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ロシアの10代の学生ら、VRと音楽でアウシュビッツ絶滅収容所を表現した作品を製作

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 2020年1月27日、アウシュビッツ絶滅収容所がソ連軍によって解放されて75周年を迎えた。第2次大戦時にナチス・ドイツによって約600万人のユダヤ人、ロマ、政治犯らが殺害された、いわゆるホロコースト。ポーランドにあるアウシュビッツ絶滅収容所では約110万人がガス室で殺害されたり、空腹、病気で死亡した。

 ロシアのメディアRTはデジタルアートプロジェクトとして、モスクワの14歳から16歳の学生9人によるVR(仮想現実:バーチャル・リアリティー)でアウシュビッツを表現した作品「Lessons of Auschwitz」を公開した。世界的な電子楽器作曲家のピーター・テルミンが作曲を担当した音楽と学生らが表現したVRでアウシュビッツの世界観を表現している。デジタルアーティストのデニス・セミオノフ氏とスタジオ・フィジタリズムのアドバイスも受けて、学生らは数カ月にわたって制作。その間に、モスクワのユダヤ博物館でホロコーストについて学習をしたり、映画「シンドラーのリスト」などを鑑賞。またポーランドのクラクフにも訪問して博物館を見学。

VRの中で表現された白黒世界の中に出てくる赤いコートを着た少女(RTのVRより)
VRの中で表現された白黒世界の中に出てくる赤いコートを着た少女(RTのVRより)

 デニス・セミオノフ氏は「我々は戦争中に最も辛く、大変な思いをしてアウシュビッツ絶滅収容所で生き残った人々の記憶を子供たちに示したかった」とコメント。15歳の学生は「私は『シンドラーのリスト』の白黒映画の中に出てくる赤いコートを着た少女のインパクトが強かったので、VRの中でも表現したいと思いました」と語った。他の学生らもアウシュビッツを訪問して作品へのインスピレーションがかき立てられた。

 戦後75年が経ち、ホロコースト生存者も年々減少している。今までは収容所での悲惨な写真や映像による記憶の伝達が行われてきた。さらに生存者が存命で記憶力と体力があるうちに、当時の証言をインタビューしてデジタルで記憶を保存し後世に伝えようとしている。またホロコーストに関わる映画は毎年欧米で製作、上映され、ホロコースト時代の様子を現代に伝えている。様々なメディアを通じてホロコーストの表現方法も多様化が進んでおり、今回のモスクワの学生らが製作したVRによるアウシュビッツ絶滅収容所も新たなホロコーストの表現方法の1つである。

▼Lessons Of Auschwitz (VR Project teaser)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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