Yahoo!ニュース

JR東日本、新幹線・特急のグリーン車値上げ 割高になる区間はどこ?

小林拓矢フリーライター
これまでのJR東日本の新幹線グリーン車は割安だった(写真:haru_sz/イメージマート)

 JR東日本の新幹線・特急のグリーン料金が値上げすることになった。あわせてグランクラスの料金も値上げする。ふだんはグリーン車に乗ることはない筆者がいうのも変かもしれないが、JR東日本は比較的グリーン車に乗りやすいような価格設定としていた。

 2002年の東北新幹線八戸開業時に、JR東日本はグリーン車の利用促進のため、値下げを行った。現在のグリーン車料金は、そのときの料金をもとにしている。

 いっぽう、ほかのJRは以前の料金体系を残したままだ。なお、JR九州は、九州新幹線と在来線特急では別建てのグリーン料金とし、JR東日本と同様、比較的安く設定されている。

なぜ値上げするのか?

 グリーン車に乗るには、運賃と通常期特急料金から530円引いた金額(自由席特急券の金額)に加え、グリーン料金を支払う。これまでJR東日本は、そのグリーン料金を安くし、利用者をグリーン車に誘導してきた。

 だが、経済成長が止まり、多くの人が余分な支出をしなくなる一方、会社などでも経費の削減などが課題となり、グリーン車の使用は減っていった。

 そんな中、コロナ禍が始まる。乗客減はどんどん進み、かつての利用状況に戻らないとJR東日本は考えつつある。旅行需要や出張需要はもうもとには戻らないという考えは、多くのJRで共有されるようになった。

 当然ながら、経営環境も悪化する。特急料金の価格メカニズム導入が来春に行われることは確定しており、最繁忙期には特急料金の上乗せ額が大きくなった。閑散期の利用をJR東日本は訴え、その時期に休みを取ってもらって旅行することをうながし、全体としては平準化させようという意図だが、ふつうの人はそんな時期に休みを取ることが難しい。実質的には値上げではないだろうか。

 こういった流れの中、これまで割安だったグリーン車の値段を上げるという判断をした。グリーン車に乗るのは、大きな会社の役員クラスの人や、富裕層、あるいは政治家などである。そういった層の人は、グリーン車の価格がもとに戻っても問題はないという人たちである。なお国会議員には議員パスがある。

 そういう人たちをターゲットにすれば、価格としてはほかのJRと同じでいいと考えるのも当然のことだろう。もうみんなグリーン車に乗らなくなってしまったのだから、安値で誘導しても利益にならないのである。

いくらでどこまで行けるのか?

 そこで、現行のグリーン料金と新しいグリーン料金、その料金で東北新幹線ならば東京駅からどこまで行けるかを示してみた。なお参考までにJR東海やJR西日本などが採用するグリーン料金も記した。

JR東日本プレスリリースと『JTB時刻表』(JTBパブリッシング)をもとに筆者作成
JR東日本プレスリリースと『JTB時刻表』(JTBパブリッシング)をもとに筆者作成

 これを見ると、主要駅でいうなら東京駅から宇都宮駅、福島駅は値上げとなる。仙台駅までは変わらない。盛岡駅より先は値上げである。

 一部の駅を除き、値上げとなっている。ほかJRにあわせているので偶然ではあるのだけれど、出張利用の多い仙台駅は変わらない。

 JR東日本の場合、301キロから700キロまでは同一の4,190円となっており、そのおかげで主要駅でいうならば仙台から八戸までは同じグリーン料金でお得に利用できるようになっていた。その状況が崩れた。それでも、601キロ~700キロまでをほかJRより安くしたのは、激変緩和策としては妥当だろう。東京から601キロ~700キロだと、二戸駅・八戸駅・七戸十和田駅となり、八戸駅以外は利用者が少ない。

 これまでのJR東日本グリーン車の料金は、かなりの範囲内で割安となっており、その安さが利用を喚起しなくなった以上、改定するという判断もいたしかたないと考えられる。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

小林拓矢の最近の記事