の「家事」を減らせたが、「育児」への手間が増えたため結局家事全体の時間が増えてしまう構図である。
「育児」時間の増加そのものの理由は、今調査結果では何も語られていない。報告書では「育児時間は、共働きか否かにかかわらず、夫妻共に増加傾向となっている」とあるのみ。単純に「子供を世話することの重要性」への認識が深まり、より一層時間をかけるようになったからかもしれない。
一方で夫婦以外に任せる機会が減った可能性も考えられる。日中の保育を行う立ち位置の人・組織は父母以外に、祖父母や幼稚園・保育園などがある。核家族化の進行で祖父母に「育児」の一部を任せることが可能な人が減ったため、夫婦の負担が増えたと考えれば、道理は通るというものである。
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※社会生活基本調査
5年おきに実施されている公的調査で、直近分となる2016年分は2010年時点の国勢調査の調査区のうち、2016年の熊本地震の影響を受けて調査が困難な一部地域を除いた、総務大臣の指定する7311調査区に対して実施された。指定調査区から選定した約8万8000世帯に居住する10歳以上の世帯員約20万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2016年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2016年10月15日から10月23日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と回収方式。
※※生活様式に関して20種類に区分
「睡眠」「身の回りの用事」「食事」「通勤・通学」「仕事(収入を伴う仕事)」「学業(学生が学校の授業やそれに関連して行う学習活動)」「家事」「介護・看護」「育児」「買物」「移動(通勤・通学を除く)」「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」「休養・くつろぎ」「学習・自己啓発・訓練」「趣味・娯楽」「スポーツ」「ボランティア活動・社会参加活動」「交際・付き合い」「受診・療養」「その他」
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。