【潜入取材】話題沸騰のスタートアップ。本当に流行なのか?答えは「Plug and Play」にある?
ここ数年、就活生から「スタートアップ」という言葉が頻繁に使われるようになった。大学生だけではなく高校生でも「スタートアップ」という言葉に違和感はないかもしれない。そして世間ではビジネスに意識の高い若者のトレンド=「スタートアップ」という取り上げ方をしているのを良く目にする。
そもそもベンチャーとスタートアップ、中小企業は何が違うのか?
ここ数年でスタートアップは流行り出したのか?
スタートアップの定義は?
言葉の浸透度は高いものの、実態について質問されて答えられる学生は少ない。
ベンチャーとスタートアップの違い
就活市場で「ベンチャー企業」と言えば新しく出来た規模の小さい若手の社員で構成された会社を総称して「ベンチャー企業」とこれまでは呼んでいた。ところが最近の就活生はベンチャー企業=スタートアップと表現するケースが増えている。
整理したいのは、まず「ベンチャー企業」は和製用語であり海外では通用しないこと。むしろ話の文脈ではVC(Venture Capital)など投資側を意識させることになるので気をつけたい。
海外では企業の存在意義や組織構成、成長スピードなどを軸にスタートアップなのか中小企業なのかで線引きされる。つまり海外(特にアメリカ)では新しいビジネスモデルを開発して圧倒的なスピードで短期間の中で成長してエグジットさせる、または大企業と連携をすることを目的(当然エグジットで大金を手にすることを目的にするケースも)にした企業の総称がスタートアップとされる。一方で市場がある程度読み込めている中で安定した利益と中長期の成長を目指す小規模な企業の総称がベンチャー企業という表現になるだろう。
スタートアップの本当の定義は?
就活市場ではベンチャー、スタートアップ、中小企業はしっかり定義されていない。情報収集している中で出会った言葉を就活生は使っているのが大半だ。正直、企業側も定義については曖昧ではっきりした解が共通言語化されているとは言えない。故に就活市場では間違ったスタートアップの認識で話を進めてミスマッチや後悔を生み出すこともある。
シリコンバレーにある噂のPlug and Play
アメリカ西海岸に位置するシリコンバレーと言えば、世界のビジネス発信地として確立されたブランドを誇る。確かにシリコンバレーにはApple、Intel、Microsoft、Yahoo!、Google、Facebookなどの超大企業がズラリと揃っている。ここ数年で急激に成長したユニコーン企業UBER、airbnb、Dropboxなども集まっている。そんなビジネスの聖地には学生には耳慣れしていないかもしれないが、ビジネス界では話題でシリコンバレーを訪れるビジネスマンが必ずと言っても良いほど「行ってみたい場所」とされるのが、サニーベールにある世界最大のアクセラレーション施設の「Plug and Play Tech Center」だ。
Plug and Playとは?
2006年から10年以上アクセレーター/ベンチャーキャピタルという位置づけで、世界各国のスタートアップを支援、大手企業のイノベーションサポートまで実施しており「シリコンバレー発の大企業×スタートアップのイノベーションプラットフォーム」とも言われている。現地では日々スタートアップ、連携企業、投資家が未来の可能性を模索している刺激のある環境となっている。毎週金曜日は「FridayPich」と言われるスタートアップとの連携検討、投資を狙った企業や投資家がズラリと揃う会場で3分間のPich(要点を絞り込んだ短いプレゼンテーション)を繰り返すイベントが開催されている。そこで億単位の話になるかもしれない緊張感が独特の空気を創り出している。
日本にもPlug and Playはある!
日本の就活市場でも「スタートアップ」がブランド化しつつある一方で、言葉の定義が曖昧な領域でもあるため、直接「Plug and Play Japan」に伺って藤本氏(VP,Markting Communications)にいくつか学生の疑問をぶつけてみた。
スタートアップの定義は?
話を聞くと、実は定義が確立されていないのは事実でPlug and Play Japanとしても日本市場において曖昧な解釈やスタートアップ、ベンチャー、中小企業の定義がない点は課題視しているようだ。経産省なども巻き込みながら、この辺りの整備を考えているという視点は世界最大のアクセレーターとして本物のスタートアップを目にして来たプライドを感じる。そしてPlug and Play Japanが課題となっている曖昧さを綺麗に定義化することを期待したい。
スタートアップは若者の流行?
実際にアメリカでFridayPichを見学した際に気づいたのは、Pichしている人達の年齢層の高さ。日本では若い人の起業=スタートアップのようなイメージがメディアの影響もあって浸透している。ところが、アメリカではスタートアップに年齢は関係ないのが常識であった。このことについて藤本氏に確認するとPlug and Play Japanでのイベントに参加するスタートアップの年齢・組織構成はやはり企業ごとに異なっており、若い人の起業=スタートアップではないようだ。
スタートアップはここ数年の流行?
スタートアップという言葉が就活市場で浸透してきたのが最近であるので数年のトレンドかのように捉えられているが、実は日本では20年ほど前のベンチャー企業が乱発した時代から同じ定義で存在していたのだ。
今では大手企業として認知されているのサイバーエージェント、経営統合など変化をし続けるインテリジェンス(現パーソルキャリア)などは就活市場ではベンチャー企業として大人気だった。その後も楽天、ライブドア、DeNA、グリーなどいわゆるITベンチャーブームが話題となった。
ここ最近のメディアで取り上げられるスタートアップブームについて、大学生はしっかりと歴史を振り返ることが重要である。周囲のスタートアップが良い!という声から興味を持つのではなく、自分自身のキャリアの可能性を広げるために主体的にユニコーン、ベンチャー、スタートアップという言葉を勉強して欲しい。すると、年齢や組織構成だけでスタートアップ、ベンチャーと決めつけてしまうことはなくなり、社会全体を捉える目が持てる。
流行よりも未来志向から紐解くキャリアデザイン
新しい就職活動の時代に突入する大学生達は、20年間の経験・知識で得た「やりたい仕事」で方向性を定める前に、
・未来のはたらく環境の変化
・2050年の日本の経済予測
・日本の労働人口に関する課題
・AI時代
・はたらくのリアル
このあたりをしっかりと自分のために主体的に興味を持ち、自分の言葉で語れるくらい理解し未来を予測して欲しい。その中で見えた景色で一歩目をどこから踏み出すのか?20代でどんな力を身に付ける必要があるのか?自分なりの言葉に落ちてくると思います。
そして「スタートアップ」のように浸透してきているけど自分では曖昧な表現しか出来ないような言葉、領域は深ぼって学んでいくこと。
さらには視野を世界に広げて価値観の変革やモノゴトの捉え方の柔軟性を鍛える癖を付けて欲しい。
夏休みの計画がまだということであれば、アメリカシリコンバレーで刺激を受けるだけでも良いかもしれない。何を目的に、何を大事にするのか?しっかりと自分なりの定義をセットして思考することを勧めたい。
【参考】
※Plug and Play Japanについて
http://japan.plugandplaytechcenter.com/
※Plug and Play Tech Centerでの取材がTV番組で放送されます。
https://news.paravi.jp/sekaishukatsu/
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